中国ブロックチェーン動向まとめ(2016年~2017年版)

kurago
中国ブロックチェーン事情
9 min readJan 12, 2018

今回は、香港に拠点をおく企業「Gatecoin Ltd.」オフィシャルブログの記事『中国区块链创新概览』について、当方の翻訳許可を頂きまとめました。

本記事では、2018年1月までの中国ブロックチェーン産業の動向がよく整理されていて、全体感を掴む上で非常に参考になります。

作者:周伊蕾、香港大学メディア学科修士研究生

「ブロックチェーン」この馴染みない技術用語は過去2年間にわたり、だんだんと多くの人の目に入ってきている。ビットコインなど仮想通貨は中国政府によりBANされはしたものの、一方でビットコインの核心技術であるブロックチェーンは、逆に中国の各業界から大きな注目を浴びた。

仮想通貨やICOへの態度とは大きく異なり、中国政府はブロックチェーン技術を非常に重要視している。2016年G20の際にも、ブロックチェーンは金融包摂(Financial Inclusion)とともに重要議題として取り上げられたほどだ。

また政府の主導のもと、ブロックチェーンの実験展開やアプリ研究はいま中国国内でものすごい勢いで行われている。

既に中国の著名インターネット企業は恐れることなく、ブロックチェーン業界に投資しており、ブロックチェーンに基づいたイノベーション企業も耐えず出現している。また更にこのような市場環境のもとで、各業界で連盟や研究組織が相次いで成立している。彼らはブロックチェーン業務の開発に取り組み、ブロックチェーンコミュニティをサポートし、業界内の研究資源を最適配置している。

政府がイノベーションを主導

2016年2月、中国人民銀行トップの周小川は法定デジタル通貨関連の問題について語った際に、ブロックチェーン技術はひとつの選択肢であると言及した。彼はまた中央銀行がブロックチェーンアプリ技術を研究するために重要なリソースを配置したことにも触れた。

2016年10月、工信部(Ministry of Industry and Information Technology)はWanxing GroupとWeizhong銀行、Ant financial、LeEcoなど7社と提携し、『中国ブロックチェーン技術とアプリ発展ホワイトペーパー』を公布し、国内外のブロックチェーン発展現状を研究し、初めて自国のブロックチェーン標準化のための路線図を提出した。

2016年12月、国務院は『十三五”国家情報化計画』内で、明確にブロックチェーンを戦略技術のカテゴリに分類した。

2017年4月、Wuzhen Thinkは『中国ブロックチェーン産業発展ホワイトペーパー』を発表し、大量のデータを通じて、世界と中国のブロックチェーン産業発展の趨勢を整理し、科学研究機関と関連企業のために有益な知識サービスを提供した。

2017年8月、国家インターネット救急センターが立ち上げた国家インターネット金融安全技術専門家委員会公式サイトにて『合法なブロックチェーンガイドライン』を発表した。

政策上の支持にとどまらず、政府はブロックチェーン研究型のフォーラムも設立した。例えば、工信部の中国ブロックチェーン技術や産業発展フォーラム、中国ブロックチェーンアプリ研究センターなど、ブロックチェーン業界の発展のためのナビになるものだ。その他、Xinhua News Agency、人民日報などのメディア上にも多数のブロックチェーンの紹介が見られ、ここからも政府がいかにブロックチェーンを重視しているかが見とれる。

企業のブロックチェーンイノベーション

もし公的機関がブロックチェーンを支持するスタンスがそのまま中国での発展指針を表すとするならば、企業のイノベーションと模索は中国ブロックチェーン産業の発展をもたらすエンジンとなるだろう。

中国三大インターネット企業、Baidu、Tencent、Alibabaはそれぞれブロックチェーンによるソリューション部門に相次いで投資している。

Tencentは技術でも実践でも、ブロックチェーン領域に早くから張っているインターネット企業であるといえるだろう。

2017年4月24日、Tencentは『テンセント信頼ブロックチェーンホワイトペーパー』を発表し、自社でTrust SQLプラットフォームを研究開発している。またユーザー数の多いメッセージアプリや決済手段を頼りに、Tencentは国内初のインターネット民営銀行である、WeiZhong銀行を立ち上げている。

