格安スマホがマジョリティにならない理由
とある人に、格安スマホを薦めたのだが、全く響かなかったのでその背景を読み解く努力をしてみた。ちなみに僕は昨年からsoftbankのiPhone6を使っており、格安スマホは使っていない。(そろそろ試そうかという段階)
softbank→Y!mobileの場合
例えば現状のsoftbankのiPhone5S(2年経過済み)→Y!モバイルのiPhone5Sであれば、明らかにMNPでY!モバイルに移ったほうがお得だ。月に2,000円以上は安くなる。12ヶ月にすると2万4,000円だ。
それでも移らない理由。2015年のデータだが、こんなものがあった。
格安スマホを購入しない理由は、「今の携帯電話会社の方が安心だから」56.8%で最多
出典:MMD研究所
格安スマホに関する意識調査
MMD研究所は、16歳以上のスマートフォンもしくはフィーチャーフォンを所有している男女1,670人を対象に「格安スマホに関する意識調査」を実施致しました。
mmdlabo.jp
安心・・・!?
これに関しては情報がしっかり普及し、ブランドが浸透するまで時間がかかりそうだ。多くのユーザーは合理的に判断をしているわけではなく、なんとなくの不安が残れば、今の生活を崩すことはしない。大切な時間と手間をかけてまで変化に労力を使いたくない。このような判断をする人のほうが多い。
逆説的には、現在のdocomo、AU、softbankの3キャリアが築いてきたブランドや信頼、顧客満足度が非常に価値を持っているとも言えるだろう。
世の中に出ている格安スマホの情報
では、情報が行き渡れば、人は合理的に判断できるのか?例えばこんな情報。
確かに、無数に出ている格安SIMについて知りたいし、キャリア的なサポートが受けられそうなワイモバイルも安いから比較したい。というわけで読んでみるのだが、内容が複雑だ。
要素としては、
- 通話料
- 通信料(インターネットの利用料金)
- 通信速度(インターネット回線の速度)
- 通信に使える容量(パケット)
- 使える端末
- SIMフリーかどうか(海外で他のケータイでSIMを使ったりするか)
あたりになるのだけど、上記すべてが一長一短で、自分の求めるプランにたどり着くのが非常に難しい。ガラケー(フィーチャーフォン)時代から10年モバイルの仕事をしている僕でも、全ての要素を比較するとアタマが痛くなった。
ケータイキャリアを移したくない理由
そもそも、スマホはコミュニケーションインフラであり、一瞬足りともトラブルを起こしたくないくらい大切なものになっている。だから、安心して任せられる会社にしたい、という心理もあるだろう。(アジアの新興国の生活費内訳で、スマホ料金の比率が異常に高いのもうなずける)
また、手続きがややこしいというのもその理由になりえる。
- 変更手続きがめんどくさい(店舗に行って、待たされる)
- 2年縛りなどで、また2年後にプランを変更したり、キャリアを変更しなければならない
- メアドを変えたくない(日本では未だにメール、SMS、LINEなどのメッセージ手段が混在している。キャリアメールの功罪というか、今では転出防止の理由にも成り得ている)
そもそも、そんなに困っていない・・・
お店に足を運び、さんざん待たされて新規契約や機種変更をし、設定やら電話帳整理、アプリの入れ替えなど入れると丸一日の作業になってしまう。まあそのままでいっか、という層がいるのもうなずけます。
しかし、ここ5年で、ガラケー→スマホのシフトが一気に進んだ。これはなぜか?
これまで一気にスマホ化が進んだ理由
- iPhoneが欲しい
- iPhoneが異常に安い(時期によってはタダ)
- ガラケー持っているとダサい(学生たちはそう)
- ガラケーでインターネットを使っていなかった層が、スマホの便利さに飛びつく(大人、おじさま)
- ゲームがしたい(パズドラ、モンストしたいからスマホ)
などなど・・・
のようにハードからソフト、料金面など同時多発的に移動する要素があったように見える。
格安スマホを普及させるためには?
一方、今回のようにスマホ→スマホの場合は、「料金が安くなる」以外のメリットはほぼ存在しない。ガラケー→スマホの動きに比べると、相対的にインセンティブが弱い。
スマホやインターネット、料金プランに詳しい層ではなく、ただ、安くスマホを使いたい層に訴求するにはもっとシンプルなやり方が求められると思う。
この状況は、iPhoneをはじめとした、スマホ初期の普及状況に似ているようで、さらに難易度が高く見える。当初は自分で情報を集め、合理的な判断を好む20–40代の男性が興味を持ってトライする(イマココ)。その後、ボリュームゾーンとなる女性、主にお財布を握る主婦、そしてコスパに敏感な学生に対してリーチしていく。その際に、「なんとなく( ・∀・)イイ!!」みたいなブランドができている必要がある。iPhoneがここまでくるのに5年かかったと考えると、同じかそれ以上にかかるのではないかと思う。
CMこれだけやっても格安スマホが浸透しないのも、なかなか動かない層に対してのアプローチが大変なことを物語っているように見えます。
結局はブランドなのか
iPhoneもそうですが、これまで築き上げてきたdocomo、AU、softbankの3大キャリアへの信頼が非常に高い現状があるため、そこを何かしらの要素で突破する必要がある。(MVNOのため回線はdocomoですが、そんなこと言っても伝わらないでしょう)
月額で3,000円〜1万円を超えるケータイ代金を何年も払い続けるに値する企業はどこか。
その点で、softbankの姉妹ブランドにしたY!mobileの店舗、サポート戦略(旧イーモバイル、ウィルコム店舗)や、Yahoo!プレミアムとの連携などは一歩リードしやすいのではないか。この事業、1,2年で急激に進むものではなく、5−10年でじっくりブランドと信頼を積み上げながら、顧客を獲得していく闘いなのだなと思ったのでした。
同じく、スマホ上でのコミュニケーションインフラとしては5年の歴史があるLINEモバイルも面白いな、と感じています。