Day 12

Michino Hirukawa
パリのすみっこから
6 min readMar 3, 2019

2回目の日曜を迎えた。パリへ来てから10日以上が経ち、いよいよ<終わりかた>を考えはじめる。帰り方、パッキング、やり残したことはないかと問いかける。この<終わりかた>が、またここへ帰ってくるための“再会”を導くはずだ。2週間という限られた贅沢な時間ではあったが、パリのいろいろな場所へ足を運ぶことができた。いまできることを、やりきるために、今日考えた予定は美術館巡りだ。しかしまたどこかの広場でデモをしていると聞いたりと、南北自由に移動すると面倒がありそうだった。だから行きたかった美術館の1つである、オルセーへ行くことにした。

そして、本日は月の第一日曜日。つまり、パリの美術館が無料で入場できる日だ。このことは事前に知っていたため、ラッキーでありながらも人混みだなと、顔は曇ってしまう。朝早くに行けば問題ないと思いつつも、なぜか夜更かしをしてしまい、結局起きたのは9時頃に。眠い目をこすりつつ、体を起こす。パリに来ているのに、大型美術館に行ってないのは何卒となるのは嫌だと言い聞かせながら、身支度する。行き方を調べ、必要な物をリュックに詰め込む。パリの美術館はテロ対策のため、空港並のセキュリティチェックが求められる。しかも、大きいリュックサックは預けるように指示される。実際、私も何度か注意を受けた。今日も面倒だなと思ったが、オルセーという大型美術館なら見逃してくれるだろうと開き直り、突破しようと決めた。

公共の交通機関を使ったり、歩いたり、オルセーへと目指す。今回のパリ滞在もあと少しだと思うと、なるべく景色が見える手段を選んでしまう。パシャパシャと写真を撮り、できるだけ残しておきたい。セーヌ川沿いに近づくほど、観光客でにぎわっている。なぜなら、オルセー美術館はすぐそこにあるからだ。角を曲がったところで美術館の入口が視界に入ると、驚くべき光景がひろがっていた。長い人の列だ。

もちろん無料入場の日のため、長蛇の列は予測していた。しかし、美術館の正面玄関をこえて普通の道にまで列が伸びているとは。途中、謎に栗を売りながらお金を貰おうとする人たちがいたり、この現場だけを見ているだけで結構面白い。待っている時間は結局1時間ほどになってしまったが、周りの光景を見たり、考え事をしたり、無になったり。待ち時間に耐えるのが苦ではく、むしろ面白がってしまう。この場所にもいろんな人がいるなと、距離を取りながら眺めてしまう。

オルセー美術館

ようやく美術館に入ると、目の前には大きなパサージュ。よく見ると、人が座っていたり、立っていたりするなか、ゴロゴロと彫刻が設置されているのが面白い。どれも名だたる作品でありながら、何だか無造作というか、あまりにも放り出され感がすごい。早速マップをもらい広げてみるものの、広すぎて最初は迷子になった気分。とりあえず下からのぼっていくかと階段を降る。さっそく迎えてくれたのは、ロートレックだった。次の部屋に行くと、当たり前のようにセザンヌやモネが出てきて情報がついていかない。そもそも美術館自体が19~20世紀の絵画を扱っているため、いわゆる印象派の作品が多い。それぞれの部屋の間にはいちおう職員が見張っているが、寝ている人もいてあまりにもコントロールされてなさに腰が抜ける。カフェがあったり、ベンチがあったり、お話をする人やデッサンをしている人もいる。パリの美術館では規模感から大きく違うのだが、こうした余白がある。だからきっと、毎度来ても違う体験ができる、飽きない仕組みがつくられている。

ここからも続々と有名絵画を一気に見ることができた。ルノアール、ゴッホ、ゴーギャン。とくにミレーの本物の『落穂拾い』と出会えたことは嬉しかった。他にも時計台や、オルセーには見るべきポイントがたくさんある。パリの美術館では、1日を過ごすことができる。やはり美術史をまたきちんと勉強したいという気持ちにも駆り立てられた。その後は、ミュージアムショップでトゥールズ=ロートレックについての本を買った。もちろんフランス語であるため、勉強しながらこれから読んでいきたい。こうして、新しい言語を取得するプロセスのなかでは、また新しい世界に踏み込んでいける楽しみがあるからやめられない。

美術館を後にすると、時はすでにお昼をすぎていた。近くのブーランジェリーでお昼を済ませる。美術館近辺のため、店員さんも観光客相手に慣れているのかところどころ英語も聞こえる。サンドイッチとカフェを両手に、時には歩きながら、ゆっくりとした時間を過ごせるのもあと少しかと思うと寂しくなる。店員さんと話していると、まだ文章としては理解できない。けれども、la carte, accepté, pardonなどのキーワードを聞き取って、想像してコミュニケーションとっているにすぎない。それが、異文化コミュニケーションでもある。

この流れで、先日教えてもらったBon Marchéへ。ここは世界ではじめて、量り売りではなく値段が変わらないスタイルができた歴史あるデパートらしい。お土産になりそうなお菓子を買うのだが、とても迷ってしまう。なぜなら、フランスのお菓子は日本でも購入できるものがあるからだ。何がフランス「的な」のか、私がつくる、おみやげの<ストーリー>次第かもしれない。

Bon Marché

帰路にのって、いつも流れで晩ご飯を買いつつ、パリでの大型本屋へ立ち寄る。パリには英語の本屋CD・DVDが売っている。ここで私の頭が妙に働いてしまったのだが、じぶんの好きなアーティストや日本で購入できないものが売っているのではとあさってみた。すると、いくつかそれらしき本やCDやDVDを見つけてしまい、また出費が重なってしまいそう。アメリカやイギリスの文化も、パリで受け入れられているそうだ。

パリにいると、じぶんの趣味に関しては満足できることがわかった。このような話を綴るときは、じぶんの世界に入ってしまいがちのため、没入しすぎず考えることが難しい。文化を享受しつつ、知的好奇心を忘れない気持ちを持ちたい。また、日本に帰ってから何をするかを考えているし、いずれ最後にまとめたい。外に出ると、改めて見つめ直せることが多いのは間違いない。

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