円空仏作りワークショップ
随分涼しくなった9月の山。
タープを張り、虫除けの線香を焚き、私たちは参加者を待っていた。
今回は、円空仏を手本に、森の中で観音様を彫るというワークショップである。
和やかな雰囲気の中、続々とメンバーが到着。簡単なイントロダクションが終わり、20〜60代の男女は杉やヒノキで、思い思いに作業にかかった。
皆んな楽しそうな顔をしている。仏像とは関係のないおしゃべりもし、笑いもする。
だけど、身体を見れば「本気」がみなぎっていた。
当たり前だ。油断すると指の先が木片に混ざって飛んでいくかもしれないのだから。
仏像を彫るのは初めてでも、「できない」と投げ出す人も、「上手く彫ろう」とした人もいなかった。
それどころか、自発的に「ここにくぼみがあれば、観音様の装いらしくなる」「頭をだんだん細くなるよう整えたい」と、それぞれに啓示された観音様に向かって、ひたすらに手を動かしていた。
たまに、吉田仏師が彫りに適した道具を勧めたり、大きく削るときにアシストに入るくらいで、メンバーの身体はひたすらお像に対し真正面を向いていた。
後になって、その場の空気の濃度に気づき、驚いている。
そういえば、山のオーナーが終わり間際に現地にきたのだが、5メートル先から何か冗談を言って笑った。
だが、すぐハッとした顔になり「失礼なことを言った」と頭を下げた。
山のオーナーは、参加者を笑わせようと軽口を叩いたのだが、「近づくとものすごく集中して作業しているのが分かった。彫る姿が仏師になりきっていた」と、申し訳なさそうだった。
最後に一人残らず、観音様と言える形に到達した。
まっすぐな、仏様との対話の時間だった。