海外で日本語を学ぶ 後編

Ryota Inoue
ASENAVI BLOG
Published in
7 min readNov 18, 2016
フィリピンではMcDonald'sよりも有名なJollibee

こんにちは。アセナビ記事ライター兼イベント企画運営を担当している井上良太です。

私が関わってきた日本語教育・異文化教育の後編です。後編ではフィリピン留学のことをメインに書こうと思っています。(前回記事はこちら)

イギリスのIIELで日本語教師養成プログラムを受けてきたおかげで、段階3の授業は、実際の教育現場をイメージしながら授業をうけることができた気がします。

段階3の中でも日本語教育方法論と日本語教育ABの授業は大変刺激的でした。外国人労働者や農村花嫁の問題、経済の動向によって左右される日本語学習者のことなど日本語教育が学際的であることがわかり、日本語の可能性について一層興味を持ちました。その授業を担当する講師の方はエジプトやインドネシアなど世界各国で日本語を教えた経験をお持ちの方でした。ご自身の経験を踏まえた授業で、私たち学生に問題提起をしてくださる機会もたくさんあり、ワクワクしました!

上記の段階3を経て、段階4の派遣先を考え始めましたが、多くの友人が教育や農業の分野で活動していたこと、英語が公用語の一つであることがきっかけで段階4の派遣先としてフィリピンを選びました。

派遣先のフィリピン大学ディリマン校(以下UP)は日本で例えると東大のような大学だそうです。学生と交流することが楽しみで仕方がありませんでした。

フィリピンでの活動は大まかに分けると、一週目は授業見学・参加、二週目は授業見学・参加に加え、言語学科のイベントへの参加、三週目は模擬授業、文化紹介という流れでした。

全体的にUPでは学生が主体的に学べる環境があると感じました。例えば、漢字を扱う初級の授業の中で、先生が教えるのではなく、担当の学生が漢字の成り立ちや意味を調べ、周りの学生に教えていたことは典型的な主体的な授業の一つと言えそうです。

また、中級のクラスでは学生が日本の政治、経済、芸術、社会問題などを取り上げ、みんなでディスカッションするタイプの授業もありました。私が派遣されている時には日本の死刑制度や遅れている女性の社会進出について議論していました。その授業のおかげで、私はフィリピンの学生が持つ日本に対するイメージを知ることができただけでなく、フィリピンの学生と意見交換できたため大変勉強になりました。

漢字のクラス。学生の貪欲に学ぶ姿勢は刺激になります。

フィリピンに来る前は、学生はビジネスのためだけに日本語を勉強しているのだろうと考えていましたが、授業見学の際に、学生に日本語の学習動機を聞くと、日本の音楽やアニメ、漫画などサブカルチャーに興味を持っていて、日本語で理解できるようになりたいという学生が多くいました。日本で働きたいと思っている学生も、日本のサブカルチャーがきっかけとなり日本語を勉強していると言っていました。

二週目に参加させていただいた言語学科のイベントはアジアの各国の文化紹介がテーマであり、その中の日本のSpritやAfterlifeに関する部分を私たちが担当しました。授業見学で仲良くなった学生が100人くらい来てくれたため楽しみながら発表することができました。私はお盆の担当でしたが、調べていくうちにお盆について以前よりも詳しくなりました。知っている方も多いかと思いますが、東日本ではお盆の時にお供えされるきゅうりは馬を表しています。早くご先祖様を迎えに行くことができるそうです。一方、ナスは牛を表していてゆっくりとあの世へお見送りするために作られているそうです。私はそんなことすら知りませんでした(笑)また、イベント本番では夏祭りでよく踊られる炭坑節も披露しました。

三週目に「形容詞」について授業させていただきました。フィリピンや日本で有名な食べ物や場所を例題に多く用いて学生に興味を持ってもらおうとしました。

日本では国語の授業で品詞を学んだときに「形容詞」と「形容動詞」ってありましたよね。面白いことに日本語教育では「イ形容詞」と「ナ形容詞」と呼ぶことが多いです。(「おいしい」はイ形容詞、「きれいな」はナ形容詞です。)

学校生活だけでなく、観光においても学びが沢山ありました。移動手段はトライシクル、ジプニー、タクシー、MRT、LRTなど多岐にわたりますが道路の作りが複雑で渋滞が深刻な問題だと感じました。インフラってホントに大事ですよね。経済活動に大きく関わりますし、夜のラッシュは女性が危険な目に合う可能性を高めますし。

乗り合いバスのようなイメージのジープ。ジープごとにデザインが違って面白い。

また、タクシーやジプニーでの移動中、繁華街とスラム街の繰り返しで境目などないように思えました。学生や先生方の話を聞き、そして実際に自分の目で、フィリピンにおける経済成長と格差を見ることができました。大学やホテルの近くで子供たちに「Money 」と言われることは少なくなく、いかに自分が恵まれた環境にいるかを認識することができました。(何をもって「恵まれている」とするかによると思いますが。)

また、授業後や休日を利用し、JICA及び在フィリピン日本国大使館で働く方にお話を伺に行きました。その方のキャリアだったたり、赴任先での経験、ミンダナオ島での紛争のことなど多くのことを学ばせていただきました。

また、偶然UPに派遣されていた日本語パートナーズの方と一緒に国際交流基金が主催する「おしゃべりサロン」というイベントに参加させていただきました。イベントでは日本に興味のある方が学生から、社会人、お年寄りまでたくさんの方が参加し、日本語や日本文化について話し合っていたので、フィリピンでは日本語が幅広い年齢層に受け入られていることや国際交流基金がフィリピンに与える影響の高さについて知ることができました。国際交流基金で働く方ともお話しする機会があり、自分の将来について考えるきっかけとなりました。

このSENDプログラム全体を通じて、言語や文化が生活と切り離せないことがわかりました。異文化理解や言語が理解できずに社会的に排除されてしまう外国人の存在も知り、卒業後は日本及び世界各国の社会問題に対してアプローチしていきたいです。そのためにまずは、女性の社会進出や社会問題をビジネスで解決している組織に入って頑張りたいと思います。もちろん日本語教育に関しても社会問題に関わっている部分もあるため、将来の職業の選択肢の一つにもなっています。

最後に日本語教師という職業について少し説明させていただくと、実は日本語教師になるための特別な国家資格はありません。実際に、日本語が不自由な地域住民は多くのボランティアによって支えられています。

しかしながら、外国語として日本語を教えるには専門性が必要ですし、一般的に日本語教師として働くには以下の3つの条件のうち1つ以上満たしておかなければなりません。

1.大学で主専攻あるいは副専攻の日本語教育科目を履修し、卒業していること。

2.日本語教師養成講座において420時間以上の教育を受けていること。

3.日本語教育能力検定試験に合格していること。

私はこのプログラムに参加したことで2.の条件を満たすことができました。まだまだ日本語や日本文化について知らないことだらけですが(^^;

この記事を通して日本語が意外にも日常生活や政治経済などにも関わっていることを知っていただければ幸いです。

次回は私が大学で学んでいる社会的企業について書きたいと思います(^^)/

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