「夏に残されたもの」
場末感漂う海辺の喫茶店で昼から独りワインを飲む。
きょう着てるシャツはレディースの古着なのだが、シャツの下からだらしなく垂れた尻尾みたいなものがついていて、ちょっとセンター街を歩くには恥ずかしかった。
そんなわけで中心部を離れ、残暑の光射す神戸の港湾部へと歩く。来年から住み慣れた街、神戸を離れ、北海道にしばらくいることになっている。そのせいだろうか、歩いたことのない海辺の倉庫街を歩いていると、天気のいい夏の終わりのトロントで目にした様な異国情緒が漂うようでいて初めての風景なのにどこか懐かしさを覚える。

暑さは一時の酷さを思えばかなりおさまってきたが、それでも歩き続けるとそれなりに汗ばむ。尻尾付きのシャツを着流しながらそぞろ歩くうちに、件の場末喫茶店に辿り着いた。日曜だというのに、店内は恐ろしく人が少ないが、西陽を受ける開放感ある店内は安全なクラブミュージックが鳴り響いており、とても落ち着く。喉の乾ききっていたわたしは300円の白ワインをグラスで注文し、左手にスマホでmedium、右手はワイングラスを傾け、優雅にこれを書いているわけだ。

それにしても来年から神戸の夏もしばらく見れなくなるのだ。私は別に町内会の行事に積極的に参加しているわけではないし、街に対してなんらかの貢献をした記憶は皆無だが、やはり生まれてから場所を変えながらも住み続けてきたこの街を離れることには、慕情を感じる。

何があと半年でできるのかわからない。でも何かをこの街に残したい、それはもしかすると2年続けている飲食店のバイトで来た方々に気分よく帰って頂くとか、入ったトイレのペーパーを三角折りにしておくとか、そういう馬鹿らしいほどに小さなことを黙々とやることなのかもしれない。
残された夏、そういうことができればなと。
2017/8/27
