デザイナーがビジネスについて知っておくべき7つのこと

Hong Du
日本語 de UX
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31 min readApr 13, 2021
この記事は7 Things Every Designer Should Know About Business より翻訳したものです。
配信元d.MBAと著者Alen Faljicの許諾のもと配信しています。
翻訳担当:Hong・監修:Qmo Lee

多くの経験のあるデザイナーは最近、デザイナーがビジネスを学ぶために提唱し始めました。ビジネス知識を備えたデザイナーは、ユーザーや企業に利益をもたらすより良い意思決定を行うことができます。

「ビジネスは、デザイナーが最も不足しているの分野です。」

ー Google Venturesのデザインパートナー:ケイト・アロノヴィッツ、グーグルベンチャーズ(Kate Aronowitz)

「設計目標は常にビジネス目標と一致する必要があります」

ー Uber のデザインディレクター:ディディエ・ヒルホルスト(Didier Hilhorst)

「私たちはアーティストではない事実を受け入れ、ビジネスの一部であることを受け入れる時がくる。ベストを尽くす」

ーUXデザインコレクティブ

「ユーザーを理解するだけでは十分ではありません。あなたはビジネスを理解する必要があります」

ーAJ&Smartの創設者:ジョナサン・コートニー(Jonathan Courtney)

「デザイナーは、ビジネス志向になるか、無関係になります」

ーCandid Co.の最高デザイン責任者:ボビー・ゴシャル(Bobby Ghoshal)

デザイナーがビジネスを学ぶべき理由を説明するリソースはたくさんありますが、デザイナーが学ぶべきことをカバーしていません。このガイドは、このギャップを埋めるようのものです。私の経験に基づいて、IDEOでビジネスデザイナーとして働き、デザイナーのためのビジネスコースであるd.MBAを作成しました。

私はデザイナーがユーザー中心にするのをやめるよう主張していないことを指摘したいと思います。ユーザーは私たちの最優先すべきことです。

しかしながら、ビジネスを理解し、ビジネス言語に堪能になることで、デザイナー以外の人をユーザー中心のアイデアに納得させることが簡単になります。

このガイドは、数十冊のビジネスブック、フレームワーク、概念を統合したものです。

次の 7 つのトピックを取り上げ、ビジネスの 3 つの層を理解するのに役立ちます。

  • 業界レベル(章#1と#2)
  • 企業レベル(章#3と#4)
  • プロダクトレベル(章#5、#6、#7)

目次:

1. 業界分析:業界の課題と制限を特定し再定義する

2. 競合他社の分析:競合他社の動きを予測し、競合他社を出し抜く

3. 事業戦略:競合に左右されないプロダクトを作る

4. ビジネスモデル:あなたのプロダクトでどうやってお金を稼ぐかを考える

5. 数字を使ったプロトタイピング:アイデアの実行性を素早く見積もる

6. デザイン指標:ユーザーに与えた価値を測定する

7. ビジネス指標:経営層の言葉に堪能になって、彼らを納得させる

次は何だ?

1. 業界分析:業界の課題と制限を特定し再定義する

「競合他社を知り、自分がいる業界を知る。」

ーGoogle Venturesのデザインパートナー:ケイト・アロノヴィッツ(Kate Aronowitz)

業界分析は単なる退屈なビジネス課題ではありません。そのおかげで、ウォービーパーカーの創設者が10億ドル以上の価値がある会社を作れました。彼らの分析にとって、アイウェア業界が単一のプレーヤー、ルクソティカによって支配されて、処方眼鏡の価格を高く保ったことを示しました。一本を生産するにはわずか10〜20ドルしかかからないにもかかわらず、約300ドルの価格で販売されていました。

この分析を通じて、創業者は処方メガネを消費者に直接販売し(仲介者を迂回)、社内で設計し(外部デザイナーを雇うよりも安い)、少数のモデルを制限することで、処方メガネをはるかに安く売れる方法を見つけました。今日、同社は1,600人以上の従業員、80以上の店舗を持つアイウェア業界の主要プレーヤーであり、17.5億ドルで評価されています。

