log, vol 02 「drawturgy」

これは log, vol 01 の続きです。

本章は卒業プロジェクトの概要部分にあたる。そのため、今後修正/追記される可能性がある。

◯目次

・背景

・研究概要

・調査方法

・現状と今後

2020.1203 卒プロ宣言「drawturgy」より

・背景

私は絵を描きだすことができない。理由は単純で、絵が下手だからだ。自分が絵を描くのが苦手だなと認識したのは小学生の頃だったと思う。見ている景色を描こうとしても、自分の手を、筆を通してキャンパスに描かれた世界は全く別物で、少しずつそんな自分に嫌気をさすようになっていった。もちろん中学、高校の副教科は美術ではなくて音楽を専攻していた。その一方で、友人たちとオリジナルのカードゲームをデザインしたり、学園祭では冊子の表紙やTシャツの絵を率先して描いていたのだから今思うと不思議なものだ。絵を描くという行為自体は今も変わらず好きだし、人が描いている姿をみるのも好きだ。(何なら画材オタクと自称するほど、画材を集めることにワクワクする)しかし絵を描くたびに、自分の頭の中にある世界が描けないのが嫌だという感情と向き合うことになる。かと言って、ろくに絵の練習をしてきたわけでもない。絵を描く以外にも、楽器、書道、映像や音楽の制作など様々な表現手段に挑戦したものの、結局どれも続いていない。あれだけ心が魅かれるものたちなのに、自分の手を通したものにはそのワクワクがない。初めは悔しさを感じ、何度も試行錯誤していたが、いつしかその感情は作品への申し訳なさと劣等感に変わり、そんな自分を塞ぎ込むかのようにそっと逃げてきた。

そんな私が、大学のとある授業で毎日模写をするようになった。(詳しくはmedium「私の見ているあなたの世界」を読んでください)私は、「ゆの」さんという好きなイラストレーターの絵を毎日描くことにした。そんな課題を通して、私はなぜ彼女の絵に魅かれるのかということについて考えるようになった。彼女が描いた絵が好きなのか、彼女の描いた絵が好きなのか。自分の中でずっと引っかかっていた疑問であった。模写に取り組んで数ヶ月が経ち、「私は、 “ ゆのさんが描くゆのさんが見ている世界が好きなんだ ” 」その言葉にすごくしっくりきた。模写を通して、少しでもゆのさんの見ている世界に近づくことができたのだろうか。そんなことを考えていたら、これまで塞ぎ込んできた私の世界にもう一度、向き合いたくなった。

模写を初めて数ヶ月。私が描いていることをおそらく知らない人から、「デザイン系のゼミに所属してそう」や「絵が上手そう」と言われるようになった。もしかすると絵を描くことで、私自身の日常的なふるまいに変化が起きているのかもしれない。描くことで絵を描きだすことができない私と決別できるのではないかと思った。絵を描くことで私を変える、そんな決意を込めてdraw(描く)+dramaturgy(E・ゴッフマンより)を合わせて、本プロジェクトに「drawturgy」というタイトルをつけることにした。

・研究概要

この研究にて知りたいことは、「人が絵を描きだす際に見ている世界/思考」である。私自身が抱えるデザイン行為の背後にある表現手段への劣等コンプレックスと向き合うことになる。そこで、身の回りで私が魅かれる表現者数名に協力をお願いすることにした。絵を描く様子を観察する/観察されるというプロセス、またその中での語りを通して、外的表象化された表現者自身の思考を探求したい。また具体的な興味の部分では、描かれた線一本一本の理由や、「頭の中でふと思いついた」「目の前のものが全く別のものに見えた」など偶然的に生まれたものが、ある種必然性を持って生まれてくるプロセスの中身やそのコンテクストについて知りたいと考えている。

・調査方法(2021.2月更新)

以下、現段階で計画実施している具体的なフィールドワークの進め方だ。

1)被験者に描いている様子(手元)を30分記録していただき、その映像を一緒に見返しながら、私(堤飛鳥)がインタビューを行う

2)私(堤飛鳥)が描いている様子(手元)を30分記録し、その映像を一緒に見返しながら、被験者がインタビューを行う

以上のプロセスを1サイクルとし、計3サイクルを実施したのち、最終的に各被験者とフィールドワーク全体のふりかえりを行う。1回のインタビューの時間は90~120分を想定している。撮影環境、社会情勢等をふまえ、zoomを中心にフィールドワークを進めていく。期間は2021.3月〜8月を想定しており、基本的に月に1度各インタビューを行う予定である。

以上の調査計画をもとにフィールドワークを進めていくが、この調査方法についても研究対象の一部と考えており、試行錯誤の中で研究プロセスが変化していく可能性について被験者には事前に了承をいただく。

・現状と今後

2021年0215〜0217の三日間で、インタビューへの協力をお願いしている3人とそれぞれzoomにて本研究について話す場を設け、話をした。そこで得たフィードバックをもとに、研究概要をブラッシュアップした。やはりお互い、実際にフィールドワークを行ってみないとわからない部分がある。そして0218、ついにフィールドワークが始まった。

次号に続く

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