vol.12「ソーシャル・ビジネスプランをどう描くか」

思いつきを「絵」にしていく

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インターン希望の大学生に向けて、フローレンスが展開する事業とその理念について熱く語る

今回のテーマは、「ソーシャル・ビジネスプランを描く」である。

現場でのヒアリングなどを通して、問題解決のための仮説が導き出された。それを事業計画書に落とし込んでいく作業である。

その前にすることがある。それは、ビジネスモデルを考える作業だ。つまり、どんな仕組みの、どんな事業を行うのかを、ある程度、明確にしていくのである。

最初は思いつきベースで構わない。僕の場合、「病児保育の施設が不足している。だったら、つくればいい」という、めちゃくちゃプリミティブな地点からのスタートだった。

これを「絵」にする。ビジネスモデルを考えるときは、「絵」にすることが欠かせない。頭の中で考えているだけではダメだ。スケッチブックや手帳、パワーポイントなどに、頭の中にあるものを絵や図にして描き出していく。四角や丸でプレーヤーを列挙して、矢印で誰が誰に何を提供するのかを描く。

できれば、最初は手書きがいい。そのほうが自由だし、集中できる(ただ、スケッチブックだとプレゼンなどに不向きなので、ある程度まとまったら、パワーポイントに移し替えたほうがいいだろう)。

絵は100枚以上描き直す

この「絵」(模式図・モデル図)は、最初の1枚目で完成ということはまずない。どんどん描き直したりしていくことになる。僕が最初に絵にした時を思い出すと……。

病児保育の場合、「病気の子ども」と「親」がいる。そして、その子供を預かる「病児保育のための施設」がある。子供を預かるためには、誰かがいなければならない。「保育士」だ。ただし、預かるのは病気の子供なので、親に安心してもらうには「看護師」も必要だ。

さらに、「病気の子供を預ける親ってどんな人?」「預けられる子供は何歳くらいまで?」など、頭の中にいろいろツッコミが浮かぶ。それをまた絵にしていく。

そんなことを繰り返しながら、僕は結局、100回以上描き直していた。

反証され、妄想が現実に近づいていく

自分の中で考え、絵にしているうちは、「妄想」にすぎない。なので、途中からは人にも見せていく必要がある。他者の視点が入ることで、「妄想」が現実味を帯びてくるからだ。

まず見せるのは当事者だろう。病児保育だったら、幼い子供のいる親御さんだ。この時、必ず反証が出る。それは100%確実と言ってもいいだろう。自分の「妄想」にすぎないのだから当然だ。なので、反証されても凹む必要はない。「なるほど」と受け取り、「じゃあ、どうしようか」と考えるチャンスにする。そして、「こうしよう」と浮かんだアイデアを絵に描き加えていけばいい。「妄想」が少しずつ現実のものとなっていくプロセスだ。

事業計画書を作成する

こうした作業を経て、ようやくソーシャル・ビジネスモデルのたたき台のようなものができたら、次はソーシャル・ビジネスプランを作成する段階に入る。

「ビジネスプラン」といわれても、どうやって作成したらいいか戸惑ってしまう人には、総務省がウェブで公開している「事業計画作成とベンチャー経営の手引き」が参考になる。これに沿ってやっていくと非常に作成しやすい。

「事業計画作成とベンチャー経営の手引き」のURL

ただ、218ページにもなる分厚い手引書で、かつ内容も専門的である。「これは自分にはハードルが高い……」という人は、まずは下に挙げる項目を押さえたシンプルなソーシャル・ビジネスプランをつくってみよう。

【駒崎式・事業計画書】

■どんな人を助けたいのか? [ターゲット]
■助けを必要としている人は、どれくらいいるのか? [市場規模] ■どのような仕組みで助けるのか? [モデル]
■お金は誰が払うのか? 助けたい人から、いくらもらうのか? [マネタイズ] ■ほかに、似たような事業を行う人や団体は存在するのか? [競合] ■上記の人や団体と、自分たちのとの違いは? [差別化] ■どういう組織にするのか? [組織デザイン] ■今後、どのようにして広がっていくのか? [スケールアウト]

これでとりあえず、ソーシャル・ビジネスプランができた。

「さっそく、スタートだ!」といきたいところだが、それは性急だ。このソーシャル・ビジネスが、本当にお金を稼いでいけるものなのかを確かめる必要がある。ビジネスとして成立してこその、ソーシャル・ビジネスである。

そこで今度は「財務モデル」づくりだ。

次回、財務モデルをどうつくり、まわしていくかについて見ていく。

>>次回へ【vol.13「財務モデルをまわす」】

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認定NPO法人フローレンス
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NPO法人フローレンス公式アカウント。「子育てと仕事の両立が可能な社会」を目指し、100%対応&訪問型の病児保育を展開。ひとり親家庭への寄付による低価格でのサポートも行う。09年には待機児童問題解決のため日本初家庭保育「おうち保育園」スタート。 フローレンスの最新情報をつぶやきます!