北鎌倉での Think Week を終えて ~読書と熟考の1週間~
北鎌倉でのThink Weekが終わりました。1週間ただ本を読むだけの、濃密で豊かな時間でした。
やり終えた今は、頭が冴えて、それでいて穏やかな気持ち。好奇心と自信にあふれている感覚。本を読んだというよりは、本を対象として瞑想を続けていたような一週間。
能動的に情報を吸収することで、なんとなく情報収集していた日常では味わえなかった満足感や自己効力感があります。本を読みながら、自分にも注意を向け続けました。本を壁打ち相手にすることで、自己理解を深められたように思います。
本に書かれていた言葉よりも、本を通して浮かび上がってきた言葉に、多くの学びがありました。
毎日場所と読む本を変えたので、飽きることはありませんでした。
本を読みに行った場所は、コワーキングスペースのThink Space、稲村ヶ崎の海岸、古民家のミライエ、円覚寺の境内、逗子市図書館、それといくつかの喫茶店やカフェ。
読んだ本は様々なジャンルから選んだり推してもらったりした18冊。本を読んでは歩き、また本を読む。飽きたら別の本を読んだり、別の場所に移動したりする。
読んだ本はこの18冊。
法のデザイン、人生の勝算、弱いロボット、やりたいことがある人は未来食堂に来てください、10年後の働き方、幸福の「資本」論、能力の成長、GAMIFY、決算を読む習慣、絶対に達成する技術、イノベーション・オブ・ライフ、マネジメント、申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。、反脆弱性(上)、反脆弱性(下)、「良い質問」をする技術、サーチ・インサイド・ユアセルフ、問題解決のジレンマ
外界との連絡を絶ち、オンラインで発信することも受信することもありませんでした(妻との数回のLINE以外は)。
情報を絞ることでノイズが消え、確かな情報だけに触れている感覚がありました。情報量が増えれば増えるだけ、ノイズも多くなる。当たり前のことですが、毎日2時間のインプットを6年間続けてきたので忘れていました。今思えば惰性的だったかもしれない。
なんというか、情報を追いかけていたつもりが、追われていたのかもしれません。これを機に、アタマが特に冴えている午前中はノイジーなFacebookを見ないなど、情報のインプットを見直し、時間の使い方や習慣も変えることにしました。
今回のThink Weekはアウトプットを目的とした取り組みではありませんでしたが、気づきのなかにはアクションに繋がるものも多く、結果的に行動リストが手元に残りました。
それ以外にも、本に直接関係のない間接的な気づきについて独立したメモを残していたので、ここで公開しておきます。「こんなこと考えてるんだなあ」くらいにご笑覧ください。
Think Week MEMO
1.やめて初めて分かること。
6年間ほぼ毎日情報収集をしてきたが、1週間やめたところで特に焦りはなかった。情報収集が目的化していたのかもしれない。これはやめてみなければ分からないことだった。こんなに頭が冴えている感覚は初めてかもしれない。あふれる情報に過剰反応していたのだろう。
2.本質を理解すれば思考の可動域が増える。
イスを「太ももの裏からお尻にかけて体重を分散させる装置」と理解すれば、その本質以外の要素を動かすことができる。名前を外して考える。
3.自律は他者を参照する。
自らを律すると書く「自律」だが、実際に自律的に動いている人は自分だけの観点から意志決定するのではない。むしろ、組織の文化や積み重ねてきた信念に大きく影響を受ける。他者や過去の自分(これも広義の他者だ)を勘案した自律でなければ、それはきっと傍若無人だ。まさに傍に人無きが若し。
4.マッサージ師のように。
ディスカッションパートナーとして契約期間を決めない感じは、なんとなくマッサージ師に似てる。思考のマッサージ師。
5.問いを拡大する。
範囲を広め、相手の想像を超える答えに至ることが重要。日常から生まれた問いをコンセプトに引き上げる。
6.余白がクリエイティビティを生む。
