Translation(7)

Michino Hirukawa
にじだより
Published in
5 min readMar 31, 2020

フィールドワーク展
2月初旬の週末、加藤文俊研究室の1年間の成果報告を兼ねた展覧会が開催された。卒業プロジェクトの最終成果を外部に発表できる機会であり、この日がひとつの区切りとなる。加藤研に入ることを決めたきっかけが2年前のフィールドワーク展だからこそ、当初から出展を目標にしていた。しかし悩むなか実践に踏み切れず、ようやく12月から卒業プロジェクトが本格的にはじまった。その矢先に、フィールドワーク展が控えていた。1月の時点でふたり分のインタビューができていたため、どのように途中成果として展示でまとめるかを考えなければならなかった。展示とは研究の成果であり、それはインタビューを通して「らしさ」について考えた、私の意見である。けれども、インタビューの感触は掴めていたが、ふりかえりも十分ではなく、結果として出せるものではなかった。フィールドワーク展に向けて準備はすすめていたものの、展示のための作品づくりになっていることが否めなかった。また卒業プロジェクトの提出を遅らせていたこともあり、フィールドワーク展での体験がその後の自分自身に影響することも何となく予測していた。このような状況を踏まえ、ギリギリのタイミングではあったが、フィールドワーク展への出展を辞退する決断をした。

個人出展を断念した分、フィールドワーク展では研究室全体でのフォローに回った。3日間にわたって、同期たちの卒業プロジェクトの展示の様子を見届けた。しかし観察しているだけでも、卒業プロジェクトを展示するインパクトを知ることができた。高いテンションで話していたり、緊張しながら相手をしていたり。大学の友人や関係者、全く見知らぬ人にまで自分の表現を対外的に発表することは、自身にも強く返ってくる。展示を体験できなかったことは悔しくもあるが、結果は認めている。周りのなかでの苦さも味わった。ただ一方、もしも卒業プロジェクトを“中途半端”な状態で展示していたら、何か引きずることになっていたかもしれない。だから、正しい判断だったとふりかえっている。

1年間をふりかえる
卒業プロジェクトの1年間は、私が過ごした加藤研生活の3分の1を占める。ひと区切りした今、最後の1年間がどれだけ“不足”だらけだったかを痛感している。まずは圧倒的に、準備不足だった。ある目的のために、どのようなリソースが必要で、何をするべきなのか。正直なところ、全くというほど、1年前は計画していなかった。むしろ、何が「うまくいかない」のかもわからなかった。そして4月から本格的に始動しても、なかなか前に進めないことがコミュニケーションの遮断へとつながってしまう。しかも、自分の知らないところで、周りの同期たちが準備に取りかかっていたのは「加藤研らしさ」のインタビューを通して知ることになった。この1年間は、自分にとっての苦手への対処の仕方を学ぶ、違う意味での勉強になり、意味のある時間だったとは捉えている。すなわち過去2年間とは大きく異なり、研究室の生活との向き合い方が打って変わってしまった。

例えば、学部の2・3年生はグループワークを通したプロジェクトに取り組む。3〜4人で構成されたグループで、与えられた課題に応えることを目的に、まちでフィールドワークをしたり、最後には作品を提出したりする。大学での研究調査としての活動ではあるが、決してその課題だけを考えているだけではすすまない。共に課題へ取り組むメンバーたちとの何気ないコミュニケーションこそが、プロジェクトが円滑に動くきっかけにもなる。ひとりではなく、数人でプロジェクトを取り組むことが前提になるため、コミュニケーションが絶えにくい環境ではあった。そのような状況を経て、4年生になったとき、突然ひとりでプロジェクトをデザインする立場になった。今までの“当たり前”に対して、自分があまりにも従順的であったことに気づいた。しばらく周りに圧倒される状況が続くと、さらに内向きになってしまう悪循環にも陥ってしまった。周りや自分自身とのコミュニケーションをどのように開いておくかが、ずっと私の課題だったのだろう。

3年間の素直なテンショングラフ

今後
少々ネガティブなふりかえりなってしまったが、3年間というある一定の時間を加藤研で過ごした事実は変わらない。調子の良いときや悪いときを含め、さまざまな経験を積むことができたことで、自分自身の気づきにつながったと実感している。この経験こそが、私にとっての「加藤研らしさ」を語るひとつの指針となるかもしれない。

現時点では、3人とのインタビューを終えている。研究室を通して出会い、最低でも週に1度は顔をあわせてきた。1対1で話をすることは、よりその人と私の関係性を見つめることになる。インタビューをしている最中は、集団のなかで感じていたある種の力が薄くなるようだった。素朴に、1対1で話をすることは楽しくもある。まずは3人の発言のなかで、共通した「加藤研らしさ」をまとめてみたい。そこから、その人の人となりを描きだせないかと考えている。

この1年間卒業プロジェクトに取り組んでいた同期は6人いる。残りのふたりとはすでにアポイントを取っている。もともとの計画では研究室にいるメンバー全員とのインタビューを予定しているが、パンデミックな世の状況もあり、どのような形で続けていくのが最適か再考している。

これは、慶應義塾大学 加藤文俊研究室学部4年生の「卒業プロジェクト」の成果報告です(2020年4月1日時点)。

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