ビューイング — WS2B 57期 12回目前編

アート写真の種類

OKUMURA Takahiro
ワークショップ2B学修記
5 min readNov 9, 2017

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ワークショップ2B 57期 (7/22–10/21) は写真家・渡部さとるさん主宰の写真ワークショップ。第12回はビューイング。

渡部さんの所有しているブックマット(窓付きのマットと台マットを重ねた本状の写真台紙)に綴じられた作品群(アート写真)を見て回った。

ブックマットはこんな感じで、作品を傷つけずに額装できるらしい

ちなみに(ギャラリーによって多少の際はあるものの)アート作品を見て回る時は、勝手に触るのは勿論のこと、作品を傷つけないよう首からアクセサリーなどをぶら下げたるのも避けたほうが良いそうだ。どの程度の厳密さなのかわからないのだが、ワイヤレスイヤホンを首から下げているのも引っかかるかもしれない。

多分こういう感じでは打ち首なのだろう(ショッピングのイラスト「買い物をしている女性」

また、咳やくしゃみによる飛沫を避けるため、マスクの着用を要求されることもあるらしい。マナーとしてつける人もいるようで、今回の WS2B でも数名が言われずともマスクを付けていて、なるほどと感心した。

アート写真

アート写真どころかアートそのものに疎い人間なので、よく知っている人からすれば当たり前のことでも、とても新鮮に感じた(なので、この後の文章はたいていが「だそうだ」「らしい」ばかり言っている)。

アート写真の世界でも当然経済が回っており、どのように価値を付けるのか、誰がその価値を見てめるのかといった歴史的背景も含めた知識を吸収できることは楽しい。

オリジナルプリント

オリジナルプリントとは、作者が自分のものであると認めたプリント(作品)を指す。作者のサインが承諾の証となるらしく、プリントするのは他人でも良いそうだ。

ちなみに、作者のサインは一生不変というわけではなく、森山大道のサインの変遷を教えてもらったのだが、なんだか面白かった。だいたいは簡略化の方向に走るのだろうなあ。

エディション

ざっくり言うと、プリントの総量を決めるのがエディションの役割だそうだ。“3/10” と書かれていれば、それはプリントされた10枚の3番目ということになる。

写真は絵画よりも版画と似た特性があり、つまりネガから何枚でも複製しうるが、巷にあふれてしまえば作品価値も揺らぐし、なによりプリント作業には人手がいる。そこで考え出されたがエディションらしい。

また、売れるたびに価格が上昇していくステップアップ・エディションという仕組みは、なんだかチケットの早割っぽいなと思った。人気の出た後はプレミア価格に上昇することもあるそうで、早いうちに「これには価値がある」と気づいて買ってしまう目利きが重要なのだろう。

モダンプリント、ヴィンテージプリント

またプリントにはモダンやヴィンテージといった趣向があるらしい。先生が仰っていたが、作家ではなく展示するギャラリー側による販売システムらしい。たしかに作家が自身の作品をヴィンテージ呼ばわりするのも、なんとなく変な感じがする。

どこからがヴィンテージなのかというと、撮影後、数年以内にプリントされて、そこから30年経ったものがモダンからヴィンテージへレベルアップするそうだ。20年という場合もあるらしいのだが、ギャラリー側がどう言っているか次第なのだろう。

別の見方をすると、30年以上前のネガフィルムの保存状態がいくら良くても、その場でプリントしたものはヴィンテージではなく、モダンプリントと呼ぶそうだ。

ネガより印画紙

ヴィンテージプリントという趣向は、ネガフィルムよりも印画紙であり、成果物(=プリント)の時間の経過に重きをおいているのだろう。味わいというものかもしれない。

ネガフィルムの保存状態が良ければ、フィルム現像から数十年が経過したとしても複写は可能である。むしろ、印画紙の質も向上することで当時よりも階調豊かな作品に仕上がる可能性だってあるかもしれない。

しかし、 “当時のプリント” を再現することはネガフィルムだけでは出来ない。時代に伴って印画紙の質も向上しているらしく、豊かな階調で表現できるように “なってしまった” のだ。かつてはアグファの印画紙などもあったが、今ではイルフォードあたりだろう。今はもう手に入らないからこその希少性なのかもしれない。

国外から国内へ、活動を移りかえる写真家

インターネットの普及により、2007年あたりから海外のものは海外からネット経由で入手できるようになった。

それまでは国内の写真家は海外へ旅に出て、世界の様子を撮影してまわり、帰国後にそれらをプリントして展示したり写真集にまとめたりしていたのだとか。「世界を国内へ伝える」ことに意義があったわけだ。

それが今やネット経由で海外の様子などポンポンと手に入るのだから、わざわざ足を運ぶコストをかける必要がなくなってしまったということだ。インターネットの普及は写真家の活動にも影響を及ぼしているらしい。

そして日本人写真家は(というと主語が大きいかもしれないけど)日本を世界へ発信する活動に変わらざるをえなくなった。写真家さんのプロフィールをつらつら眺めていたときに、「近年は日本の伝統の様子に目を向けて〜」といった文章を見つけることがあるな〜と思っていたのだけど、この話を聞いてあながち偶然ではないのかもしれない。

さて、ちょっと長くなってしまったので12回のメモは前編・後編ということにして、続きは後編に綴ることにする。

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