盛者必衰

sakuraneko
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3 min readJul 18, 2020

いつから宝物と貴重品が別々のモノになったのだろう

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小学生の頃, 高級なお茶が入っていた「木箱」を母に貰った.

漫画で見るような宝箱の形をしたそれは, 幼い私の心を強く惹きつけた.

当時覚えたてのアルファベットで, 「TAKARABAKO」としっかりマジックで記した宝箱の中には, 綺麗な石や, オルゴール, 酸化して不思議な色になったネジ, お土産の光るボールを入れて大事に机の下に保管していた.

学校の防災訓練の時, 先生には「荷物は全て置いて真っ先に逃げましょう!」と教えを受けたが,「あの宝箱だけは絶対に手放すもんか」と心に誓ったのが懐かしい.

つい先日, 大雨が日本各地を襲った. 私の住む九州もかなりの被害を受け, 災害の恐ろしさと, 災害に対する防衛策の必要性を今一度思い出させられた.

そこで母と, 万が一の時に持ち出せる「防災用カバン」を用意しようという話になった.

兼ねてから必要性を考えていた為, すぐに荷物を用意しまとめることができたが, 一つここで問題が生じる.

実は私も母も「念のため」という想いが強く, 3泊4日の旅行でも行くのか?と聞きたくなるほどの荷物量になってしまい, そこからリュック一つ分に収めるまでかなりの苦労を強いられたのだ.

何が必要で, 持っていくべきなのか.

ホットコーヒーがアイスコーヒーへと変貌する頃, 持ち物リストを作ることができた.

・少々の現金(勿論小銭と紙幣に分けて)

・通帳

・旅行用トイレ

・水

・乾パン

・圧縮タオル

……etc

勿論携帯や財布は欠かせない. こういった貴重品はすぐに持っていけるように, 寝るときは近くに置いておこう.という話になった.

そこで私はふとあの木箱を思い出す.

綺麗な石が, 好きだった音楽を奏でるオルゴールが, iPhoneや財布, クレジットカードに変わってしまったような, 自分の中の「変化」を確かに感じた.

あの時大事だった物達が, 自分の中で大事では無くなってしまったのだろうかと少し悲しい気持ちにもなった.

勿論, 財布と石を比べた時, 生きるために必要なものは前者だ. それでも何か大事な物を失ったような, 少しの喪失感を感じずにはいられなかったのだ.

将来, 私はどんな働き方をして, どんな生き方をするのだろう.

毎日, 本やネットの情報, 沢山の方々との出会い, 様々な影響を受け, 私の中の価値観は1日1日変化している.

大事な人やモノが増え, もっと変わっていくと思う.

けれど, あの頃の宝物への想いだけは,

「絶対に手放すもんか」

心の中でそう誓うことにした.

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