業界分析の最適なフレームワークは、ポーターのファイブフォース(Five Forces)です。これは、業界の魅力に影響を与える5つの競争力を評価します。基本的な考え方は、プロダクトや会社は直接の競合他社だけでなく、顧客、サプライヤー、代替品、新規参入者を含むエコシステムの全体と競合しているということです。たとえば、競合他社が非常に少ないかもしれませんが、サプライヤーがより強い交渉力を持って、利益のほとんどを取り込むので、利益を上げることはできません。

ポーターのファイブフォースの概要は次のとおりです。

  • 新規参入者からの脅威:業界に参入するのはどのくらい難しいでしょうか?
  • バイヤーの交渉力:バイヤーはどのくらい簡単に私たちの価格を下げることができるのですか?彼らはどのくらいうまく交渉できますか?
  • 代替品からの脅威:他にどのように顧客は同じニーズを満たすことができますか?
  • サプライヤーの交渉力:サプライヤーはいかに簡単に価格を押し上げることができるのか?彼らはどのくらいうまく交渉できますか?

既存の競合他社間のライバル関係

業界の競合他社の数はいくつですか?彼らはどのくらい強いですか?

5つのフォースのそれぞれを見て、彼らに低、中、高の得点を与えることによって、業界を分析することができます。

例えば、銀行業界における新規参入者の脅威は低く、銀行の免許を取得し、公式の金融機関になるのは比較的困難です。一方、新規参入者の脅威は、モバイルアプリゲームでは比較的高いです。アプリストアのゲームの数を見ればわかります。

こういうふうなインサイトは非常に重要です。新規参入者の脅威が高く、プロダクトが簡単にコピーできることがわかっている場合は、デザインを重視すべきです。プロダクトを差別化するために何をすべきか?私たちが提供できるユニークな機能とは何ですか?パートナーシップを探すべきか?

常にこの業界に既に存在する企業の視点から分析していることに注意すべきです。この業界がどれほど魅力的であるかを把握したいと考えています。

2. 競合他社の分析:競合他社の動きを予測し、競合他社を出し抜く

「課題をよく理解することは、競争を理解し、この問題が存在する環境を理解することを意味します」

ーFacebookのVPプロダクトデザイン:ジュリー・ジュオ

2007年1月、AppleはiPhoneを発表し、最終的に業界の巨人であるノキアを超えました。どうしてそうなったの?当時、Appleは携帯電話業界で全く新しいプレーヤーでしたが、ノキアはすでに70億ユーロの収益を上げていた当時の大手でした。

iPhoneが発表されたとき、ノキアの取締役会はそれを無視することに決めました。言い表せよ、iPhoneはノキアN95より技術的に劣っていました。しかしながら、彼らはiPhoneが携帯の全く新しいコンセプト(コンピュータは第一、携帯は第二)で提供されていることを見落としました。Appleは携帯電話のバリュー・プロポジションを再考し、別のビジネスモデル(アプリストア)にしました。ノキアは、非常に狭い技術の視点で、iPhoneの分析を行っています。この誤りは、最終的にノキアのリーダーシップを押しつぶすことに至りました。

競合他社の戦略、ビジネスモデル、将来の計画を理解することは、より良いプロダクトと体験をデザインするのに役立ちます。競合他社がイノベーションにどのように対応するか、さらに、より良い差別化(ユーザーに固有の価値を生み出す)方法を予測できます。

競合企業分析の最初のステップは、競合他社を特定することです。ないかと思っても、いくつかがありそうです。町で唯一のイタリアンレストランでさえ、競争がたくさんあります。他にも違うレストランがあり、スーパーマーケット、パン屋、家庭料理などがあります。競合他社を見つけるためには、考え方を広げる必要があります。

一般的に、競合他社は直接的および間接的に分かれます。直接競合企業とは、同じプロダクト(またはサービス)を提供する企業で、間接競合企業は同じ問題を解決する別のプロダクトを提供する企業です。

例えば、Uberの直接の競合はタクシー会社とLyftです。間接の競合は自転車の共有サービス、公共交通機関、カーシェアリングサービスと徒歩です。

4~10個ぐらい直接および間接の競合をリストアップできたら、データの収集を開始します。一般に、データ収集は次の3つのバケットに分かれます。

  • ビジネス関連のデータ(収益、市場シェアなど)
  • プロダクト関連のデータ(プロダクトのポートフォリオ、機能など)
  • 顧客関連のデータ(ターゲットグループ、レビューなど)

