「ちょっとみんなに聞いてほしいことがあるんだ」

今動かしてる手をちょっとの間だけ止めて眼を閉じて、君に想像してみてほしいことがあるんだ。


君のパートナーは、礼儀正しく、適度に社交的で、そして適度に内向的で思慮深い側面があり、健康的な都市的生活者だ。
各々思い浮かべたパートナーは条件を満たしていたらどんなのでもいい。異性でも同性でも、男か女か真ん中かという性の分類に括りきれないけれど一緒にいると気持ちがいい人でも、もしくは画面上/想像上/形而上の対象でもいいし、もはや人間の姿かたちをしていなくても、上記の条件を満たしていたならアライグマでもいい。

そんな君の「ちょうどいいパートナー」はちょっとした問題を抱えている。というのは君のパートナーは「人と違うことに拘りたがる」オリジナル志向がちょっとだけ強いんだ。

たとえば、街を2人で手を繋いで歩いていたら、向かいからパートナーそっくりのブーツを履いたやつがやってくるんだ。パートナーはこう云う。

「このブーツはもう履けない、新しいのを買いに行ってもいい?」

そしたら彼は近くのセレクトショップに消えて行っちゃって、しばらくすると買ったばかりの真新しい靴を履いて戻ってきて、満面の笑みと共にコンビニのゴミ箱にさっきまで履いていた靴を放り込むんだ。

パートナーは何でも人と似ていることが嫌で、君からしてみたらパートナーは充分すぎるほどに「自分なりのスタイルを確立している」ように見えるんだけど、パートナーはそんなことにお構いなく、モノを、そして考えを捨てていく。

繰り返すけれど、君のパートナーは、礼儀正しく、適度に社交的で、そして適度に内向的で思慮深い側面があり、健康的な都市的生活者だ。
だけれども、ちょっとだけこだわりがあって傷つきやすくて不安に耐えられないんだ、きっとね。


ちょっとだけヘンな人について、君の想像する時間を割いてくれてありがとうね。
ぼくは、服に関しては少しだけ前に、人とダブっちゃうことを諦めたんだ。少し前まで誰かの服と一緒になることが、たとえそれが「オシャレ」を捨てることになるとしても、本当にヤだったんだ。今はちょっとずつ「他人(ひと)と違う」を越えた判断軸で服選びができるように努力してるとこなんだ。まだまだなんだけど。

でもね、ぼくもね、人とダブることに関して譲れないことがまだいくつもあるんだ。
たとえばここね。ここのブログに毎日書いてることが、どこかのブログと似たようなものかもしれない、そう想像しただけで、死んだあとどうなるのかを考えるのと同じくらい胸が苦しくなるんだ。
誰かが書いてそうなことを書いて公開してしまった時、ぼくは本当にPCを床に叩き付けてここから逃げ出したくなってしまうんだ。

他にもあるんだ。
いま、ぼくは「卒業論文」を書いてるんだけど、そんときの方がもっとしんどい。
自分の書いている論文は必ず誰かの考えをベースにして、それらを組み合わせて論文ってのは作っていくみたいなんだ。
だけど書いてる途中に、数え切れないほど何度もぼくには「まったくのオリジナリティがない」ということを痛感させられてしまうんだ。
これは誰かが以前に書いていたもののカーボンコピーだ。
いま思いついたアイデアは全部誰かが綺麗にまとめて云ってくれていた。
そんなことがしょっちゅう起きるんだ。

ぼくは全てに絶望して論文の完成を諦めて何度も飲みに出かけた。
飲んでいるうちだけは「何らかの大きな力に操られているのかどうか」を気にせずにいられた。ぼくにとって「すべてのことをぼくが生まれる前から先取りしてやっているひとたち」とはつまり「親」みたいなものなんだ。もっと云えば父親みたいなものなんだ。
人間って、親に似てることが嬉しい人もいれば、親に似てることがヤでしょうがない人もいるもんでね。
ぼくはまちがいなく後者なんだ、それがどうしてなのかはわかんないんだけど。なんていうか、ずっとそうだったんだ。もしかしたら理由(わけ)なんて最初(はな)っからないのかもしれない。

1つだけ確かなことっていうのは、ぼくが父親みたいにみえてしまう「書き手」の人たちのことを心から尊敬してるってこと。それだけは確かなんだ。もしかしたら尊敬すら通り越してしまってて、ぼく自身をその人に重ね合わせているのかもしれないよね。

でもね、なんとかそこを踏ん張って「誰かと違う」っていうこととは違う軸で、書こうとしてるんだ。もちろん、誰かとおんなじになることを認めたわけじゃなくてね。なんとかバランスを取ろうとしてるんだ。誰かと違うと誰かとおんなじってことの。誰かと自分ってことの。
だからね、苦しいけどいつか役に立つと思うんだ、いまのこの時間って。

2018/1/2

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