アジャツール 第12回 タスクボードは誰を幸せにするのか?

はじめに

今回はプロジェクトファシリテーション(PF)でもお馴染みのタスクボード(ボード)です。広く認知されているプラクティスではありますが、今回はタスクボードについての筆者の気づきをメインに書いてみます。

(注:タスクボードは具体的なプラクティスとして、広く使われているものの一つだ。執筆当時は「タスクかんばん」と記載していたが、2016年現在では「カンバン」という訳語は制約理論に基づくワークフロー管理の方法論であるKanbanの訳語として使われている。本記事は、カンバンとの違いを明示し誤解を与えないため「タスクボード」と表記しなおした。)

タスクの管理を壁の上で

タスクボードは、壁(またはホワイトボード)に3つの区画を作って、それぞれの区画にToDo(未着手)、Doing(着手)、Done(完了)の状態を割りあてて、タスクを管理するというプラクティスです。

オブジェクト倶楽部の面々のプロジェクトでは既にデフォルトプラクティスとなっていますが、チームによって若干運用が異なっています。

タスクボードの運用あれこれ

一番多いのが付箋にタスクを書いて、タスクボードに貼っておくというスタイルです。このスタイルだと、作業の状態が完全にタスクボード上で表現されるので、タスクボードを見るだけで、誰が何をやっているかがすぐにわかります。

ただし、この場合は、あくまでもタスクを書いた「ラベル」つまり「ボード上で表現するだけの存在」としての意味しかもっていません。タスクカードというよりは、タスクを書いた付箋です。そのため、タスクボード上での移動し忘れなども起きやすい気がします。付箋を使うことで手軽にできるのが利点と言えるでしょう。

一方、筆者のプロジェクトでのタスクボードは、「タスクを書いた付箋」ではなく「タスクカード」を壁に貼っておくというスタイルになります。ここで言うタスクカードは、ボード上で移動するラベルではなく、「タスクの実体」としての意味があります。このため、タスクカードは作業をする時には常に自席へ持っていくことになります。

タスクを行う際には必ずタスクカードを手にするというプロセスになっているため、移動し忘れ・作業の脱線、などが起きません。しかしカードを手元に持っていってしまうため、作業中(Doing)状態がタスクボード上では見えません。Doingには一日の作業を終えた時点での着手済み、未完了なタスクを貼ることになります。

あるチームでは、3つの状態以外に「タスクが落ちた(やらなくなった)」状態を示す区画や、「受け入れ」状態を示す区画を作って運用していることもあるようです。いずれにしても、ボードはシンプルなため、チームによって運用方法を容易にカスタマイズできるのがポイントと言えるでしょう。

タスクボードの利点

タスクボードは「チームの全体の作業量と、その状態が一目でわかる」というのが最大の売りです。まさに「見える化」の真骨頂だと言えるでしょう。では、この「見える化」は誰のためでしょうか?チームメンバーのため?リーダのため?マネージャのため? このことを考えるうちに「はっと」気づいたのです。

筆者の結論は、タスクボードはあくまでも「チーム、つまり開発を進めるメンバーのため」です。リーダやマネージャに対しての「見える化」は副次的なものに過ぎないのです。

まずメンバーが、自分達のためにチームの状態を「見える化」する事でその効果を享受します。メンバーが自分達のためにしていることが、実はリーダやマネージャにとっても効果的なことである、という状態を作りだすことこそが、タスクボードの最大の利点ではないのか、ということに気づきました。

自分達のために行っていることが、他人のためにもなっているという状態は、もしかしたら「共生関係」という言葉で表現できるのではないか、という気がしています。共生関係とは「カクレクマノミとイソギンチャク」や「アブラムシとアリ」のように、共に生活することで、一方または相互が利益を得るような関係のことです。共生関係にある生物は、結局は自分のためにしか行動していませんが、結果として互いに利益を得る関係になるのです。

言い換えると、ボードによる「見える化」はチーム、リーダ、マネージャがそれぞれWin:Win:Winの状態を作り出すことである、と言えるでしょう。

まとめ

タスクボードは、紛れもなくアジャツールです。そしてボードがもたらす「見える化」はチームで開発を担うメンバーのためでありながら、リーダやマネージャにも利益をもたらします。「誰かのため」ではなく「自分達のため」に行ったことが「関わる人すべて」にとって良い状態へ向わせるということは、とてもPF的ではないでしょうか?

Published at 2006/06/07.

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