弱さや不完全さという余白がクリエイティビティやコラボレーションを生む。強みは伸ばし、弱みは助けてもらう。強がらない。
7.部分と全体を交互に見る。
全体最適のなかで部分の働きを意識し、部分最適のなかで全体の関係性を意識する。両者を切り離さずに往復する動的な過程で思考するのが良い。
8.円覚寺はSuicaで参拝料を払える。
お賽銭もSuicaに対応したらいいと思う。
9.本を非共時的対話に使う。
本の内容をそのまま受け取るのではなくて、自分ごとに引きつけて読んでいく。すると、あたかも著者がわたしのメンターになってくれたかのように、思考が深まっていく。読むのは遅くなるが。
10.批評と賞賛とアドバイスは参考程度に受け取る。
一緒にプロジェクトをやったことがある人以外の批評や賞賛は気にしない。表面的な場合が多い。アドバイスも、参考にはするが、あくまで「〇〇さんの環世界で成り立つ」という前提で聞く。
11.他者の目が自分の目を曇らせる。
「インスタ映え」を気にするなど、他者からの評価を得る志向は、体験の本質を曇らせ、表面に意識を集中させてしまう。五感を使う体験から、視覚以外を奪い去る。
13.対話の相補性。
対話が相補的なものになり得るのは、執着がないとき。何かに執着しているとき、対話は自分の正しさの確認作業にしかならない。ともにまだ見ぬ答えを探すときにこそ相補的な対話は成り立つ。
14.本からの学びは忘れた後に残るもの。
本に書いてある言葉を忘れてなお覚えていることがある。それこそが本からの学び。本に書いてあることを覚えることが学びではない。
15.普遍とトレンドを混ぜ合わせる。
普遍だけでは新しい価値は生み出せない。トレンドだけでは後追いしかできかい。トレンドと普遍を組み合わせることに意味がある。
16.抽象で世を見て、具体で人に語る。
私たちが普段触れるのは具体。そこから抽象化して考えを深めていくのだけど、伝えるときには、ときに共感してほしいときには、具体で語る。心の中の言葉と人に向ける言葉は調整が必要になることが多い。
17.失われた本来性への回帰。
人間は元来こうあるべきなのだ、というときの本来性が実在しないことが多い。手の届かない理想郷は人を疎外し、今ここから意識を遠ざける。本来性よりも個の理想について語りたい。これは個性的であれ、との主張とは違う。個性的でなくても人は幸せである。
18.風の流れを読む。
蚊取り線香の煙を眺めていると、風の動きが見える。観察は重要だが、観察しやすくする工夫も重要。複雑なものを複雑なまま理解できると、得られるものが多い。
19.測定困難なものこそ重要。
年収や社内でのポジションなど、測定可能な地位財に目を取られやすいが、実際に幸福度に寄与するのは測定困難な非地位財。測定された数値を他者と比較することは、幸福から遠ざかる行為。
20.「目に見える自己実現」の罠。
ダイエットは分かりやすく自己実現ができる。RPGでレベル上げをするが如く、ダイエットで体重を減らしていく。開脚ブームというのがあったらしいけど、それも、目に見える自己実現のひとつ。数値化された自己実現は達成が比較的容易。では、数値化されない自己実現とは?こっちは人それぞれかなあ。
21.共通点と相違点。
共通点はほんの少しでいい。その共通点を軸にすれば、相違点がある人と共に動くことができる。ダイバーシティーを高めることはイノベーションに必要だが、発散が大きすぎてはいけない。
22.系の範囲によって力学が変わる。
あたかも古典力学と量子論のように、対象とする事象の範囲によって力学が変わる。細胞、人間、人間、組織、国家、世界、宇宙のそれぞれのスケールで見れば、あるところでネガティヴなものもより上位ではポジティブであることがある。
23.ストレスとの付き合い方。
弱く長く続くストレスに、人は耐えられない。満員電車通勤のように。しかし、だからといってストレスを完全に抑え込むと、脆くなる。不定期の強いストレスに身を晒すのが良いのだろうか。
24.ニュースの多くはノイズ。
