Teal Organization(ティール・オーガニゼーション)とは何なのか
時代環境が変われば、それに応じた適切な組織のカタチは変わります。
最近でいうと「ホラクラシー経営」を目にする機会が増えてきました(たとえばこういう連載)。同じような文脈で Teal Organization(ティール・オーガニゼーション)というのを少しずつ聞くようになったのですが、日本語で調べても出てこない…ので、とりあえず英語で調べてみました。
※ 末尾のwebソースや書籍(Reinventing Organizations)を参照した上での意訳なので間違ってる可能性も大いにあります…。
※ 2018/1/7追記:上記書籍の日本語訳が発売されます。
「ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」
【1】Teal Organization(ティールオーガニゼーション)とは
1)そもそも”teal”ってなにか
まずTealというのは色の名前です。青緑っぽいこんな色です。
これは、ケン・ウィルバーのインテグラル理論の中で提唱される意識のスペクトラムに準拠しています。
意識のスペクトラムでは、Red → Amber(琥珀) → Orange → Green → Teal(青緑) の順に意識は発展していきます。Teal organizationは、Tealという意識の発展段階に則した組織、ということになります。(インテグラル理論については、日本語文献ではwikipediaがとりあえず一番読みやすかった。長いけど…)
ちなみにこの発展段階の変化は、「より良い」ということではなく、「より複雑に世界を見ている」ことを意味する、とされています。
2)組織ステージの比較
それぞれの色(=意識の発展段階)に応じて、適した組織の形態が変わります。ざっくり比較表にするとこうなります。
Orangeの段階が、一般的に「会社っぽい」と感じる方が多いと思います。ヒエラルキー型の組織に基づいて、合理性を重視し、成果を上げることを追求していきます。
これは、Amber(琥珀)というガッチリと役割分担が固定化された組織の「次」の段階です。
Amberでは何よりも「役割を守ること」が重視されるため、状況の変化に合わせた柔軟な対応というのは認められません。
世界が「変化しない」という前提であれば、Amberはとても都合が良いのですが、世界を「変化する可能性がある」より複雑なものであると捉えるときには、Orangeによる運営が適切になります。
なお、組織はすべての側面において単一のステージに属するわけではなく、ある側面ではgreen、ある側面ではorange、というように混ざり合っており、「総合的にorangeに近い」といった捉え方になります。
また、ステージが変わることで、「獲得できるもの」もあれば、必ず「逆効果」も生じます。その点からも、より上位に行けばより良い状態であるわけではなく、あくまで「捉えている現実に適したカタチ」へと転身する、ということに過ぎません。
3)Teal organizationの世界観
個人の欲求を追求するRed、世界が不変なものと捉えながら組織力を活かすAmber、変化する中で成果を出すことを目指すOrange、成果追求の行き過ぎから人の関係性を快復するGreen。
その次のTealは、世界の見立て方が随分違います。
いくつかの象徴的な表現をピックアップしてみると;
- 人はボスからの指示によって動くのではなく、組織の目的に「自ら耳を傾ける」ことで動く
- 自分の自我から距離を起き、不安や恐怖、野心や欲求によって動かされない
- 外の基準ではなく、内面の正義性によって決断する
- 人生は「本来の自分の姿」を開いていく旅路である
- 問いを生きれば、多様な世界から予想外の出来事を通じてヒントが提示されたり、夢や瞑想を通じて大切な言葉やイメージに出会うことができる
外の世界へと目を向けるだけではなく、内なる世界における探求が進んだ中で、新たな組織のカタチを追求していっています。
【2】現実に何があり得るのか、活かせるのか?
1)teal organizationのリアリティ
個人的には、tealというステージで見ている世界観は概ね賛同できるものの、これが組織として運営されるイメージがつかない、というのが率直な感想です。
それは「私自身の世界の捉え方がまだtealの世界観に達していない」からなのか、「世の中に広く受け入れられる段階になっていない(と私の中の “常識” が抵抗する)」からなのか、単に「そもそもの理解ができてないだけ」なのか。よくわかっていません。
2)「組織の発展段階」という考え方を活かす
一方で、意識のスペクトラムに基づいた「組織の発展段階」に応じて組織の状態を診断する、というのは有効な切り口になりそうです。
たとえば、先ほど書いたように、「企業のマネジメント」として一般化しているのはorangeの世界観ですが、その中で出てきた様々な歪みを改善するためにgreenが奨励されてきている、と捉えることが出来ます。
また、個人が人間的に成熟するのと同じく、組織も「健全に発達する」ことも必要です。前段階が未達成の状態で、形だけより進んだ発展段階の施策だけを導入しても意味がありません。
例えば先日、大手金融機関で「男性の育児休暇取得100%を目指す」という話を聞きました。
これは、根っこの思想としては「男女問わず、多様な働き方を奨励したい」というgreenに近い世界観を目指しています。ただ、その世界を実現するために「100%達成を目標にする」という、orangeなヒエラルキーのパワーに頼っています。本質的に実現したい状態を考えれば、手を加えるべきは、背景にあるorange的な文化や空気、ということになります。もちろんこれは非常に時間と労力のかかる取り組みですが。
別の例として、ベンチャー企業が、人数の少ない中では極めて自由な働き方をしていた場合。これは一見するとgreenらしい。ただし、組織の人数が増えてきたときに、組織としてorangeを経験していないことで、組織の中に「マネジメント」が根付いておらず、組織力を発揮することが出来ない、ということが往々にして起こります。その場合は、逆戻りに見えても、一度はorangeのカルチャーを体現することが必要になります。