Day 7

Michino Hirukawa
パリのすみっこから
6 min readFeb 27, 2019

この地区で過ごす、最後の日だった。朝ご飯、景色、お店。何をするにも「最後」という言葉がつく。いつもどおり朝起きると、パッキングをはじめる。本や日常用品ばかりを購入しているため、意外とスーツケースがすでに詰まってしまった。何かを持ってかえること、旅の記憶がものとして残っていく。

さっそく、近くで行動を開始した。まずは行きたかった場所の1つである、Yves Saint Laurenの美術館へ。とくにブランドが好きというわけではないが、何かの分野で境地に達した、プロの世界を覗きたい気持ちでYves Saint Laurenの映画も観た。外観はとてもパリっぽいというか、洗練された雰囲気が溢れだしている。なかにはいると、黒スーツの男性と女性がスタッフをしていて、スマートかつコントロールされているようだった。ここに来ている人たちは、若い女性たちが多く、またマダムたちも目立っていた。展覧会そのものは、Saint Laurenのコレクションやスケッチが展示されている。正直いえば、小さいながらも意外と見とれてしまう美術館だった。1つ1つのドレスがきめ細かく綺麗。ファッションの用語はあまり知らないが、常に次の流行をつくりだし、鋭い視点をもってクリエイトしていく分野なのだと感じる。さっそくだが、世界のセレブリティがパリにいるようだ。限られた人しかアクセスできない世界がある。

イヴ・サン・ローラン美術館

適当にちかくのカフェでパスタを食べると、その後は散歩がてらにUNESCOの本部へ。せめてイサム・ノグチと安藤忠雄の庭園をと、外の隙間から見学する。日本人アーティストの作品が、UNESCOの施設内にあることをどう考えるか。パブリックでは入れないが、入口には自然に出入りするスーツ姿の人たちがいる。きっと職員さんだろうと予測できるが、UNESCOで働く人が存在するのかと確認した気分になった。施設内でもランチをとったり、日向ぼっこをしたりと働いている人たちがいる。一方で、入口付近には物を求める人たちが数名いた。UNESCOの存在意味とは、象徴と現状と、何があるのだろうか。

チェックアウトまで時間があったため、どこかで時間をつぶす。ちかくで見つけた公園で足を止めることにした。芝生の上では女子学生たちが昼食を、まわりのベンチでは絵を描いてる人、電話をしている人、寝ている人たちがいる。海外にはこのような公共スペースがたくさんあることが羨ましい。誰をも拒まない場所であり、自由な時間を過ごすことができる。日本ではこのタイプの公園を見つけるのが非常に難しい。外を歩いていると、どこか、じぶんの居場所がない気分になってしまうときがある。

ホテルでは最後の挨拶を受付の人に伝えて、次のホテルまではタクシーで移動した。荷物があることと、慣れない移動のためにこの手段をとった。次はアパートホテルなので、小さなキッチンがついている。また違った雰囲気の場所に根付かなければいけない、いまはそんな新しい気持ちでいる。とくに今晩は何も予定がなかったが、ここで、先日に知り合ったこちら在住の方から夜ご飯でもお誘いをもらった。基本的に夜はパリのまちを歩かないので、せっかくの機会に連れてもらうことにした。

2人で合流し、メトロを乗り継いで、乗り継いで、人が集まる地区へと向かう。1人で夜だとこのような場所に来ることはない。だから、賑やかな夜のパリの顔を見ているようで、楽しくなる。20時頃からが、パリの人たちにとっての本番らしい。まだこの時間は、カフェでまずは1杯とはじまっていく。日本でも料亭にいくと、まずは日本酒が出されるのと同じだ。国は違うけれども、料理を楽しむ根本的な考え方は似ているのかもしれない。このストリートは飲食店が集まる場所であり、道に面するテラスで人びとがお酒を片手にひとときを過ごしている。話を聞くと、テラスにいる人たちは観光客が多いようだ。本当の常連さんは、なかの2階に案内されるとかで、扱いが少々異なってくるらしい。

有名なレストランは大混雑

予定していたお店が想像以上の混雑だったため、改めて地区を変える。案内してくれた彼のテリトリーらしく、連れられるがままに足をすすめた。有名なカフェが立ち並び、また彼が働くお店にも、世界や日本の著名な人たちが来る話を聞かせてもらった。かけ離れた世界にいる人たちが、パリに集まるため出会える確率が高い話は興味深い。なぜに人びとを惹きつけるのか。整えられたまちだからからこそ、そこで生き残っていくことは試されるらしい。

ようやく腰をおろしたフレンチレストラン。パリ滞在以来、はじめてのディナー体験。渡されたメニューは見事に理解できず、きっと料理の分野では用語か細かく分かれているのだと気づいた。コースではないけれども、きちんと順番に頼んだものが出てくる。結論から言うと、ボリュームがあるメイン料理でも不思議とお腹にはいってしまう。それがフレンチマジックらしく、だからこそ担当の人はタイミングを見計らって次の料理を出さなければならない。料理によってはお皿が温められていたり、冷たかったり、フランス人的なおもてなしのやりかた。けれども、茶道や日本料理でも相手を読み、現場にあわせながらお道具や料理を出すタイミングを変える。日本とフランスは料理の分野で相性がいいのか、つながりを考えることは面白い。

フレンチを楽しんだあとは、夜のまち散策へ。シテ島にはあのノートル・ダム大聖堂が神秘的な輝きを放ち、夜ならではの魅力がある。セーヌ川もまた違って見えてしまう。ちょっとした冒険をして、バスで帰宅。パリ滞在も明日で半分が終わる。また残りもがんばっていこうと気持ちがチャージされた夜だった。

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