万治の石仏

岡本太郎が見出した石仏様。しかしながら萌えキャラのみでは観光特需も長くは続かず。

SIGMA sd Quattro+18–35mm F1.8 DC HSM

諏訪大社下社春宮から少し歩いたところに万治の石仏はあります。一応石仏の近くに掲げられていた看板によるとその由来は、

万治の石仏と伝説

伝説によると諏訪大社下社(春宮)に石の大鳥居を造る時この石を材料にしようとノミを入れたところ傷口から血が流れ出したので、石工達は恐れをなし仕事をやめた(ノミの跡は現在でも残っている)

その夜石工の夢枕に上原山(茅野市)に良い石材があると告げられ果たしてそこに良材を見つける事ができ鳥居は完成したというのである。石工達は、この石に阿弥陀如来をまつって記念とした。この石にこの地籍はこの石仏にちなんで古くから下諏訪町字石仏となっている。

とのこと。一応、仏様ながら諏訪大社にも縁があるということですが、 万治3年(1666年)という昔昔のものながら、最近まではそれほど知られた存在ではなかった様子。そんな石仏様が一気に観光名所へと躍り出るきっかけとなったのが、岡本太郎御大で、下諏訪のサイトでも、「岡本太郎も絶賛!」というタイトルを掲げて、

1974年、たまたま諏訪大社の御柱祭を見学に来られこの石仏と対面された、画家の岡本太郎さんや、作家の新田次郎さん方が感嘆されたことにより、一躍話題を呼び講演又は雑誌等で全国に紹介され知られることになりました。

と紹介をしています。

岡本太郎の筆による「万治の石仏」の文字( SIGMA sd Quattro+18–35mm F1.8 DC HSM)

実際自分が訪れた今回も、春宮でツアー客に案内をしていたガイドさんが岡本太郎の名前を出して説明をしていたのを耳にしたので、岡本太郎がこの石仏様の観光名所化に貢献したのは間違いない様子。

こうやってぐるぐると三回周囲を周ります( SIGMA sd Quattro+18–35mm F1.8 DC HSM)

実はこの石仏様、2014年の秋にも一度訪れています。萌えキャラの幟をたて川沿いの歩道には土産物屋が並んで道行く人に声をかけているほどの賑わいぶりだったのが今回はというと……。

2014年の秋に撮影。当時はこうした萌えキャラを添えた幟が立っていました(SONY α7+CONTAX Planaer 50mm F1.4)

参拝客も少なく、何だかとっても寂しい感じでした。ぽつぽつと人がやってきて、石仏の縁起と参拝方法の記された看板に見入っては、律儀にくるくると石仏の廻りを廻る姿は傍目からは滑稽ではありますが、参拝客にしてみれば案外大真面目なのかも知れません。

閑散とした石仏周辺( SIGMA sd Quattro+18–35mm F1.8 DC HSM)

看板からその参拝方法を引用しておくと、こんな感じ。

  • 正面で一礼し、手を合わせて「よろずおさまりますように」と心で念じる。
  • 石仏の周りを願い事を心で唱えながら時計回りに三周する。
  • 正面に戻り「よろずおさめました」と唱えてから一礼する。

という手順で行うとのこと。自分は寺だろうが神社だろうが、納経をし、祝詞を唱えるだけで願い事はしないのですが、とりあえず「よろずおさまりますように」と「よろずおさめました」とだけ念じ、野鳥の声を遠くに聴きながらくるくると周ってみました。

侘しげな浮島神社( SIGMA sd Quattro+18–35mm F1.8 DC HSM)

春宮から万治の石仏へ辿り着くには二つのコースがあります。ひとつはいったん外に出て、車道を道なりに左方向へ進む方法。もう一つは春宮の脇道から浮島神社を通って川を渡る方法です。ほとんど観光客は浮島神社は素通りで万治の石仏へと直行しているようでしたが、ここの浮島神社は参拝する人も少なく、これまた寂しげ。わいのわいのと賑わいすぎている神社もアレですが、観光客に素通りされる神社もちょっと可哀想だなぁ……ということで、簡単に祓詞を唱えて参拝しました。前にも書きましたが祓詞はカジュアルにさっと唱えることができるのでこういうときには便利です。ほとんどの人はゆったりと唄うように唱えるのでしょうが、仏式に早口で唱えるのが自分流である(^^;)。

車道沿いに歩いてくると見える「万治の石仏」の看板( SIGMA sd Quattro+18–35mm F1.8 DC HSM)

ちなみに上の幟に描かれていたご当地キャラ・阿弥陀万里について検索してみたところ、以下のような曰くがあるそうです。

とある満月の夜、長野県下諏訪町の観光名所、万治の石仏がひとりでに光りだし、石仏の背中から生まれ落ちた謎の多い女の子。
臆病で恥ずかしがり屋。気を許した人だけに、ほとんど聞こえない様な小さな声で話をしてくれる。 うとうととするのが好きで、暖かい場所を探して一人で町を歩いてはお昼寝をしたり、町の様子をぼんやり眺めている。

しかしながらこうした萌えキャラによる観光客誘致の効果がなかったのか、はたまた地元でも飽きられてしまったのか……。ちょっと可哀想に思えてきた(^^;)。

ともあれ、これで春宮の参拝はおしまい。続いて多くの参拝客で賑わう秋宮へと向かいます。

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Mark Yu -taipeimonochrome
読む,書く,撮る,聴く,旅に出る

読んだ本や聴いた音楽について、あるいは旅したことについて写真とともに綴っていきます