どのデータが面白くて役に立つか分からないので、まずは3つのバケットのすべてを広く見なければなりません。分析を始めるために15データポイントのある「競合他社共感チェックリスト」をダウンロードできます。私は常にこれらの15ポイントから始めますが、最初の段階で見つけたものに応じて、リサーチを他のデータポイントにも拡張します。

ここでは、競合他社のデータを検索するために利用できるいくつかのソースとなります。

  • 競合他社のウェブサイト
  • 競合他社の広告(Facebook、Instagram、雑誌、Google広告など)
  • 競合他社のウィキペディアのページ
  • Google News(競合他社に関する最近のニュースを見つける)
  • Statista
  • 仕事仲間・クライアント
  • 年次報告書(上場企業のみ)
  • Crunchbase
  • Amazon、Facebook、Google、iTunes のレビュー

データ収集には、スプレッドシートを使用することをお勧めします。これは、大量のデータを収集する最も柔軟で包括的な方法です。それはプロセスを構成し、総合をスピードアップするのに役立ちます。

関連のデータを見つけたら、次は実践的なインサイトを引き出します。インサイトを見つけるための最良のプロセスは、スキミングと色分けです。スプレッドシートで収集したデータを読み解き、パターンを探してみてください。特定のデータが繋いでいることに気付いたら、その関連性を表すため、色分けを始めます。この総合プロセスは、総合ユーザーリサーチに似ています。異なる種類のデータを使用するだけです。

3. 事業戦略:競合に左右されないプロダクトを作る

「戦略の本質は、やらないことを選ぶことです」

ーマイケル・ポーター

1995年、Amazonのオンラインストアが初めて公開されました。当時は単なるオンライン書店に過ぎなかった。しかしながら、当時でもジェフ・ベゾスは「すべてのものを扱う店」を作るというビジョンを持っていた。ただ、彼はオンラインストアの利点が最も明らかな場所から始めなければならないことを理解しました。

20以上の商品カテゴリーを慎重に検討した結果、彼は書籍を選びました。戦略的な観点から見ても、これは大きな決断でした。世の中で300万冊以上の本があり、伝統的な書店の限られたスペースには数千しか陳列できません。一方、オンラインストアでは、300万冊の本をすべて揃えることができます。オンラインストアでの商品ページの追加作成には、ほとんど費用はかかりません。そこで、戦略的に、ジェフはオンラインストアの強みを活かし、それを中心に全体の体験を最適化しました。今日では、Amazonは「なんでも屋」ですが、何をしてはいけないのかを慎重に判断したことがすべての始まりでした。

一般的に、事業戦略は、企業がどのように競合に打ち勝とうとするかを示すものです。

理想的な世界では、あらゆるビジネス決定は経営戦略と一直線に並んでいる。デザインの決定でさえも。したがって、自社の戦略の基本を理解することは非常に重要です。

しかし、戦略はビジネスにおいて最も誤解されている概念の一つです。「当社の戦略は2020年に収益を20%増加させることである」 似たような発言をいつも耳にしますが、それらは戦略を誤解した典型的な例です。戦略とは何であり、何ではないのかを簡単に取り上げてみましょう。

戦略は下のようなことではない

  • 目標(目標はWhyを語るだけで、戦略はHowを示すものでもある)
  • デザイン思考やシックスシグマのようなベストプラクティスを使用する(競合他社でも実施可能なので、トレードオフの意思決定ではない)
  • 計画に過ぎない(戦略は競争上の有利に繋がる)

戦略とは

  • すべきことを選び、すべきでないことを選ぶこと
  • 一連の折り合って決断できること
  • 競争の優位性の追求すること
  • 差別化求めること(単なるよりいいものだけではない)
  • 企業のリソースをもっとも重要な課題へフォーカスすること

戦略の最終的な目的は、競争上の優位性を獲得することであり、それがより良い業績につながる。例えばサウスウエスト航空は、利益率の低さや倒産が多いことで知られる航空業界で、45年連続で黒字を出しています。すべては優れた事業戦略によるものです。

