戦後空間シンポジウム06|都心・農地・経済 ── 土地にみる戦後空間の果て

山田良治|山下一仁|内藤廣|饗場伸 ── 20220114 松田法子・日埜直彦

戦後空間WG
戦後空間
May 25, 2022

--

主旨:
戦後空間シンポジウムシリーズを締め括る第6回は、特に土地を通じて戦後空間を問いたい。
ここで特に捉えられるべき土地空間とは、都心、都市の縁辺部、農地である。これらの間を移動する労働・土地・資本を経済と共に捕捉することで、戦後空間が行き着いた地点をあぶり出すと共に、そのゆくえについて討議する。

日本における都市の圧倒的拡張は、世界最大規模の経済成長を通じて戦後に起こった。自由資本主義のもとで国内外の経済競争に強く引きつけられた土地では、加速度的に再開発が行われてきた。その前線では、都市再生特別措置法(2002)に基づく民間の都市再生事業も展開されている。

宅地の拡張過程においては、都市近郊農家の土地が莫大な資産となった。都市の縁辺部は、主に都市労働者の住宅と、その生活需要を当て込む商業空間からなる。土地区画整理と交通インフラを梃子に巨大化したこのペリフェリーの底地は、GHQの農地改革(1947)によって地主化した農家から供給された。都市計画法(1968)は市街化区域と市街化調整区域を定めたが、市街地の拡張を図る行政のもと、農地の転用は鉄道駅やロードサイドを核に進行してきた。都市労働で得られた都市勤務者の賃金は土地の対価として農家にわたり、使用期間の短い戸建て住宅に流れ込んだ。市街化区域と市街化調整区域のボーダーゾーンは、市街地と農地がパッチ状に入り組む奇妙な計画的縫合地をなす。

市街地の先には、粗放的に建物が立地する生産地、農地がひろがる。戦前期農水官僚の悲願をも果たす農地改革は、農地法(1952)によって土地空間をドメスティックに温存してきた。農地に適用される固定資産税は低い。大面積の低層・低密度利用地の持続において、都市圏とはまったく異なる土地空間の機構と時制がそこにある。

都心の垂直的高度利用と都市圏の水平的拡大の2点は、高度成長期以降現在までの日本の都市空間を特徴付ける。しかし、資産の蓄積を最大化してきたようにみえる戦後の都心・都市圏に、果たしてそのまま将来の価値も約束されるのだろうか? そのことについて、都心と農地という二様の土地空間を突き合わせて検証する。

都心−農地、市民−労働・土地・資本を対とするダイアグラムを、戦後空間の伸張と揺らぎをはかる仮の構図とし、戦後のはじまりから現在までを土地を通じて考える。これによって、戦後空間の質、意味、ゆくえを問いたい。

--

--

戦後空間WG
戦後空間

日本建築学会歴史意匠委員会傘下のWG(2017年1月発足)です。