Day 11

Michino Hirukawa
パリのすみっこから
5 min readMar 2, 2019

パリに来てから2回目の土曜日を迎えた。本日も相変わらずGillet jaunesのデモが開催されると注意勧告を受けていた。金曜の昨晩から、テレビのニュースでは予定ルートやデモの規模感について報道されている。パリに来てから、テレビで何度“マクロン”というワードを聞いただろうか。嫌でも耳にはいってくる。今朝も早速テレビを点けると、凱旋門あたりに黄色いベストを着た人だかりができはじめていた。先日訪れたときは何もなかったのに、曇り空の静かなシャンゼリゼ通りでデモをする人びとが集まってくる。

だから今日の予定をどうしようかと迷った結果、カルチェ・ラタンのあたりを散歩することにした。ここはソルボンヌ大学もあり、学生が多く集まるらしい。そんな知的な地区を歩いてみようと、まちへと繰り出した。バスでノートルダムのあたりへ向かう。地下鉄であればパリの風景をじっくりと見ることができない。けれどもバスであれば、身をゆだねながらまちの風景を楽しむことができる。歩行者、スクーターや自転車を乗り回す人、道に面したカフェやレストラン、歴史的な建造物。記憶に焼きつけておこうと、窓の外のほうへ目をやる。徐々に観光客も増えてくる地域に入ってきて、止まるよのボタンを押したが、目標のバス停には止まらなかった。どうやら工事が行われていたらしい。間違えても焦らずに次の駅から引き戻したおかげで、セーヌ川沿いの古本市を見ることができた。

本日の最初の目的地は、Shakespeare and Company。ここはパリにあるアメリカ文学の中心地であり、初代店舗にはヘミングウェイやフィッツジェラルドが通っていたらしい。書店ファンとしては興奮してしまう。観光地化されていて、たくさんの観光客で賑わっているし、聞こえるのはほとんどが英語。よく耳をすませると、イギリス訛りも多い。文学ファンというのは、どこでもいるらしい。肝心の書店は、まるで迷路だった。上から下まで本がぎっしりと詰まっていて圧巻だ。木のムッとした匂いが漂い、時々きしむ音も聞こえてくる。残念なのが、写真撮影が禁止であること。そして、ほとんどが英語の本であることに少し笑ってしまう。よく考えてみればアメリカ文学の中心地であるため、そうなってしまうかもしれない。昔から残っている本を読めるスペースがあったりと、これだけの長い間蓄積された空気感こそが価値である。隙間の壁には、各作家のイラストが描かれて、やはりギャラリー化されている側面もある。記念にトートバックとノートを購入したが、店員さんもフランス人ではなさそうだったのがさらに笑ってしまう。ナチュラルに、英語でコミュニケーションをとってしまった。

Shakespeare and Company

それからは近くの散策。目の前にはノートルダム大聖堂があるが、逆の方へ足をすすめる。またまた、本屋めぐりをすることにした。今回は地球の歩き方にも掲載されていた、Gibert Josephを目指す。いわゆる、大型本屋さんだ。行く途中、大学やストリートを目にしていると、活気がありながらも落ち着いた雰囲気を感じることができる。外からすぐに、Gibert Josephを見つけることができた。黄色と青色の、ひときわ目立つ看板が存在感をひき立てる。入口のスペースにもいきなり大量の本がケースに出ていて、人びとが集まって手に取ろうとしている。おそらくここは古本コーナーだ。何件か本屋に通ってみると、ようやくどのように本を探すのか慣れてくる。もちろん作家のアルファベット順ではあるが、フランス語で書かれた各ジャンルを確認できるようになる。私のお目当ては、Sci-Fiからはじまり、Roman Françaisだ。フランス文学はまだあまり知らないため、どうも手にとりづらいのが何とも悔しい。英語の文学もあり、両方の言語の本を入手できるパリの書店がうらやましい限りだ。

ということで、今日は本屋巡りになってしまった。なぜなら帰り道も、よくわからないがGibert Josephの関連書店がたくさんあった。店に入っては出て、また次の店に入ってをくりかえした。(まあ絶対来るのだが)次いつフランスに来れるかわからないし、書店の匂いや雰囲気を触れるだけ触れておこうという気持ちで立ち寄っていた。これも、私にとってのパリでの記憶となる。完全に趣味な1日になってしまった。今までにおかげさまで、ノートや本や雑誌が増えてしまい、帰りに荷物制限が引っかからないか非常に心配している。

帰宅は早めだった。気分を変えて、近くのパティスリーでエクレアを買って帰る。ここのパティスリーは何か賞をとっているそうで、若い女性たちが売り子をしているのが印象的。明日の朝食クロワッサンも買って、両手にはパンだらけ。帰って、じっくりとエクレアを味わいながら、テレビを点ける。たびたび乗り換えで使う駅の広場が映し出され、黄色いベスト隊が集まっている。きっとこの人たちも、いつもは普通の生活を送っていて、週末だけデモをしている。テレビではデモの様子が一日中報道されている。いつもどおりの中華料理を食べながら、もう飽きたよ、と言いたくなるほどだ。いや、これこそがパリの日常だ。もがきながら、それでもやるしかないと、パリのまちを歩き続ける人たちがいるように。

ホテルにて

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