「Easy Breezy」

昨年はじめごろから続いていたChelmicoばかり聴いて暮らす日々もようやっと終わりを告げたかに思われた矢先。Chelmicoが土曜夜にラジオ番組を持つということで、またChelmicoめいた年明けとなりました。3月の札幌公演もチケットを即買いしたので、僕にとって久々の生ライブを観に行く機会になりそうです。

それはそうと、僕は今、北海道を離れ地元神戸へと帰省に向かう最中です。「ほな、もなかと違うか」ではありません。そして、大変遅ればせながらあけましておめでとうございます。

昨年秋頃に突然思い立ち、当日予約で韓国弾丸一人旅をしてきましたところ、電波オフモードにしていたので上司からの電話がつながらず行方不明説、はたまた最近巷で流行りの退職代行を使ったウルトラCを決めた疑惑までかけられまして、今回の休暇前も大変でございました。「電波はつながるよね」「実家って国内だよね」「実家って限界集落」なぞとこれ見よがしの嫌味まで餞別で頂戴し（半分くらい盛りましたが）ともあれ開放的な気分にやっと達した訳であります。それにしても部下から真っ当に煙たがられる上司という役柄には大変頭が下がる思いです。頭の中が中学生で停止したままの僕には、上司なんてとてもとても務まるものではありません。ただ気分は釣りバカ日誌の浜崎伝助。「課長、そしたらきょうは昼から営業先行って直帰しますわ。そっから出張、有休入ってますんで、来週まで留守にしまっす。鈴木ぃ〜建設ぅ〜♪」てな具合です。合掌。

新千歳空港に向かうバスの中でこれを書いたり、本をわざとらしく開いてみせたり、帰省先でやることを思案しております。隣のおばあさんが、自家製炊き込みご飯をタッパからかっ込み、えも云えぬ香りが車内に漂っております。さらに前のオヤジが座るなり断り無しに、ただでさえ狭い空港連絡バスの背もたれを全開で倒しおって、さらにいい年してBL趣味と思しき漫画をタブレットで読んどるしで、こやつはある意味におけるハイパーリベラルであり、時代の最先端を走っておるのやもしれぬ。かの有名な日本発の携帯通信事業を興した経営者が云っておられた「髪が後退しとるんやなしに俺が前のめりやから髪が追いついてないだけ」よろしく、前のオヤジのバーコードが狭い車内の視界の大半を占めておる。

などと文字数制限からも解き放たれた長めのツイートをしてしまった。先ほどの隣のおばあさんはというと、何やら印刷物に赤線を引きながら懸命に文章を目で追うも食後の睡魔に負けて舟を漕いでいる。見やすい大きさで印字された文字を見るに、聖書の手引書のようだ。そういえば、長らく礼拝に行ってないものだ。中高大10年間、キリスト教主義教育の学校に通っていて、時々顔を出す教会もあったものだが、勤め人になると神にすがるというより、仕事相手にすがるような思いのすることの方が多くなってしまった。教会は全国津々浦々どころか、世界中のこんなとこにもあるのという場所にもあるのに、ついぞ神について忘れていた。思い返してみても、友人の不幸に当たってお祈りしたくらいだ。

あのずっしりとした聖書の重みの感触も今や遠い。そうして思った。中高時代に通った地元の教会へ日曜久々に顔を出してみようと。仕事の倫理と論理ばかり、あとは酒席が増えただけの、堕落し尽くした自分には、片時であれ金槌で頭を叩いてもらうことが必要かもしれない。

と同時に友人と地元の言葉で語り、地の酒を飲む時間もやっぱり必要みたいだ。そしてついでに自分の髪がふさふさとあるうちに、20年近く僕の髪を切ってくれた床屋さんにも行こう。北国で僕は生まれて初めて自分の意思で髪を切る場所を選んだ。直感で入った店、自宅から歩いて2分の理容室を新たな行きつけの店に通っている。でも今回くらいは今の理容室には浮気する形になるが、地元で伸びてきた髪を切ってもらうのもいいかもしれない。ルールを決めすぎても堅苦しくて嫌になるだけだ。義理だって微笑み返してくれるはず。

こうやって色んなアイデアが湧いてくるうちにバスは空港に到着した。帰省中はなるべく必要以上のおセンチを避けて、北海道と内地に壁を作らないようにしないと帰った後が大変だ。絶望起床なんて話じゃ済まなくなる。のんびり、なるべく自分を枠にはめすぎず、ハメをちょっぴり外して。

そんなことを書いてると気分がなんとなく晴れやかになってきて金色の天然水を飲みたくなった。人間ってとても身近な事柄を思っているし、いくら遠くから思っていても殆どの場合あまり意味をなさない。虚しくなるだけのことが多い。だったら人に会いに行って想像に形を与えることも必要なのかもしれない。そして多くの場合、僕は場当たり的にものを考え、これからもそうなるのだろうと思う。

2020/01/17