自分の小さな可能性に目を向ける

といかず
といてら
Published in
Jan 17, 2021

催眠療法と聞くとなにか怪しげな感じを持つと思います。しかし多くの心理療法は催眠療法に由来するといっても過言ではないと思います。
催眠療法に大きな貢献をしたのがミルトン・エリクソンと言う人です。
彼の治療法の後半は、催眠状態にして直接暗示をあたえるのではなく、間接的な暗示、つまり日常の会話によっておこなわれました。

人生を呪った男

車椅子の男性がエリクソンのところにやってきました。
彼は腕と膝を椅子に固定され、この11年 激痛を伴う関節炎で、全身の麻痺に苦しむ日々送ってきたことを呪い続けていました。

エリクソンの発した言葉は簡単で、

男性の発する汚い言葉を間にはさみながら(その人の経験のある言葉で伝える)

「親指は動きますよね。動かせる親指があるのだから、毎日毎日その親指を動かす練習をして過ごさなければなりません」

男性は喧嘩腰で、
「昼でも夜でもこの忌々しい親指をピクつかせることぐらいできるさ。」
「そんな事をしたところでなんの役にも立たないことを証明してやるさ」

といって帰宅しました。
そして毎日、親指を動かす練習をしました。
続けているうちに、不意に人差し指も動くことに気づきました。
更に練習を続けていると、ほかの指まで動かせるようになりました。
どこまで動かせることができるのか興味が湧いてきて、
やがて手首まで動かせるようになりました。

最初の面談から1年経ったとき、

エリクソンは小さな小屋のペンキ塗りの仕事を彼に与えました。
ペンキ塗りの一回目は3週間かかりました。
2度目の塗りは、仕事のスピードが上がり1週間で仕上がりました。

それをやり遂げたのち、彼には、トラック運転手の仕事が入り、その組合の長にも選出されました。
自分自身の教育にも関心が出て大学にも進学しました。

関節炎の重い症状はいくつか残っていて、1年の間に3日から1週間、痛みをかかえ寝込む期間がありました。
男性はその周期的な痛みの寝たきり状態を、読みたいと思って読めなかった本を読む機会が得られたと、解釈ができるようになりました。
関節炎の再発と捉えるのではなく、「休暇を生み出してくれる機会と捉えたのです。

大切なことは、関節炎の症状は同じように続いている、完治したわけではないことを理解しなくていけません。

完璧をもとめたり、問題がないというのは人の属性としてはありえないということです。
完璧をもとめるのではなく、促進するという課題に焦点をしぼって、成就できそうな小さなことを探求することが大切になります。

このときに、苦しみはすべて軽減可能であるという前提が重要になります。
苦痛な出来事、不都合、問題、課題は、なんらかの改善可能(完治や解決ではい)なものとして捉えていることが重要です。

自分が今できる、とても簡単なことを始めることから、すべてが始まります。

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といかず
といてら

人の学習について学び始めると、還暦もとうに過ぎているのに、もっと自分を高めることができると気づいた。ヘリコプターから小型ジェット、新聞社の取材飛行を経験して、東亜国内航空へ、最後はJALで翼をたたみました。新しい人生を歩むために自分の学習能力を高めていきたいと思っています。