はじまりはキャッチボール(1)

キャッチボールを通した変化の記録

Yoko Takeichi
綿毛の友
4 min readJul 25, 2016

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「家族」は一番身近な存在である。しかしだからこそ、家族のコミュニケーションのためにわざわざ時間を割くのが後回しになることは往々にしてあるのではないか。

我が家について

我が家は父、母、3歳年下の弟、そして私の4人家族だ。

弟は、小学校のときからスポーツ少年団でソフトボールをしていた。休日は保護者たちがスポーツドリンクなどの差し入れを持って朝はやくから応援に行く。組織ならではの面倒なお仕事も多いが、選手の家族どうしも仲良くなる、地域のよいコミュニティだ。

幼い頃から両親とともに弟の応援に行っていた私は、野球やソフトボールに興味を持つようになる。部活に入ったこともなかった私が高校入学と同時に女子ソフトボール部への入部を決めたのは、弟の影響が少なくない。

いきなり飛び込んだソフトボール部は、体力面でも精神面でも大変なことが多く、ついていくのに必死だった。でも、おかげで家族で出かけると4人でキャッチボールをすることが増えた。

高校時代ひとり暮らしをしていた私は、父の異動と弟の高校入学とともに、実家暮らしになった。大学1年の春のことだ。サークル活動など、家以外の場所で時間を過ごすようになった私は、せっかくの実家暮らしなのに、「家のこと」に無頓着になっていった。

そして、弟のとある出来事をきっかけに、私は家族とのコミュニケーションのとり方を見直すようになった。

実は私は、想像以上に弟のことを知らないのではないか。

改めて考えてみると、決して家族と仲が悪いわけではないのに、 家族との時間の優先順位は、私の中で全然高くなかったことに気がついた。

アウトドアな我が家

調査について

私は、高校3年生の弟を調査対象者にして、身近な存在とのコミュニケーションを意識的に行おうと考えた。一番身近な家族という存在と、意識的に時間を共有する方法は何があるのだろうか。

1対1で面談のように話を聞くのは嫌だった。

何かを共にしながら、普段の弟とコミュニケーションをとりたいと考え、相手が好きで日常的に行っていること、かつ自分も一緒になってできることを探した。

そして、キャッチボールを思いついた。

弟の好きなキャッチボールであれば、彼に必要以上の負担もなくコミュニケーションがとれるかもしれない。会話をキャッチボールと例える比喩もある。実際にコミュニケーションを意識してキャッチボールをしたら何か見えるだろうか。

こうして私の卒業プロジェクトははじまった。

ボールを追う

調査項目、方法

調査する内容とその方法は以下の3つである。

1、その日のキャッチボールがどう始まり、終わったか(フィールドノート)

2、その日のキャッチボールがどう行われたか(映像、音声)

3、我が家にとってキャッチボールにどんな意味があるのか(インタビュー)

フィールドノートには、キャッチボールの日時、場所、その日に行うことになったきっかけを中心に調査対象者の様子を記録。

映像はメディアセンターで借りたビデオカメラと三脚を使用し、基本的にキャッチボールを行う両者が画面内におさまるよう構えて撮影する。のちに、視線・声(発された言葉)・攻守(受け手か投げ手か)を中心に、分析をしていく。

ここまでの記録を振り返り、ビデオカメラのみでは音声情報が不十分だったため、両者にボイスレコーダーをつけて録音を行うことにした。

インタビューは、後日、父、母、弟のそれぞれ1人ずつと撮影した動画をみながら行う。「キャッチボールが好きか」「なぜキャッチボールをするのか」「自分からキャッチボールしようと誘うのはどんなときか」「キャッチボールをしていて印象的だったこと」などを中心に、改めて聞いてみたいことはたくさんある。

これは、慶應義塾大学 加藤文俊研究室学部4年生の「卒業プロジェクト」の成果報告です(2016年7月末の時点での中間報告)。

最終成果は、2017年2月に開かれる「フィールドワーク展XIII:たんぽぽ」に展示されます。

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