事業戦略の最も優れた分類の一つを、マイケル・ポーターが主張しました。要するに、どのビジネスとも競争できるという考え方です。

  1. コストリーダーシップ
  2. 差別化
  3. フォーカス
3つの競争戦略

低価格を提供することで競合他社に勝とうとする企業は、コストリーダーシップ戦略を追求している(Aldi、Walmart、IKEA、Southwest Airlines、McDonald’sなど)。

反対に、ユニークであることで勝とうとする企業もあります。これらの企業は、特有を持ち、より高い価格を請求することができます(Apple、Whole Foods Market、BMW、Qatar Airways、Four Seasons Hotelsなど)。

第三の戦略は、業界内の特定の顧客セグメントに焦点を当てています。業界全体の商品を作るのではなく、ある企業が特定の顧客セグメントを選択し、すべての活動に優先順位をつけ、そのカテゴリーで一番になることを目指します(例:Porsche、Pepsi、LinkedInなど)。

これら3つの事業戦略は、既存の市場でどのように競争するかを示します。一方、ブルーオーシャン戦略は、コストリーダーシップと差別化を組み合わせて新しい市場や産業を創造することで競争から逃れる方法を示します。特定の競合要因を排除し(低コストの側面)、顧客にとって最も重要なものに焦点を当てる(差別化の面)。

競合他社との戦い(いわゆるレッドオーシャン)の代わりに、全く新しい顧客を市場に引き付けることで競争を無関係にしている(いわゆるブルーオーシャン)。ブルーオーシャンの代表的な例としては、Airbnb、Skype、Zappos、Salesforce、Wikipediaなどが挙げられる。

個人的に、ブルーオーシャンキャンバスは戦略を設計する上で最も有用なツールの一つだと思います。また、ほとんどの意思決定は顧客を理解することに依存するため、デザイナーのスキルセットに非常に近いものです。

Netflixのオンデマンドサービスで創られたブルーオーシャン

ブルーオーシャンを創るために必要なこと

  • 5~12の競合要因を定義する(チャート下部)
  • 描線をひく
  • どのような競合要因を排除し、減らし、高め、導入することができるのかを問うことで、ブルーオーシャンのオファーを作成する

作成されたブルーオーシャンのオファーは、単に優れるだけではなく、本当に異なるものであることを確かめる必要があります。それは、支配的な業界のライン(赤線)と同じ基本的なパターンに異なることです。それは、ある業界の全く新しいやり方を示すことです。ブルーオーシャン戦略については、こちらの本(英語)に詳しく書かれています。

4. ビジネスモデル:あなたのプロダクトでどうやってお金を稼ぐかを考える

「デザインはユーザーためのだけでなく、顧客のためにある」

ージョン・マエダ

ビジネスの成功のためには、技術的なブレークスルーだけではもはや十分ではありません。急速なイノベーションの時代にあって、プロダクトだけにフォーカスを当てるだけではもはや十分ではありません。プロダクトのイノベーションよりも、ビジネスモデルのイノベーションの方がビジネスの成功に大きな影響を与えることが研究で明らかになっています。

ソーラーパネルについて考えてみましょう。1970年代から価格は下がり続けていましたが、2010年頃になってようやく新しいビジネスモデルが登場しました。いくつかのソーラー企業は、顧客がソーラーパネルの分割払いのために何も前払いする必要がないゼロダウンペイメントを提供し始めました。このような企業は、パネルの維持管理も行います。これにより、価値観が一変し、新しい技術がより広く受け入れられるようになりました。

デザイナーはプロダクトだけでなく、顧客がどのように価値を得ているのかを理解することが重要です。ユーザー体験とは、誰かがプロダクトをどのように使うかということだけではなく、プロダクトの購入、メンテナンス、アップグレード、廃棄の方法も含めて考えなければなりません。

個人的にエコシステムマップというビジネスモデルを理解し、デザインするためのツールをお気に入ります。これは4つのブロックで構成されています。

  • アクター:価値の創造、提供、獲得には誰が関わっているのか(個人、企業、パートナーなど)
  • 情報の流れ:アクターの間で情報はどのように流れているのか?情報の種類は?
  • モノの流れ:商品やサービスの提供者から顧客への流れは?
  • お金の流れ:誰が誰に支払うのか?お金はどうやって動くの?
Netflixのエコシステムマップ(ビジネスモデルの可視化されたもの)

