誰かとの関わりがあなたをつくる

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こころ模様
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3 min readNov 2, 2016

恋人が過去に愛した相手の話を聞いて無意味な嫉妬に身を焼きたいという愚かな衝動に、もうずっと耐えている。

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――…知りたい、と思うのが、恋だと思う。

どんなふうに笑うのか。何に心を動かされるのか。どんなふうに触れるのか。その指先は冷たいのか温かいのか。どんな顔で眠るのか。

私以外の人の前にいるときにこの人がどんな顔をしているのか、どんな話題を選ぶのか。私と出会う前のこの人が何を考え何をインプットし何をアウトプットして生きてきたのか。この人の中に何が積み上がっているのか。この人がそれをどんな風に積み上げてきたのか。何に欣喜し何に絶望し、それでもなお、何を信じてまた立ち上がったのか。

ひとつひとつたしかめて、私の中のこの人としてしまいこみたい。目の前に物理的に存在するこの人を、私の中で形而上的にもう一度像を結ばせたい。

その一方で、実のところ過去の話など絶対に聞けないのは、恋人が過去に愛した人が、恋人の中でもう一度蘇るのが怖いからだ。

脳内の記憶や像を言語化することは、自己に対する飽くなき問い直しの連続である。私は恋人に、当時の感情の片鱗さえも思い出してほしくないし、その関係性の変遷の是非を問い直してほしくもない。恋人のいつもの細やかな気遣いが、その関係性の中で培われたものだとしても。

細胞は代謝され、感情は上書きされる。視点も視野も思考も、時とともに移ろいゆくものだ。

過去に愛した相手との関わりは、確かに恋人の一部を作り上げているのだろう。ならば私との関わりも、今この瞬間にも少しずつ恋人を作っているのだろう。だから、私は恋人をたしかめながら、言葉のたけを尽くして私を伝えていこうと思う。

昨日の彼は今日の彼ではない。明日の私は今日の私ではない。それは、どうしようもなく儚いことかもしれないけれど、今目の前にいる相手の確かな手触りを感じ、今の自他の感情や思考の隘路を辿りつづけることだけが、不確かな未来をそれでも信じさせてくれるのではないだろうか。

《№3 お題: 儚いもののたとえ》

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夏休み第二弾に突入し、南の島にいます。海が荒れて船が着岸できず、早朝はお目当ての島を素通りされてしまいましたが、折り返しの便は何とか着岸してくれて上陸に成功。波を被った桟橋を死に物狂いで走るという貴重な経験をしました。。。

折り返し地点の八丈島にて。波が桟橋を超えて8mくらいの高さで砕け散る。

エナメルさまのお題をお借りして、短いお話を綴っています。

人の心から生まれ、育つ言の葉。うつろいやすい心が、うつろわぬ言葉として、あなたのもとに届きますように。

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生きる資格がないなんて憧れてた生き方