2017年7月、WeZhong銀行はWanxiang GroupやJUZIXと提携し、ブロックチェーンオープンソースプラットフォーム(Blockchain Open Source)を共同開発し、企業にブロックチェーンアプリサービスを提供することに力を入れている。三方の中国国内での立場や業務モデルへの深い理解によって、BCOSプラットフォームは国内で初の安全で制御可能な、ビジネス利用可能なブロックチェーン技術プラットフォームとなった。

Tencentと同じく、インターネット大企業のAlibabaもブロックチェーン領域で数多く仕込んでいる。

報道によると、Alibaba Groupの傘下のAnt financialとAlipayは「知覚障害者向けに声を獲り戻す」公益プロジェクトにおいて、ブロックチェーン技術を活用しており、1回毎の支払いが全てブロックチェーン上に記録され、透明性とトレーサビリティを実現している。2017年3月4日、AlibabaはPWCと提携し、海外食品加工企業から中国の消費者までのトレースシステムを作り運用し、食品偽装行為を打破しようとしている。8月19日、アリババはまた中国政府とも提携し、国内初のブロックチェーン技術を使った医療分野のアプリをリリースした。

TencentとAlibabaと比較してみると、Baiduは金融ブロックチェーン領域の仕込みは多くない。しかし、2017年中期以降に、Baiduは中国語検索エンジンの強みを活かし、ブロックチェーン領域への仕込みを急ピッチでスタートした。

2016年6月、Baiduはアメリカのブロックチェーン技術を使った決済企業Circleに投資している。その企業はビットコインのストックと国家法定通貨の交換サービスを主に提供している。2017年10月、BaiduはHyperledgerプロジェクトに加入し、そして会員となった。副総裁の張旭陽はBaiduはブロックチェーン技術が自社にユーザーニーズに合ったより良い検索技術を提供する助けになり、HyperledgerによってBaiduは検索におけるローカライズ機能をアップデートできると信じていると言った。

その他、Dinrong、JD、360、Huawei、NetEase、Renren、Xiaomiなど国内の主要インターネット企業が相次いで、ブロックチェーンプロジェクトの開発や投資を進めている。この新興技術競争の場を占領しようとしている。

ブロックチェーン分野の強力な競争相手にはスタートアップも存在する。デジタル資産の交換(既に停止済み)、ブロックチェーンの総合サービス、ブロックチェーンの基盤技術開発、インフラストラクチャプラットフォーム、エンタープライズ向けサービスプラットフォーム、医療データサービスプロバイダ、金融サービスプラットフォーム、偽物公証プラットフォームなどだ。

インターネット大企業がブロックチェーン業界に参入したことにより、新たなブロックチェーンプロジェクトはますます資本の注目を浴びている。 2017年2月以来、中国には177の資金調達済みブロックチェーンプロジェクトがあり、調達額は143億元(約2431億円)にまで上った。そのうち、エンジェルとシードからの投資は50%を超えており、ここからもブロックチェーン業界全体がまだ初期段階にあることがわかるだろう。

ブロックチェーン企業の数が増えるにつれて、ブロックチェーン業界の提携、フォーラム、研究組織が引き続き設立されている。

また中国で比較的影響力のある連盟として、中関村ブロックチェーン産業連合(Z-Park Blockchain Industry Alliance)、China Ledger連合(China Ledger Alliance)、金連合(Financial Blockchain Shenzhen Consortium)、中国ブロックチェーン研究連盟(China’s Blockchain Research Alliance)、微連合(Decentralized Autonomous Coalition Asia)などが存在する。

多数のブロックチェーンのスタートアップ、インターネット企業、テクノロジー企業、そして有名な大学がブロックチェーン産業連合に加盟し、中国のブロックチェーンエコシステムの発展に貢献することに力をいれているのだ。 ブロックチェーン連盟は、業界内外のエリートを集め、定期的に技術サポートや、テックイベント、ブロックチェーンおよび分散元帳に関する定期情報会議を開催している。

ブロックチェーンのイノベーションはとどまることを知らない。 2018年、中国のブロックチェーン産業はどうなるでしょう? Gatecoinのチームは期待を寄せています。

Originally published at blog.gatecoin.com on January 12, 2018.

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