上記は、Netflixのエコシステムマップの例です。エコシステム内のアクターをアウトライン化し、アクター間の関係を定義することでこのようなマップを作成します。

マップは、ビジネスモデルの3つの部分を表現します。

  • どのように価値を創る
  • どのように価値を届ける
  • どのように価値を捉える

価値創造の部分(マップの左側)では、企業がどのようにプロダクトを創造するかを示します。デリバリーの部分(マップの下の部分)では、プロダクトがどのように顧客に届くかを示します。そして、価値の獲得の部分では、顧客がどのようにプロダクトを支払うかを説明します。

新しいビジネスモデルをデザインするには、エコシステムマップを使って現状を把握し、可能なビジネスモデルを繰り返して考えることができます。成功しているビジネスモデルの多くは、似たようなパターンをたどっていることがわかります。有名なビジネススクールであるSt.Gallenの研究によると、55ビジネスモデルが世界で最も成功している企業の90%を占めるとのことです。ここから55のパターンカードをダウンロードして、新しいビジネスモデルを繰り返してブレインストーミングするのに使うことができます。

例えば、パターンの一つに「都度払い」というものがあります。これは、顧客がプロダクトを使用した時にのみ支払いを行う収益モデルのことです。これはブレーンストーミングのための出発点であると考えられます。顧客が利用した時だけ支払うサービスとしてプロダクトを販売することはできないだろうか?

5. 数字を使ったプロトタイピング:アイデアの実行性を素早く見積もる

「デザイナーが数字を理解し、分解することが本当に有利である。 」

ーInstagramのデザインのヘッド:Ian Spalter

最初の2年間で10億ドル以上の損失が出るプロダクトに取り組むことを想像してみてください。恐ろしいですよね?さて、それはまさにディズニーランド・カンパニーが最初のユーロ・ディズニーランドをオープンしたときに起こったことです。ディズニーランドはアメリカで大成功を収めていたため、ヨーロッパ市場への進出を決めたのです。オープンして間もなく、何かが間違っていることが明らかになった。それは、毎日百万ドル以上の損失を出していたのです!

ヨーロッパでの企画では、ディズニーはアメリカ市場での経験を生かしていた。アメリカでの観光客は平均4日間滞在し、終日ディズニーレストランで食事をしたり、Tシャツや帽子などの利益率の高い商品をたくさん買ったりしました。

一方、ヨーロッパの観光客は平均2泊しか滞在しておらず、全員が正午に食事をしたがり(ディズニーのレストランは正午のピーク時には準備ができていなかったため、食事を取るためにパークを離れなければならない観光客もいた)、利益率の高い商品を購入していなかったです。

ディズニーはもしファイナンシャルプロトタイプで予め仮説を検証できれば、これらのことをすべて防げたかもしれません。

デザイナーがニーズやユーザビリティをテストするためにビジュアルなプロトタイプを作成するのと同じように、ビジネスマンは実行性をテストするためにファイナンシャルプロトタイプを作成します。

このようなプロトタイプは、膨大なリソースを注ぎ込む前に、アイデアの潜在的なギャップを発見するのに役立ちます。また、プロダクトデザインにも役立ちます。たとえば、価格を上げないとアイデアが実現できないことがわかった場合、価格を上げることを正当化するために、別の方法でアイデアを見直さなければなりません。

このプロセスには、McGrath教授とMacMillan教授によって提唱されたDiscovery Driven Planning (DDP)という方法を利用することができます。これは、簡単な数学を使って、リスクの高い仮説を素早く特定し、体系的にテストするのが可能です。

DDPのコンセプトは、多くの仮説を行い、それらが正しいことを期待する従来の事業計画(ディズニーのケーススタディ)に反対します。ここでは、仮説を明らかにし、プロトタイプを作成し、それをテストします。

ここでは、デザイナーのためのほとんどのユースケースをカバーするプロセスの簡略化版を紹介します。

  1. 最終的な目標を念頭に置く
  2. 目標を達成するための要件をレイアウトする
  3. 仮説を文章化する
  4. テスト計画を作成する

1. 最終的な目標を念頭に置く

最初のステップでは、プロジェクトの最終目標を立てます。例えば、レストランを開店して、年間10万ドルの利益を上げることを目標にしているとします。そのためには、50万ドルの収益で、20%の利益率(50万ドル x 0.2 = 10万ドル)が必要だと仮定します。コストに540万ドルをかけることができるということです。

