マーケティングは顧客を「コントロール」することじゃない


マーケティング 心理」で検索すると、マーケティングに心理学を活用して顧客の行動をコントロールできる、というような内容でたくさんの記事が見つかります。

もちろん、心理学を悪用すれば、無意識に相手の行動を変えることは可能です。バンドワゴン効果やバーナム効果、認知的不協和を利用して都合のいい情報を信じこませたり、アンカリング効果や返報性の原理を使ってこちらの要望を飲んでもらうことも可能です。

しかし、私はそういった手法の全てに対して否定的です。

その理由はとても単純です。心理学を悪用した顧客のコントロールは、長期的にみると相手にとっても自分にとっても不利益である場合が少なくない。心理学と現代のマーケティングは相性が良くない部分があるのです。

その理由は簡単。

人間の心理は短期的な目的達成に最適化されている

短期的な目的とは、「生存したい」「モテたい」という本能的な欲求のことを指しています。あらゆる心理学的な傾向は、この目的達成に向かっています。

生態学的な考え方でいえば人間も動物なわけです。理性以外の部分については大半が動物的で反射的、さらに根源的であるがゆえに理性では抑えがたいものです。

例えば先にあげたバンドワゴン効果は、「周囲の行動に合わせて自分も行動したい」という心理傾向のことで、こういった行動特性の動物が生存確率が高いのは想像しやすいと思います。群れから離れると捕食される可能性が高くなりますから。だからバンドワゴン効果は強力で、本能的に他者に追従してしまうし、理性で抑えこむのは容易ではありません。

後から冷静に考えて、「なんで買ったんだろう?」となることがあるのは、こういった心理の短期的特性に原因があります。

しかし、マーケティングは長期化している

人間心理に長期的な計画はありません。その瞬間の「生存したい」「モテたい」という欲求がもっとも実現しやすい方向に人間を流していきます。

だから、マーケティングが短期的で単発のものであれば、心理学を使って顧客をコントロールし、売上を伸ばせば良かったと思います。実際、ちょっと前までそういうマーケティングがよしとされていたのも事実です。

しかし、LTV(Life Time Value)というマーケティングの概念があるように、マーケティングは長期化しています。より高い欲求にシフトしたと言っても良い。いかに顧客と長期にわたって良好な関係性を築くことができるのか、マーケティングの主眼はそういった長期的なものに変わってきました。

短期的な心理傾向と長期的なマーケティング、相性が悪いのは当然です。買った瞬間は納得していても、あとになって後悔させてしまっては、その顧客はブランドや企業に対してネガティブな印象を抱くことになります。それでは現代の長期的マーケティングとしては失敗です。

コントロールではなく「おもいやり」

全ての心理学がマーケティングに不向きというわけではありません。

例えば、選択肢が多すぎると選べないという「選択回避」について知っていれば、事前に相手の好みを把握して選択肢を厳選する、という考え方ができると思います。

これはコントロールではなく「おもいやり」「おもてなし」の心に通じます。相手をコントロールするのではありません。こういった心理学の活用は、長期的にみても顧客との関係性を良くします。

安易に飛びつかずに、短期なのか長期なのか、マーケティングの目的に応じて心理学を使い分けるのが良いと思います。


facebookページ / Twitter でのフォローをお願いします。

↓お気に入り・シェアしていただけると嬉しいです

Show your support

Clapping shows how much you appreciated Yusuke Kuroda(黒田 悠介)’s story.