データを元にしたコロナウイルスに関する5つの事実 — パニックでなく、事実を追い求めよう

Kan Nishida
未来の仕事

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世界中の国が国全体または州単位でのロックダウン(都市封鎖)をすることになってしまった今回のコロナウイルスによるパンデミックですが、この数ヶ月の間に集まってきたデータを元に徐々にこのウイルスによる真の感染数、死亡率、またどのように感染し、どういった人たちが最も被害を受けるのかといったことに関する理解が急速に進んでいっているようです。

その結果、一部の国では以下の様なことが公然と語られるようになってきました。

  • 感染者数は現在分かっているよりも遥かに多い
  • 致死率はこれまで言われていたよりも遥かに低い
  • ほとんどの人にとっては症状がわからないほどに軽い
  • 70歳以上の高齢者に被害が偏っている
  • 多くの死者は老人養護施設で起きている
  • ロックダウンは効果がないどころか、心体へのマイナスの影響の方が大きい
  • 集団免疫こそが現実的な対策である

こういったことは一ヶ月ほど前であれば、メディアによって批判の嵐を受けるところであったことを考えると状況は落ち着きを取り戻しつつあるようです。

今回は数週間前ほどになるのですが、元スタンフォード大学医療センター神経放射線学部の主任で、現在はスタンフォード大学のフーバー研究所のシニア・フェローであるスコット・アトラスという人によって、各地で公表されているデータと様々な場所で行われている研究結果をもとにした冷静な考察がまとめられていました。

現在、多くの都市で緊急事態宣言のもと外出自粛要請が出ている日本の皆さんにも参考にしてほしいと思い、こちらに翻訳して紹介します。

The data is in — stop the panic and end the total isolation — リンク

by Scott W. Atlas, MD, Senior Fellow at Stanford University’s Hoover Institution and the former chief of neuroradiology at Stanford University Medical Center.

事実1:かなりの大多数の人にとっては、COVID19によって死ぬリスクはほぼない。

最近のスタンフォード大学での抗体テストを元にしたリサーチでは感染した場合の死亡率はだいたい0.1%から0.2%の間である。(レポートへのリンク)これは以前WHOが推定していた20倍から30倍高い数字と比べるとかなり低いものである。ちなみにこのWHOの数字は世界中の国が隔離政策(都市封鎖、ロックダウン)を取ることへの動機となった。

USのコロナウイルスのパンデミックの震源地でその死者数はUS全体の3分の1を占めるニューヨーク市では、18歳から45歳の間の人たちが死亡した率は0.01%、つまり人口10万人あたり10人である。75歳以上の人たちではその率は80倍となる。18歳以下が死亡した率は、10万に当たりゼロである。(データへのリンク

ニューヨーク州の全ての死亡者の3分の2は70歳以上の人たち、95%の人たちは50歳以上である。そして約90%の死亡者はすでに持病を持っていた人たちである。(リンク)現在までにしっかりとした調査が行われた6570人のコロナウイルスに関連する死者のうち6520人(99.2%)が持病を持っていたということがわかっている。(リンク

もしあなたが何かの深刻な持病を持っていないのであれば、年齢に関係なくコロナに感染しても死ぬ確率は小さい。そして健康な若い人や子供はコロナによって深刻な状況になることはほぼない。

事実2:高齢でリスクのある人を守り、病院が混雑するのを解消する

34,600人の入院患者を出したニューヨーク市の病院の入院に関するデータによると、18歳以下の人が入院することになった割合は0.01%、または10万人中11人である。18歳から44歳の場合は0.1%、65歳から74歳では1.7%である。

ニューヨーク市立大学のメディカルセンターのドクターLeora Horwitzによると、入院することになるダントツのリスク要因は年齢である。(リンク)WHOによる初期のレポートでも80%は軽い症状であると報告しており、最近のレポートでは感染率は私達が知っているよりももっと高く、逆に重症となる可能性は低いことを示している。(リンク

陽性だと診断された人のうちの半分は実は症状すらないのである。大抵の若者は、もともと健康であった場合は、これといった診療を受ける必要もないのである。

事実3:ロックダウンによる完全隔離政策は集団免疫を作るのを妨げ、問題を先延ばしにしている

これまでの何十年にも及ぶ医療科学から、感染することによって人間は免疫を作り、そのことが集団免疫を形成し感染の広がりをコントロールしていくことになるということを私達は知っている。(リンク

実際、これが他の感染する病気に対して、広大な予防接種を行う大きな目的である。人口集団が免疫を持つことを助けるのである。

このウイルスは大多数の人たちは感染しても特に医療サービスを受ける必要すらないことがわかっている。あまりにも軽いので、感染者の半数以上は症状すら気づかないほどであることが、ダイアモンド・プリンセス船アイスランド、そしてイタリアの例からもわかっている。

重症でない感染者は免疫を持った人たちを増やすための即効力となる手段なのだ。ウイルスをリスクの低い人達に感染させ抗体を生成していくことで、彼らが、もっとも弱い人達にウイルスが届くのを防ぐことができ、そのことで最終的にはこの危機を終わらせることになるのである。全人口の隔離を延長するのは広範な免疫力を作るのを直接妨害しているのである。

