アジャツール 第11回 ジャグリングとアジャイルの思いがけない共通点

はじめに

GW連休ですっかり休みボケしております。今回はこのボケた頭で更に突っ走りたいと思います。今回は一見全く関係なさそうな「ジャグリング」をお送りします。

ジャグリングとは

Wikipediaのジャグリングの説明文では以下のようになっていました。

ジャグリング(Juggling)とは、動力のない道具を、肉体のみをもって操作することである。

大道芸で見かける、ボールやクラブ(棍棒)を複数個を空中に投げて様々なトリックを魅せるあれです。ただジャグリングといっても、人に見せるだけでなく、スポーツのように自分で鍛錬して行うものも含めるそうです。

最初にアジャイルとジャグリングを繋げたのは、日本XPユーザ会の第12回でのライトニングトークスだったと記憶しています。トーカーの和田氏(注:AgileJapan2016 実行委員長)が、空き時間にビーンバッグのボールによるジャグリングを披露したのがきっかけで、急速にアジャイル界隈で利用者が増えていきました。

今ではオブラブのイベントの際にも、通路でジャグリングに興じる集団はお馴染になっています。オブラブメンバーでもジャグリングをやってみた、または続けている人は少なくないはずです。(注:筆者もビーンバッグのボールを買いました)ちなみに、ジャグリングをたしなむアジャイル開発者のことを「アジャグラー」と呼ぶそうです。

なぜアジャツールなのか?

ではなぜジャグリングがアジャツールなのでしょうか?最初のアジャツールの定義にも書いた「アジャイルな人が使っていればアジャツールである」に従えばそのままの通り、「使っている人がアジャイルだから」となります。しかしここは敢えて理由を述べたいと思います。

和田氏は発表資料の中で ジャグリングの特徴として以下の4つを挙げています。

  1. 簡単で楽しい。そして奥が深い
  2. 健康的なスポーツである
  3. ランニングコストがゼロ
  4. 達成感

「簡単で楽しい、奥が深い」とは、「シンプル」ということです。「健康的」とは、身体感覚を研ぎ澄まし、運動不足になりがちなエンジニアにはもってこいです。「ランニングコストがゼロ」ということは、導入障壁が低いということなので、すぐに始められるということです。そして「達成感」はTDDのレッド→グリーンにした時の感覚に近いのではないでしょうか。

また、マインドマップの提唱者であるトニー・ブザン氏と、「ダヴィンチになる!」などで著名なマイケル・ゲルブ氏の共著で「ジャグリングではじめる驚異の能力開発」という書籍が10年程前に出版されていました。現在は残念ながら絶版のため入手できないのですが 、この本を読んだ方の日記にはこのような感想がありました。

ジャグリングが、努力と達成そのものであり、常に失敗と向き合う行為であり、まさに学習ということの典型であるというのはよく分かる。

よい失敗をして失敗から学ぶ(もちろん成功体験は重要不可欠だけど)。安全に失敗する。分解して分析することと総合的なイメージの両立。いつでも自分は成長できるのだと信じること。

シンプルであり、短いサイクルで達成感を得て、フィードバックループから学習し、勇気を持って成長していく。このスタイルはまさにアジャイルのスタイルそのものなのです。

更に言うと「ジャグリングがアジャイルに似ている」のではなく、シンプル、短いサイクルでの達成感、フィードバック、学習、勇気といった、より普遍的な価値を、アジャイルとジャグリングが共有しているとしたほうが自然でしょう。

これらの理由により、「ジャグリングはアジャツールである」として問題ないと筆者は考えます。

まとめ

ジャグリングによる様々な体験は、アジャイル開発を凝縮した感覚に近いと言えます。だからこそ、アジャイルな人々が魅かれるのかもしれません。次回はマインドマップについて、アジャツール的観点から迫ってみる予定です。

(Published at 2006/05/10)

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