ニュースの過剰摂取は避けたほうがいい。速報性が高いほどノイズも増え、過学習によって振り回されることになる。余裕があれば理性的に分析できるが、多すぎると感情的な処理をしてしまう。世界を理解したつもりになるのも危うい。情報とノイズをふるいにかける仕掛けが必要か。
25.思考と課題の複雑性レベル。
思考のレベルは、課題の複雑性よりも高いレベルでなくてはならない。横から見るのではなく、上から見る。他社との協力によって高いレベルから課題に取り組むことができる。プレイヤーの視点からは経営判断はできない。
26.フリーランスの再現性。
再現性がなければクライアントはお金を払おうとは思えない。クリエイターの場合はポートフォリオが再現性を保証し、それ以外のプロデューサータイプのフリーランスにとっては抽象度の高い一般化された「持論」を伝えるのがいい。環境依存性や課題依存性が低い持論は、適用可能性が高い。
27.本の内容を知識にするために。
本の内容をそのままメモしても身につかない。一旦咀嚼し、自分の言葉で置き換える。自分がこの本の解説を書くとしたらどんな文章になるか、というイメージでメモを残すと知識として活用しやすい形で脳に定着する。
28.わたしは言語映像タイプである。
言葉で情報を取り入れるが、実際に思考として使う場合には映像として捉える特性があり、意識的に活用できるようになってきた。頭の中でソロバンを弾くような感覚で、頭の中で枠組みを設計し、その枠の中でディスカッションしたり、枠の外に出るための質問をしたりできる。
29.「測定」する2つの目的。
測定には2つの目的がある。1つは、「過去」を評価するため。もう一つは「未来」を支援するため。学校のテストは多くが前者だが、できることなら後者のテストが増えて、測定結果に応じた学習プログラムがダイナミックに設計されるようになると教育は変わる。
30.経験を概念化して積み重ねる。
経験を自分なりの言葉にしてみると、その経験は概念化し、操作可能になる。それによって新たな法則を生み出すこともできる。この法則をその後の経験に照らし合わせることで、経験を流すことなく、糧にできる。繰り返すのではなく、積み重ねることができるようになる。
31.目的地は決めなくてもいい。
将来の計画について聞かれることがあるが、決まって「計画はない」と答えている(理想はある)。「計画」しても予定通りになったことがないので、それよりも状況に「適応」していくほうがいい。大事なのは適応のための選択肢がどのくらいあるかだ。
32.ファットテールとの付き合い方。
ひとつは、ファットテールを対象に取引をすること。ファットテールは平均の変動に無関係に格差によって生まれる。変動性の大きい世の中では格差が縮小する方向に動くことはないし、あったとしても完全に平均になることはない。もうひとつは、ファットテールに対する自分の反脆弱性を高めておくこと。
33.平均よりも分散を高めよう。
平均値を高めるには徹底が必要だが、分散を高めるには奔放に任せればいい。大量の壺を作れば、1つか2つはいいものがある。もし平均を高めたいというのなら、よくない壺を全て割ってしまえばいいのだ。
33.まとめて本を読むときに限って。
持っていきたい本がハードカバー。
34.1日5冊以上読むと内容の「衝突」が起きる。
たくさんの本を1日の間に読むと、論理やフレームが衝突を起こし、すんなり入ってこない。睡眠によって情報の整理が完了すると、何事もなかったかのように入ってくるし、前日読んだ本は体系化されて思考の受け皿のように働く。睡眠すごい。
35.表面的な比喩の誤謬。
AはBのようなものだ。という比喩は、初学者の表面的な理解には役立つ。しかし、多くの比喩は構造の類似性が低く、分析や深い思考には役立たない。役立たないこと以上に、それを役立つと勘違いして論理に組み込んだりしていることが危うい。起業を山登りに例えるのはいいけど、ピボットして別の山を目指すとき、わざわざ下山する必要はない。もちろん、比喩はそもそも捨象で成り立つので、そういうものと言われたらそうなのだが。
36.似て非なるもの。
似て非なるものは、要素が似ていて、関係性が異なるものが多い。静止した状態では似ているが、ダイナミクスが異なる。
37.飽きずに続けるには。
