色とりどりに集う場所(7)

jir
にじだより
Published in
5 min readMar 31, 2020

前章では、カテゴリーをテーマにワークショップをした記録と、それを元にカテゴリーのキットを作成していった。今回は完成したキットについての詳しい説明と、実際に様々な人に触れてもらった感想について述べていく。

目次

・「アテ・カテゴリー」というキット

・「アテ・カテゴリー」の使い方

・参加者に触れてもらった所感

・これから

「アテ・カテゴリー」というキット

作成したキット「アテカテゴリー」の同梱物は当初のアイデアと少し変わり「①項目レイヤー」「②お題カード」「③説明書」の3つになった。

作成時のIllustratorデータ

項目レイヤー(上図左)は全部で120種類用意した。これらは、加藤研の一部のメンバーに自己紹介してもらったデータと、計5回渋谷で人間観察を行ったフィールドワークのデータを踏まえて作成したものである。「生まれ(赤)」「見た目(青)」「持ち物(緑)」「趣味嗜好(黄)」の4象限で捉え、それぞれ30種類に分けた。

お題カード(上図中央)は全部で8種類ある。穴あきの自己紹介文が書いてあり、穴には4色の色がついている。作成当初は「私は○である」の1枚だけ作成していたが、「でも」や「なにより」などの接続詞をつけた文も用意することによってワークショップをする際のゲーム性を高められるのではないかと考えた。

「アテ・カテゴリー」の使い方

アテカテゴリーを使う流れは以下の通りである。

①8枚のお題カードから3枚ひく

②お題カードの穴あき部分に、穴と同じ色の項目レイヤーをはめる

③完成したお題カード3枚を並べ、最も自分を表せていると思うカードを選ぶ

④「なぜそのカードを選んだのか」「他にどんな項目があったら自分を表せていたか」について話す

①②では「1〜2つの項目だけで自らを表すことの難しさ」を体感し、③④では「普段自分がどんなカテゴリーを重視しているか」について捉え直してもらう、というような意図でこの流れを設計した。

参加者に触れてもらった所感

フィールドワーク展では、実際に様々な人にこのキットを触れてもらった。前段落で記した通り、お題カードに対応した色の項目レイヤーを入れ、最後に「何故そのカードを選んだのか」について参加者が話し合うという流れで進めた。

そのカードを選んだ理由について話してもらっている場面

結果として興味深かったのは、「生まれ(赤)」の項目を使ったお題カードを「自分を最も表せている1枚」に選ぶ人がいなかったということだ。具体的には「10代」「80代」といった年齢や「東京出身」「北海道出身」といった出身地のレイヤーを使っているお題カードだ。これらの項目は履歴書や面接など社会的な場面で扱われることが多いが、これらの項目だけでは自分表せられない、と感じている人が多い傾向が見えた。

逆に、「趣味嗜好(黄)」の項目を使ったお題カードを「自分を最も表せている1枚」に選ぶ人が多いこともわかった。選んだ理由として「自分の性格が出やすいから」や「趣味嗜好から、その人の行動や出身なども予想することができるから」などがあった。

これから

この展示を経て自らのツメの甘さに気づいた。

ツメが甘かった点は主に2つある。1つ目はワークショップにかかる時間や参加可能人数、最後の質問の流れまでをしっかりと決めていなかったことだ。そのため参加者はどこから考えればよいかわからず手が止まっていたり、質問にも答えづらそうな様子だった。「カテゴリー」というテーマで参加者同士のコミュニケーションを促すことが制作物の目的だったのにもかかわらず、その目的を全然達成できていなかったことに悔しさを感じている。2つ目は記録対象をしっかりと決めていなかったことだ。「ワークショップをしたい」、「制作物を触ってもらいたい」という気持ちが前のめりになり、記録するという行為をおざなりにしてしまっていた。そもそもプロジェクトではワークショップ(制作物)を通して何を得られたか、何がわかったかが重要であるにもかかわらず、まるでFW展で参加者に触れてもらうことこそがゴールであるかのように考えてしまっていた。結果としてFW展の参加者の反応を記録することができずに終わってしまった。

残りの期間では、ワークショップを改善させた後、触れてもらって感想を聞く、そして再度改善させる、といったサイクルを繰り返すことになるだろう。これまでの卒プロはで面白いと思ったことに向かい盲目的に進めてしまうということがあったが、私自身本来大事にしていた本プロジェクトでの問題意識を忘れずにしっかりとゴールに向かっていこうと思う。

これは、慶應義塾大学 加藤文俊研究室学部4年生の「卒業プロジェクト」の成果報告です(2020年4月1日時点)。

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