アジャツール第7回 付箋だけじゃない!情報カードが選ばれる理由

published at 2006/01/25.

はじめに

2006年度最初のアジャツールの紹介は、アジャイリスト御用達(?)の情報カードです。CRCセッション、タスクカード、ストーリーカードなどで広く使われている情報カードですが、一般の文具売り場や、オフィス向けの通販などでなかなか扱っていなかったりする不遇の商品です。大抵は大手文具店に脚を運んで買ってしまうことが多いです。逆に小さな文具点で情報カードを置いていたりすると妙に感心してしまいます。(注:情報カードはインデックスカードとも呼ぶ)

情報カードって?

情報カードについては、コレクト社のWebに詳しい説明がありますのでそちらを参照してください。明治時代から輸入されていたとは驚きですね。

元々は5x3、6x4(両方ともインチ単位)のサイズしかなかったようですが、現在はより大きいB6サイズや、逆により小さい名刺サイズの情報カードも揃っています。情報カードの利点は、個々に記述した情報を重ねたり、並べたり、といったデータの操作が他のツール(ノート、メモ帳)などに比べて自由にできるという点にあるでしょう。

こんなに便利な情報カードですが、昨今では、利点に挙がるようなデータ操作、検索性という点については、さすがにソフトウェアには大きく見劣りします。ではなぜ、あえてソフトウェアではなく、情報カードを使うのでしょう? CRCカードセッションはなぜカードで行い、ストーリーはカードに記載するのでしょうか?

カードを使うわけ

まず一点は、情報カードは、重ねる、並べる、広げるといった操作を多人数で行うのに適しているからです。断片的な情報をいくつも書き出して、まとめたり、並べかえたりする操作でカードより使い勝手がよいツールはあるでしょうか?

一見、付箋はもっと便利な気もします。しかし付箋は垂直面で真価を発揮します。平面上では、滑らすように配置を変えることのできる情報カードに軍配が上がります。

次にカードはノートやPC上のテキストエリアと比べて、情報を書き込みできる大きさが限られます。一見「情報が少ない」という欠点に見えますが、実は少ない情報しか書き込めないという制約を物理的に課すことで、情報のチャンクを小さく保つ仕組みと捉えることができます。

CRCカードでも、ストーリーカードでも、カードという物理的な制約を持たせることで、情報量を意図的にコントロールしているのです。その結果、CRCカードに書きだすクラスの責務は少なくなりますし、ストーリーカードの文章量は少量になり、ある程度のサイズを保つことができます。

ちなみに、弊社のとあるプロジェクトでは、カードを半分に切って使っているチームがあります。これは情報量の制限というよりも、壁に貼るときのスペースの節約がメインのようです。

そして最後には、やはり「手で書き」、「手で並べる」、「手で重ねる」といった物質的な感覚が大きいのではないかと思います。このような「手で触れる」感覚をタンジビリティ(Tangibility)と呼びます。Excelでソートするのとは異なる、人間が物質的な存在であるが故のタンジビリティは、思ったよりも人間に大きく作用するのではないでしょうか。

どんなカードがよいか

さて、実際にカードを使う際にはどれを選んだらよいのでしょうか。筆者は無地紙の厚み紙質大きさにこだわってカードを選びます。

まず「無地」ですが、これはただ1つ自由に書きたいという理由につきます。罫線があると、人はどうしても罫線に沿って書かなければいけないという強制力が働きます。そのような制約は筆者の用途では不要なので、敢えて無地を選んでいます。

次に「紙の厚み」ですが、カードはどうしても手で触る機会が増えます。その際に紙が薄いと破れたり、破れないまでもヨレヨレになったり、持ちにくかったりしてしまいます。こうなると気づかないうちにストレスが溜ってしまうことにもなりかねません。このような状況を防ぐには、ある程度の紙の厚みが必須になります。

次に「紙質」です。これは実は誤差程度なのかもしれませんが、ペンがスーッと通って、滲みにくい紙質が好みです。

最後に「大きさ」ですが、これは書く内容にもよります。以前はB6サイズをメインに使っていましたが、最近はB6でもサイズが大きいと感じるようになることが増えました。そのため6x4カード(葉書サイズ)、5x3カード、更には名刺サイズもTPOで使いわけたほうがよいかな、という気がしています。

こういった好みを総合すると、国内で購入できる情報カードの中でのお勧めは、コレクト社の無地カードのシリーズです。コレクト社のカードは、他のメーカのカードより厚みがあるのがポイントです。

オブジェクト倶楽部のノベルティとして配布していたXPカードも厚みといい、紙質といい、ロゴといい、とてもよい仕上りです。ちょっと毛色が違いますが、コレクト社では最近になって、印刷ができる情報カード(注:コレクト 情報カード印字用)というシリーズを打ち出してきました。

(注:ここではコレクトの情報カードを一押ししているが、もう一方の雄であるライフ社の情報カードも負けずにクオリティが高く品揃も豊富だ。記事執筆当時はコレクト派だったのだが現在は中立。)

罫線が嫌いといった筆者ですが、カードに書く項目のフレームをカスタマイズして、あらかじめ印刷しておくのは便利かもしれない、と考えはじめています。

まとめ

今回は、情報カードについて見てみました。日常で使うことがあまりありませんので、「情報カードって古くさいメディアなの?」と感じてしまうかもしれません。しかし、実際に使ってみると、ノートともメモ帳とも、そしてもちろんソフトウェアとも違う、「書いて」、「並べて」、「重ねる」ことのできる情報カードならではの新しい発見があるかもしれません。

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