海外で日本語を学ぶ 前編
こんにちは、アセナビ記事ライター兼イベント企画運営を担当している井上良太です。
今回は私が関わってきた日本語教育・異文化教育について2回に分けて書かせていただきます。
前編ではイギリスでの留学のことをメインに書こうと思っています。
前回の記事に書かせていただきましたが、私は、外国人の方とのコミュニケーションの幅を広げるために海外で日本語教育を学ぼうと考えていました。
そんな時にたまたま見つけたのが、文部科学省のグローバル人材育成における取組の一つとして位置付けているSEND(Student Exchange Nippon Discovery)プログラムでした。
※SENDプログラム
`’日本人学生が留学先の現地の言語や文化を学習するとともに、現地の学校などでの日本語指導支援や日本文化紹介などの活動を通して学生自身の異文化理解を促すことを海外留学の一つとして位置づけ、将来、日本と留学先の国との架け橋となるエキスパート人材の育成を目指す取り組み。’’
SENDプログラムはいくつかの大学で行われているようですが、私が通う中央大学では主に日本語教育に重点を置いたものになっていて、2回の留学を含む4段階構成になっていました。
段階1から4までの概要は以下のようになります。
段階1と段階3では中央大学でSENDプログラム所定の科目(「言語学」「音声学」「国語学概論A・B」「日本語教育A・B」など)を履修する。
段階2ではロンドンにあるIIEL(英国国際教育研究所)で日本語教師養成プログラムを受ける。
段階4では中央大学の海外提携校の中(フィリピン、ベトナム、マレーシア、オーストラリア、ハワイ)から自分が行きたい大学を選択して日本語教師のアシスタントをする。
段階1の授業で面白かったのは、日本語のアクセントが意外とわからないということです。英語が強弱アクセントであるのに対し、日本語は高低アクセントですが、普段意識していないからか、単語を提示されても、どこが高くてどこが低いのかわからず苦戦しました(苦笑)
みなさんも試しに考えてみてください。例えば、「いぶんかりかい」、「いぶんか」「りかい」のアクセントはどうでしょうか?
また、異文化理解や言語が理解できずに社会的に排除されてしまう外国人の存在も知り、言語や文化が生活と切り離せないことがわかりました。例えば、災害時にどう行動していいのか外国人の方はわかりにくい現状がありますし、子どもが日本語を話せても親が話せない、または子どもが日本語も親が話す言語も中途半端にしか習得しておらず、地域のコミュニティに参加しづらいなどの問題があるそうです。日本語教授法や日本語の文法だけでなく、日本語学習者の背景も学んだ上で段階2に臨みました。
段階2ではイギリスの英国国際教育研究所(IIEL)で四週間の日本語教師養成プログラムを受けました。前半の二週間は日本語に関する授業を受け、後半の二週間で実習を行うといった流れです。
授業の他にもIIELのカリキュラムの中で、小学校を訪問して四季折々の文化を紹介したり、自分が一度も聞いたことがない言語(ヘブライ語)を学ぶ体験をしたりしました。
文化紹介では、まず子どもたちにリラックスしてもらうために漫画やアニメ、イギリスでも有名な日本人のスポーツ選手を子どもたちに答えてもらいましたが、想像以上に盛り上がり驚きました。その後に季節ごとの行事などをクイズ形式にしたり、折り紙を折ってもらったりして子どもたちが楽しみながら授業に参加できるようにしました。子どもたちの反応がよくて、やっている私たちも楽しくなりました。
ヘブライ語の授業では、先生がすべてヘブライ語で授業をするので、先生が何をおしゃっているのか推測しながら受けていました。そのおかげで初めて言語を学ぶ学習者の視点に立ち、物事を考えることができたので、実習の際にも一つの授業に大事な点を詰め込みすぎていないか、逆に内容が薄すぎないかなどを踏まえて授業を作ることができたような気がします。
実習はグループ実習二回と個人実習一回に分かれていました。
実習は準備が予想以上に時間がかかり、大変でしたが、準備すればするほど学習者が楽しそうに授業を受けてくれる様子を見ることができたため、やりがいを感じました。また、日本語教師に限らず、先生が授業を作り上げるのにどれだけの時間を費やしてくださっているのかを考えることができたため、非常に良い体験となりました。
一回目のグループ実習では、「おはよう、こんにちは、こんばんわ、ありがとう、どういたしまして、おかえり、ただいま、すみません」などの挨拶を担当しました。グループの意見をまとめる困難さや協調性の大切さを学びました。あいさつの種類も沢山あるので学習者にとっては少し負担になったようでした。特に「すみません」には複数の意味があるので混乱している学習者もいました。
二回目は「電話番号」の尋ね方と答え方を担当しました。一回目の反省を生かした上で各々の特徴を出しながら効率よく準備できました。また、本番でも、学習者の気づきを大切にし、授業をすることができたと感じています。ただ、電話番号を言うには数字を覚えている必要があるため数字が曖昧になっている学習者は聞き取りが難しそうでした。
個人実習では、「これ」と「それ」の違いや数字の「11から1000」までを担当しました。意見が対立しない代わりに、授業をすべて自分で準備しなければならなかったため、教材作りにはとても苦労しました。仲間の大切さやチームワークの効率の良さを身に染みて感じました。本番では、今までのグループ実習を活かし、学習者主体の授業を作るように心掛け、時間が余っても慌てずに、学習者の苦手とする部分を復習する時間に充てることができました。一方で練習内容が少し薄かったことが課題となりましたが、「これ」「それ」の違いはわかっていただけたようです。
海外では語学留学をするという考え方が一般的である中、海外で日本語を勉強することは新鮮でした。海外から日本や日本語を見る経験ができたと思います。
ホームステイでは、異国の家庭料理を堪能できてよかったです。個人的にはジャガイモ料理とフィッシュ&チップスが一番おいしかったです。Mother’s Dayにパンケーキを作ってからは少しホストマザーの機嫌が良くなりワインを好きに飲ませてくれるようになりました(笑)
留学する前にアメリカ人の友人と会話の練習をしていたのですが、実際にイギリスの英語を聞いてみると聞き取れない部分もあり、ホストマザーとうまくコミュニケーションが取れないことが多かったこと、一緒にみたテレビドラマの笑う箇所がわかなかったことがすごく悔しかったです。そのことが今でも英語を学ぶモチベーションとなっています。
外国人とコミュニケーションをとる機会を増やすために日本語を学びたいと考える気持ちの方が最初は強かった私ですが、イギリス留学通じて、日本をもっと外国に発信したいという気持ちと外国についてもっと知りたいという気持ちが強くなりました。
後編に続きます。是非読んでください(^^)/