選択肢の数から日本の就活を世界と比較する

アメリカでは、文理の概念は薄く、専攻で何をやっているのかが大切です。上記のような質問に対して、僕はこう答えます。

“Educational Technology”

するとたいていこう返されます。

“Wow, so do you wanna be a teacher here or in Japan?”


僕はこう言います。


“Not actually, I would like to ~~~“


秋学期、何百回このやり取りをやったことでしょうか。

留学中の石山です。秋学期が終わりました。たくさん恥ずかしい思いをし、たくさん失敗しました。少しは精神的に強くなりました。



日本の就活では、春インターンの選考が始まっている頃かと存じます。


そんな就活において、しばしば「やりたいことがわからない」「本当にこれでいいのか」ということに直面します。でも、この現象はアメリカもそうなのかという疑問がありました。たった半学期ですが、少しわかったことがあるので、今回はそれについてです。


おそらく、「やりたいことがわからない」「本当にこれでいいのか」というのは、「選択肢を絞り切れない」ということと同意でしょう。そこで、「選択肢が多すぎる問題」という観点から、就活を比較してみたいと思います。



前提として、アメリカのJobhuntingの方向性を大きく決定づけるのが、入学してから選べる専攻です。いい悪いは別として日本では、学部ごとに入試が一般的です。高校生のうちに、学部を決めなければいけません。対してアメリカは、入学後に自分のMajorが決まった段階で、何学部に所属するかが決まるのが一般的に思えます。

僕は、アメリカにおいて専攻を決めることは、将来の仕事をある程度絞ることと同義のように感じています。

Majorを決める=「将来の選択肢を狭める」行為です。



“What’s your major?”

“Educational Technology”

“Wow, so do you wanna be a teacher here or in Japan?”

“Not actually, I would like to ~~~“



以上の会話では、この専攻だから、将来こうなるんだよんね?という思考回路になっているわけです。さらに、ジョブフェアのようなものでもこのような傾向を感じました。


日本でいうキャリタスなどのジョブフェアがアメリカでもあります。この半学期で知っている限り、専攻別のジョブフェアが多かったです。僕は、ビジネス専攻対象のジョブフェアに顔を出してみたのですが、銀行やメーカーの営業など、限られた企業が参加していました。



僕のルームメイトの例を出してみます。僕のルームメイトはエンジニア専攻で、車の設計を得意としています。将来は道そのままにそういったことに関わりたいとのこと。

彼は、エンジニア専攻限定のジョブフェアにて、名門Fordの面接機会をゲットしていました。(結果は年を越してから出るそうですが)



そんな彼に、アメリカのJobhuntingで大切なのは何なのか聞いてみました。(あくまで1エンジニアの意見ですが)


彼によると、この3つ。

①優秀なレジュメ ②インターン含めた実績 ③コネクション



①まず、大切なのがレジュメです。日本でいうESです。ESとは違って、基本的にA4一枚です。この狭いスペースに何を書くか、どう表現するかがカギです。そのため、キャンパス内では、レジュメ添削サービスも活発です。ボスキャリ前にはお世話になりました。だから、LinkedinなどのSNS活用も活発なのでしょう。そうったことを通じて、彼らは自己ブランディングの方法も勝手に覚えます。


②アメリカでは基本的に過去の仕事経験が要求されます。彼は夏休みまるまる、自動車部品メーカーのインターンに行っていました。インターンといっても、日本の3daysといったものとは全く違います。ちなみにこれを話したら、笑われました。ふつうは2–3か月で、社員のように扱われ、その間に実力を見極められます。このようなインターン経験がないと、相手にしてもらえないことも多いようです。彼にこのインターンをどうやって見つけたのか?と聞いたら、コネクションで面接を受けたと答えが返ってきました。


③アメリカのJobhuntingではコネクションが大切だそうです。日本で「コネが大切だ」と言ったら、だいぶ問題となりそうですね(笑)
アメリカは、日本以上の超学歴社会です。もちろん、正式なルート(Webサイトから応募)ももちろん活用するそうですが、知人や父さんの知り合いといったコネを使って面接機会をゲットしていくそうです。横のつながり、縦のつながりが非常に重要なのです。一旦アイビーリーグなどのトップのコミュニティに入ってしまえば、超一流企業への道も見えてくるようです。(ですが、アイビーリーグトップの学生は起業する傾向だそうです。)




具体的に、アメリカの企業への応募条件はこのようになっています。
Ex. ~募集要項~
募集業種:営業所長
応募資格:営業経験2–3年、英語ネイティブレベル、日本語会話レベル、マーケティングまたはビジネスの学士号/修士号/博士号をお持ちの方



①-③の自分のリーソースをこれに当てはめます。
このようにして、勝手に「選択肢が狭まっていく」のです。



対して、日本は大卒以上であれば、応募はできてしまうことがほとんどです。これは「選択肢を広げる」システムであり、「選択肢が多すぎる問題」が起こりやすいのでしょう。



さらに、アメリカ以外の例を挙げてみましょう。
ドイツ、スイスは教育システムが似ており、両国とも早めにコースを分けます。あまり勉強ができない子は、早々と職人などを目指します。勉強の苦手な子が、競争にさらされて大学を目指すよりも効率的かもしれません。構造的に、自ずとやるべきこと、進むべき道が決まってくるのですね。人生の早い段階から、徐々に自分の進路が絞られ、「将来の選択肢を狭める」のです。
https://this.kiji.is/173689744154083330?c=113147194022725109





日本の新卒一括採用は、90%を超える就職率が示すように、社会のよいセーフティネットになっていると感じます。(アメリカは50–60%)
日本はこの「将来の選択肢を狭める」時期が一気に来るのでしょう。いや、正確には就活で「選択肢を狭める」ことができないかもしれません。特に日系企業は、総合職という曖昧なくくりで入社し、入社後に各部署に配属されます。



ドイツ、スイスでは教育システムが「将来の選択肢を狭める」ことに貢献しています。アメリカでは、専攻や学歴が「将来の選択肢を狭める」ことを助長しています。対して、日本では、就活の際に「選択肢が多すぎる問題」が発生しやすいです。ただ、自分の力で「選択肢を狭める」ことができれば、それは何より自分の人生に納得感を与えられることにつながると思っています。



どちらもそれぞれの国の文化に最適化して生まれたシステムでしょうから、いい悪いはないと思います。このように、他国の学生のキャリアが、構造的に他力本願で決まりやすいのに対して、日本は比較的チャレンジでき、就活時に自分で「将来の選択肢を狭める」ことができるととらえることができるかもしれません。そうとらえると、日本の学生は恵まれているのかもしれません。就活を後悔なしにやりきった場合においては。






時間がある方は下記の動画も見てみてください。非常に面白いです。日本語版もあるはずです。

参考:
https://m.youtube.com/watch?v=VO6XEQIsCoM

--

--