2. 目標を達成するための要件をレイアウトする

ステップ2では、これを実現するためにすべての必要な仮説をレイアウトします。例えば、収益50万ドルを達成したい場合、月次収益は41,666ドル(50万ドル/12ヶ月)、日次収益は1,388ドル(41,666ドル/30日)でなければなりません。さらに、平均的な顧客が15ドルを消費する場合、我々は1日あたり92人の顧客にサービスを提供する必要があります(我々は週7日オープンしていると仮定)。

あとは、92人の顧客を収容するのに必要なスペース(家賃)、92人の顧客を準備して接客するのに必要な人員(スタッフコスト)、食費、キッチンのオペレーションなども計算してみましょう。例えば、キッチン業務を見てみましょう。1日に92人のお客様にサービスを提供するためには、メイン料理を92品用意しなければなりません。1日の客数が均等で、1日の勤務時間が8時間だとすると、1時間(92/8時間)に11.5品のメイン料理を作れることになります。

これはあくまでも一例です。あなた自身のプロトタイプを準備するときは、すべての収益とコストに関連する活動(マーケティング、必要なスタッフなど)のために同様の計算を行います。

3. 仮説を記録する

ステップ3では、すべての仮説を記録する必要があります。それは、収益50万ドルで10万ドルの利益という目標を達成するために行わなければならないすべての仮説のリストです。私たちの例では、次のようになります。

  • 利益率:20%
  • 売上高:50万ドル
  • 顧客一人当たりの平均収益:15ドル
  • 1日あたり提供する顧客:92
  • キッチンのキャパシティ:11.5品/時間
  • 諸々(必要なスペース、家賃、スタッフ数、人件費、マーケティング費用、クレジットカード決済手数料、食材…)

以上は、我々が行ったいくつかの仮説に基づく簡単なリストに過ぎません。すでに述べたように、あなたのパージョンでは、箇条書きですべての仮説をカバーしなければなりません。

4. テスト計画を作成する

最後のステップは、仮説を検証するためのテスト計画を作成することです。例えば、1時間に11.5品の料理を作ることの実現性をテストします。単純にキッチンスタッフを半日雇って、彼らのパフォーマンスを追跡することができます。これは実際にレストランを開くよりもはるかにやすいです。

一度テストを実行したら、仮説をまとめた資料を見直さなければなりません。新しい実験をするたびに、私たちのコンセプトの実行可能で実現可能なバージョンの作成に近づいているはずです。

Discovery-Driven Planningの詳細については、このHBRの記事を読むことをお勧めします。

6. デザイン指標:ユーザーに与えた価値を測定する

「信頼性を築くためには、デザインの測定可能な部分に焦点を当てましょう。」

ーResolve to Save Livesのデザインディレクター:Daniel Burka

ほとんどのデザイナーはアナリティクスを敬遠しています。データドリブンになりすぎると、デザイナーである私たちの原点である「共感」を失うのではないかと恐れているのだと思います。数字のためだけにデザインの意思決定を始め、人間のことを忘れてしまうのではないかと恐れています。

まず、データ自体は悪いものではありません。一般的に、データが多ければ多いほど、より多くの情報に基づいたデザインの意思決定ができる。また、データは、意見に基づいた議論を避け、チームをまとめるのにも役立ちます。明確な目標を持つことで、チームが一丸となり、同じ方向に努力を集中させ、意思決定プロセスをスピードアップさせることができます。さらに、私たちデザイナーとして、自分たちの仕事の価値や進捗を実際に証明できないことがよくあります。定量化可能なメトリクスは、そのような場合にも役立ちます。

ビジネスの成果を上げるだけでなく、ユーザーのために最善を尽くしているかどうかを確保するにはどうしたらいいのだろうか、と疑問するかもしれません。Kate Rutter氏の傑出した研究からインスピレーションを受け、「デザインメトリクス」という概念を思いつきました。ほとんどのビジネスメトリクスは、獲得した価値(収益、利益、コスト、成長)を測定しますが、デザインメトリクスは、ユーザーのために作られた価値を測定します。

2つの質問に答えることで、自分のデザインメトリクスを見つけることができます。

  • ユーザーにとって成功はどのように見えるか?
  • ユーザーがプロダクトから価値を引き出すための主なアクションは何か?