大きな目的を意識する、やりがいのある難易度に調整する。変動性を紛れ込ませる。他者を巻き込む。トリガーを設定する。気合を入れない。
38.クライアントは課題領域の専門家。
解決すべき課題の領域についてはクライアントのほうが専門性が高い。その点について謙虚になりながら、ディスカッションという一点においてサポートできる自負を持って臨む。ときには門外漢の的外れな言葉が誤配的に役立つこともある。
39.興味の方向性は「上層」と「外縁」。
個別具体よりも総合抽象。部分より全体。分離よりも融合。計画よりも創発。凡人よりも奇人。均質よりも多様。数字よりもメカニズム。ノードよりもエッジ。名前があるものよりもまだないもの。レギュラーよりもイレギュラー。「上層」の「外縁」から実践という地平に自らを投げ入れ、その位置エネルギーを発散させたい。
40.達成同期の強い人。
達成感を求める人は、極論、なんでもいいから達成したい。自然と短期的に達成できることに時間という貴重な資源を使ってしまう。達成に時間がかかるものは、達成感をすぐには与えてくれないから。優先順位を自分でつけて、その順にカレンダーを埋めていきたい。
41.自由ではなく自律でいたい。
どちらも似た言葉だ。ただ、自由には意志がない。何をしてもいい、という状態を理想とする人もいるが、私にとっては理想とするあり方の一側面に過ぎない。私は、自分の人生の舵取りを握る自律を好む。たとえ不自由であっても、自律できるならその方がいい。
42.たったひとつの能力。
あらゆる能力を身についけている必要はない。完璧である必要はないし、その不完全さがチームを形成する。無能ではコラボレーションに参加できないから、たったひとつの能力を身につけることが必要。
43.フリーランスの反脆弱性。
フリーランスは変動性に対して「脆弱」ではない。それに、変動性に動じないという「頑健」でもない。むしろ変動性によって生まれた新しい仕事や働き方の価値観によってプラスの影響を受ける「反脆弱」である。何が起きても大丈夫だし、むしろブラックスワンが起こることを期待してもいる。ただし、タレブ氏の「ダウンサイドは有限で既知、アップサイドは無限で未知」という定義において後半は成り立たない。このアップサイドをどれだけ高めておけるかを考えたい。どこまでフリーランスの反脆弱性を高められるか、挑戦してみる。
44.ディスカッションパートナーの精神論。
まずは好奇心と共感、無条件の思いやり。徐々に信頼関係を築き、貢献の意志を高めていく。ディスカッションの最中は特に、その場に集中、コミットし、想像力を働かせる。互いの動機付けを擦り合わせ、理想の実現に目を向ける。「私」と「あなた」ではなく「私たち」になっていく。
45.知識と行動。
知識がなくても行動に移すことができる。行動は必ずしも知識を必要としない。むしろ、行動が最も知的であり、知識の代わりをすることも多いものだ。直感と行動だけでも、目的は達成される。
46.未知の未知。
知らないことを知らない、という状況があり得る。むしろ、宇宙全体で言えば「未知の未知」ばかりだろう。しかし私たちは「既知」や「既知の未知」ばかりに目が行き、問題解決はその範囲に収まってしまう。「既知の未知」を「既知」に変えていくだけでなく「未知の未知」を「既知の未知」に変えていく必要がある。そのためには、「未知の未知」があるという無知の知が欠かせない。
47.白か黒か。
二者択一ではなく「グレーの度合いはどのくらいかな」という視点で眺めていくといい。線を引かずに保留する。常識と非常識、という解釈を取り下げ、事実に着目する。どうしても線を引かないといけなくなったときにだけ稀に、線を引けばいい。
Think Week MEMOは以上です。
職場やクライアント、妻、その他各所にご迷惑おかけしました。まだ返事ができていない連絡も多数あるので恐縮です。
でも、とても満足感があるので、これは半年おきに実施していくことにしました。次回は2018年1月中旬です。
次はどこでやろうかな!
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