事実4:理論上の予測によって他の医療サービスを受けることができなくなってしまったことによって、人々は死んでいる。

何百万というアメリカ人にとっての致命的なヘルスケアサービスが無視されている。もしかしたらやって来るかもしれないというコロナウイルス患者のための病院のスペースを確保するためであったり、感染が拡大するかもしれないという恐怖のためであったりという理由のために、病院で治療を受けることのできない多くの人達が死んでいる。

アメリカのほぼ全ての州では、緊急に必須だと認められていない手術や医療処置は完全にストップしている。(リンク例えばガンのような命を脅かすような病気の早期発見のための診療も止めてしまっているのだ。(リンク)腫瘍の生検などもされていない。多くの重症患者に対する緊急治療を含む治療も見過ごされている。がん患者は化学療法(キーモセラピー)を延期している。(リンク)推定によると80%の脳の手術がスキップされた。脳卒中や心臓発作の患者はたった一度の治療を受ける機会を失ってしまったことによって死ぬか、多くの人は恒久的な障害を持ってしまうことになっている。

事実5:特別な対応策によって守るべきリスクの高い集団を明確に定義できている

世界中に溢れているデータと研究結果より、「高齢か持病を持っている人たち」という明確に定義できる人たちが入院を必要とするような重症にいたるか、もしくは死亡するというリスクがあることがわかっている。

このグループに対する隔離政策というのは常識の範囲で達成できるものである。老人養護施設にいる人達と外部の人たちとの接触を制限するのは、すでに外部からのアクセスが制限されている施設にいるのだからすぐにできることである。

生物学に対する基本的な理解と現在あるデータとエビデンスをもとにした適切な政策とは、例えばすでにわかっている、か弱い人達に対する厳重な保護、マイルドな症状のある人達の自主隔離、大きな人数が集まりすぎないような注意を持った上でたいていの仕事場と中小ビジネスをオープンするといったような、よりフォーカスした戦略を実行することである。(リンク

これがリスクの小さい人たちによる集団免疫を獲得するために重要な人と人との交わりを促し、そして同時に多くの人の命を救い、医療崩壊を防ぎ、完全封鎖の継続によって引き起こされているとんでもない規模のダメージを制限することになる。

すでに出てきている実証的な証拠を無視するのを止めるべきである。そして理論的なモデルに頼り、その結果を強調するのを止めるべきである。

最終的に重要なのは事実を直視することなのである。

要約終わり。

あとがき

今回のコロナウイルスのパンデミックが始まった数ヶ月前にはかなり情報が錯綜し、多くの人達が混乱している状況でした。私も混乱していた一人です。

当時まだ多くの国では感染者数が少ない、または感染者数の実態がつかめていない状況だったのでそもそもデータがほとんどなく、「不確実性」が高いため大変なことになってしまってからでは手遅れになるので、もしものために先手を打って対策を立てていかなくてはいけない、といった空気があったように思います。

そこで多くの国ではロックダウン(都市封鎖、自宅待機)という前代未聞の対策を取ることになりました。

しかしそれ以降、ここ2ヶ月の間にどんどんとデータが集まってくることとなりました。世界中の様々な場所から抗体検査をもとにした分析結果や、公表されているデータをつなぎ合わせた分析結果などが公表されてきました。

こうした現実のデータによる分析結果の中には、それまでのメディアによって発信されていたストーリーとは相反するものもありました。むしろ、しっかりとした分析になればなるほど、そういう物が多かったのではないかと思います。つまり、実態は思ってたよりひどくないというものです。

それどころか、現在のロックダウンは効果がないと言うようなものも出てきはじめました。その結果、メディアによるそういった分析結果を公表した人達に対するひどいバッシングが起き、このことが多くの人からこうした冷静な分析結果を目に機会を奪ってしまうことになってしまいました。

しかしそれでも、事実というものはメディアでさえも隠し通せません。最終的には事実は勝手に檻から出てきて一人で歩き始めるものです。

今回のあまり注目されていないヒーローというのは、こうしたメディアからのバッシングを受けながらも、分析結果を公表し、メディアにとって都合の悪い事実を一生懸命に説明し続けてきた人たちだと思います。

データが読めない、統計的思考ができない人たちがメディアを使って自分たちにとって都合のいい解釈を垂れ流し、いたずらに恐怖を煽っていくときには、私達一般市民がデータと真摯に向き合い、様々な疑問に1つずつ冷静に答えていく努力をし、現実世界のより正確な姿を理解していかなくてはいけないのではないかと思います。

少なくとも、私達のようなデータの世界で生きる人間にはそうした世の中を実現するためのサポートをしていく使命があるのではないかとの思いを強くしたのが今回の大きな学びでもあります。

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Kan Nishida
未来の仕事

CEO / Founder at Exploratory(https://exploratory.io/). Having fun analyzing interesting data and learning something new everyday.