最初のステップでは、プロダクトの主なバリュー・プロポジションを特定する必要があります。例えば、Googleカレンダーの主なバリュー・プロポジションは、整理整頓されていたスケジュール通りに動くことです。

ステップ2では、ユーザーがプロダクトから価値を得たことを示す主要なインタラクションを探します。Googleカレンダーの例では、最も重要なインタラクションは新しいタスクを作成することです。

ここで、このプロダクトのインタラクションを素晴らしい指標に変換しなければなりません。

  • まあまあいい指標:「週に作成された新しいイベント」これは誤解を招く可能性のある指標です。ユーザーを増やしているだけなので上昇する可能性がありますが、実際には、各ユーザーが平均作成するイベントの数が少ない可能性があります。
  • 良い指標:「ユーザーごとに週に作成された新しいイベント」これは、ユーザーの行動とユーザーごとに作成された価値を測定しますが、それでもユーザーベース全体で平均化されています。はみ出しの値が平均を歪めてしまう可能性があります。
  • 優れた指標:「新しいタスクを作成したユーザーの割合(週あたり)」これは、ユーザーベースの何%が行動を起こしているかを教えてくれます。はみ出しの値はもう重要ではありません。
  • 素晴らしい指標:「週に3つ以上のタスクを毎日作成するユーザーの割合」これは、プロダクトから価値を引き出すためにユーザーが取るべきアクションの具体的な量を示しているので、素晴らしいデザインメトリックです。また、毎週測定して比較することもできます(進捗しているかどうかを確認するため)し、個々のユーザーを考慮しています。

ところで、メトリクスを定義する際には、以下の4つの基準を念頭に置いてください(Croll と Joskowitz が「リーン・アナリティクス(Lean Analytics))」で定義していたものです)。

  • 理解しやすい:覚えて、理解して、議論できるようにしなければならない。
  • 比較可能:他の期間、ユーザーのグループ、または競合他社と比較することができます(例:「先週の売上コンバージョンが1%増加しました」は、「5%の売上コンバージョンがあります」と言うよりも多くのことが解析できます)
  • 実行可能:その指標に基づいてデザインを変更する方法を示します。反対に、アプリの総ダウンロード数のような指標は、増加するだけであり、それゆえに実行可能な情報を与えてくれません。
  • 正規化(比率):対立している要因を比較することで、何に取り組むべきかを理解するのに役立ちます。例えば、有料ユーザーとフリーミアムユーザーの比率は、有料ユーザーのバランスが取れているかどうかを理解するのに役立ちます。

指標を構造化するのに役立つもう一つのツールがデザインメトリクスキャンバス(Design Metrics Canvas)です。これは、デザインメトリクスとビジネスメトリクス(次の章で説明します)のバランスを見つけ、サポートメトリクス(メインメトリクスを理解するのに役立つ追加のメトリクス)を特定し、カウンターメトリクス(メインメトリクスに最適化しすぎた場合に何がうまくいかないかを測定するもの)を定義するのに役立ちます。

デザインメトリクスキャンバス

7. ビジネス指標:経営層の言葉に堪能になって、彼らを納得させる

デザイナー以外の人に自分の作品を見せるときは、彼らの言葉を使わなければなりません。彼らが気にするのは、物がどう見えるか、どう感じるかではなく、それがビジネスにどのような効果をもたらすかということです。そして、それはビジネスメトリクスで表現されます。

次に経営層の人々を説得したいときは、次のようにしてみてください。まず、デザイン(とユーザー)について話してから、すぐにそのメリットをビジネス・メトリクスに変換します。オーディエンスがどのようなメトリクスを気にしているかを知るには、単純に彼らに尋ねてみましょう。”このプロジェクトの主な目標は何ですか?それはどのように測定されますか?そこからは、あなたの仕事は、あなたのデザインがその目標にどのように影響を与えるかを示す(そして証明する)ことです。

物事を始めるために、最も一般的なビジネス・メトリクスをいくつか取り上げてみましょう。

収入の測定基準

  • 投資収益率(ROI):投資の効率のための一般的な指標です。これは、投資したお金で利益または損失を分割することによって計算されます。例えば、当社が1億ドルを投資して5,000万ドルの利益を上げた場合、ROIは50%(5,000万ドル/1億ドル)となります。ROIは、異なる投資を比較するための素晴らしいツールです。一般的に、ROIの高いプロジェクトにはより多くのリソースを投資したいと考えています。
  • 月次または年次経常収益(MRR (Monthly Recurring Revenue) またはARR (Annual Recurring Revenue)) — サブスクリプション収益モデルを持つ企業に関連する指標です。これは、企業が月または年ごとにどのくらいの収益を上げているかを示しています。例えば、月額10ドルを支払うサブスクリプションサービスの購読者が100万人いる場合、そのMRRは1,000万ドルとなります。

コストの測定基準

  • 顧客獲得コスト — ビジネスが新しい顧客を獲得するためのコストです。マーケティングと販売コストを追加してから、取得した顧客の数で割ることによってそれを計算することができます。例えば、マーケティングに毎月5,000ドル、販売に5,000円を費やし、100人の新規顧客を獲得した場合、顧客獲得コストは100ドル(($5,000+$5,000)/100人=$100)となります。
  • 固定費 — 生産された商品の数に関係なく変わらないコストです。固定費の一般的な例は、家賃、光熱費、保険料、支払利息、年間給与(固定年俸制の従業員の場合)、資産の減価償却費などです。
  • 変動費用 — 作り出されるプロダクトの数と変わる費用。一般的な例は物理的なプロダクトのための直接原料、クレジットカードの手数料、手数料およびデリバリーの費用を含んでいる。

顧客ベース

  • アクティブユーザー — 指定された時間枠内のアクティブユーザーの総数。通常、月間アクティブユーザー数(MAU)、週間アクティブユーザー数(WAU)、またはデイリーアクティブユーザー数(DAU)の形式で表示されます。アクティブユーザーの定義はプロダクトによって異なります。Facebookの場合、MAUとは月に1回以上ログインしているユーザーのことです。Uberの場合は、1ヶ月に1回以上の旅行を予約しているユーザーのことです。
  • 顧客の解約 — 顧客が企業から退会したり、購入しなくなったりする率。例えば、月初に500人の購読者がいて、50人を失ったとすると、毎月の顧客解約率は10%になります。理想的には、解約率はできるだけ低い方が良いでしょう。SaaS企業の年間顧客解約率の良いところは、5~7%程度です。

これは、最も一般的に使用されている指標の短いリストです。自社にとってどのような指標が重要なのかを知るには、さまざまな部署の同僚に話を聞いて、彼らの指標やKPIについて聞いてみましょう。また、新しいメトリクスを見つけたら、Investopedia(英語)で調べてみましょう、こちらには、例文付きで定義が掲載されています。

次は何だ?

「行動の伴わない知識は、全く知識がないのと同じだ」

ーTed Nicholas

この知識を活用するために、今日からできる3つのことをご紹介します。

  • 現在のビジネスや顧客のビジネスモデルのエコシステムマップを描くのです。価値はどのように創造され(プロダクトを作るために必要なもの)、分配され(製品やサービスが提供者から顧客へとどのように移動するか)、そして獲得され(顧客がプロダクトをどのように支払うか)、どのようにして生み出されているか?
  • デザイン・メトリクス・キャンバスに記入してみてください(こちら(英語)から入手できます)。デザインを測定する方法と、それをビジネスメトリクスに結びつける方法を確認してください。キャンバスを使って、デザイン案をプレゼンすることもできます。
  • 競合分析を実施して(こちら(英語)から競合共感チェックリストを入手できます)、誰と競合しているかを確認します。スプレッドシートを作成し、チェックリストから15のデータポイントを集めることから始め、インサイトを形にしていきましょう。

本気でビジネスを学びたい方は、d.MBAプログラム(英語)に参加することもできます。このガイドで取り上げられている7つの章すべてを、ケーススタディとすべての演習の詳細指示とともに、確認できます。また、7日間のミニMBAを受講して、d.MBAが自分に合っているかどうかを確認してみてください。

この記事は7 Things Every Designer Should Know About Business より翻訳したものです。
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