那須温泉神社と殺生石

足湯でほっこり。しかし参拝中は賽の河原から発せられる毒気に当てられ、かなりの体調不良だったことはナイショです。

SONY α7RII + Vario-Tessar T* FE 24–70mm F4 ZA OSS SEL2470Z

盆休みはずーっと休日出勤で、ようやく今週に入って代休をまとめて取得することができたので、八月三十日の水曜日に東北へ日帰り旅行に行ってきました、――と書いていて、タイトルは全然東北じゃないジャン、と感じた貴殿は正しい(^^;)。東北といっても福島県は白河が本来の目的地だったのですが、午前中は延々と雨が降り続いていたため、白河の関や境の明神で写真を撮ることもかなわず。結局、白河を訪ねたおりには必ず立ち寄る蕎麦屋で冷たい鳥そばと鴨せいろを食べたあと、そのまま那須へと向かいました。

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那須に向かう途中で雨こそあがったものの、天気の方は思わしくありません。せめて土砂降りでなければと祈りつつ、那須温泉神社に到着。那須温泉神社と殺生石の周りにはいくつか駐車場があるのですが、自分が停めたのは、那須高原観光案内所の眼の前にある駐車場。神社に参拝したあと殺生石を巡り、そのあとノンビリ坂道を下って、こんぱいろの湯なる足湯で疲れを癒やそう、――という作戦であります。

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今にも泣き出しそうな暗雲立ちこめる空を仰ぎながら、おそるおそる鳥居をくぐります。拝殿までは長い階段が続くものの、それほど急ではないので、ゆっくり歩けば疲れることはありません。いや、それよりは今にも降り出しそうな天気が心配で……(^^;)。

もう一つ。殺生石が近いからか、とにかく境内全体に硫黄の匂いが立ちこめてい、階段を上がっている間にも気分が悪くなってきました。

芭蕉の句碑。あまりパッとしない(^^;)((SONY α7RII + Vario-Tessar T* FE 24–70mm F4 ZA OSS SEL2470Z)

この境内には「生きる」と名付けられたご神木や昭和天皇お手植えの五葉松など見所も多いのですが、自分が見たかったのは芭蕉の句碑。何でも芭蕉はこの神社に参拝した後、殺生石を見物したとか。殺生石側の方が駐車場も広いし利便性は高いのですが、やはり芭蕉気分に浸りたいということで律儀にこの順番に従った次第。

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見立神社。いったい何を祀っている神社なのか、訪ねたときは判らなかったものの、帰宅後に調べてみたところ、ここ那須温泉を築いた狩野三郎行広を祭神とする神社とのこと。自分が境内で写真を撮っている間に数人ほどの参拝客は認められたものの、ここを訪ねるひとはいませんでした。参道の脇にあるので、多くの人は見過ごしてしまうのかもしれません。

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琴平神社や山神社が祀られているあたりは、春ともなれば群生したカタクリが愉しめるとのことですが、今は野草がいたずらに蔓延り、足元が悪そうだったので、心の中で手を合わせるだけで自分も素通り。

ご神木「生きる」(SONY α7RII + Vario-Tessar T* FE 24–70mm F4 ZA OSS SEL2470Z)

推定樹齢800年とされるご神木「生きる」と、昭和天皇お手植えの五葉松もなかなか立派なものでした。しかし空を見上げれば天気はますます怪しく、これはヤバイぞ……とびくびくしながら拝殿で禊祓詞を奏上します。

拝殿(SONY α7RII + Vario-Tessar T* FE 24–70mm F4 ZA OSS SEL2470Z)

この建物のつくりゆえなのでしょうか、いつもと同じように唱えているだけなのに、やたらと佳い声が響きます。自分でもこれだけ朗々とした声で響くのですから、キチンとしたひとが奏上すれば素晴らしい感じになるのではないでしょうか。

九尾稲荷神社(SONY α7RII + Vario-Tessar T* FE 24–70mm F4 ZA OSS SEL2470Z)

さて、拝殿の向かって右に眼をやると、殺生石はこちら、みたいな看板がありました。しかしその途中に稲荷神社があるのを見つけたので、こちらも参拝することに。名前は九尾稲荷神社。殺生石にまつわる言い伝えに悪役で登場する九尾の狐ですが、今では神様として祀られている、――ということなのでしょうか。ここでは稲荷秘文をさくっと奏上。筑波山神社にある出世稲荷は、妖怪でも棲んでいるんじゃないかというかんじで、とてもとても怖かった記憶があるのですが(確かあのときも嵐が来そうな天気でした)、こんな空模様にもかかわらず、こちらの稲荷にそういう陰気はそれほど感じられませんでした。

鳥居を抜けると殺生石へと続く緩い坂道(SONY α7RII + Vario-Tessar T* FE 24–70mm F4 ZA OSS SEL2470Z)

ここから殺生石までは、まだ紫陽花が咲いている坂道を少しばかり下ります。しかし鳥居を抜けて殺生石エリアに入るやいなや、ポツポツと雨が降り始めてきました。

坂道から殺生石を望む(SONY α7RII + Vario-Tessar T* FE 24–70mm F4 ZA OSS SEL2470Z)

しかし硫黄の匂いがひどく、実はこの緩い坂を下っている間もかなり調子は悪かったです。不思議なのは、これほど硫黄の匂いがたちこめているのに、煙がいっさい上がっていないことで、箱根の大涌谷や台湾の陽明山とは景色がかなり違います。

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こんな天気のせいかと思うのですが、あちこちに黒く焼けた石がゴロゴロしている殺生石の周りはちょっと怖い。そして「殺生石」と大書きされたところもかなり怖い。

賽の河原(SONY α7RII + Vario-Tessar T* FE 24–70mm F4 ZA OSS SEL2470Z)

賽の河原。平日のこんな天気にもかかわらず、那須温泉神社とは打って変わって、ここには結構な観光客がいて吃驚しました。

真新しい地蔵群。しかし何故黒い?(SONY α7RII + Vario-Tessar T* FE 24–70mm F4 ZA OSS SEL2470Z)

「教傅地獄の由来」という看板とともに真新しい地蔵が据えられてい、その周りをダーッと灰黒色の地蔵が取り囲んでいます。「教傅地獄の由来」についてはちょっと調べれば詳しい内容がすぐ出てくるので割愛しますが、母親が用意してくれた朝飯をひっくり返したというだけで、大地から吹き出した炎熱に焼かれて地獄に堕ちた教傅坊主。アンマリな仕打ちではないかと。

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もっともこのお話しの主役である教傅坊主はガキの頃から素行不良で知られていたそうですから、それまでに積み重ねてきた悪業が朝の卓袱台返しでついに閾値を超えしまった挙げ句、地獄堕ちしたということなのでしょうが、それにしても……。

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殺生石を出て、足湯のところまで車道を下ります。

湯ノ花エリア(SONY α7RII + Vario-Tessar T* FE 24–70mm F4 ZA OSS SEL2470Z)

そして那須温泉神社の鳥居があるあたりを抜けたところで、ついに尋常でない雨がザザーッと降り始めてきたので、慌てて足湯の建物に避難しました。

入口近くから殺生石を見る(SONY α7RII + Vario-Tessar T* FE 24–70mm F4 ZA OSS SEL2470Z)

足湯は大盛況で、十人ほどの人が詰めるようにして座っていて入ることができません。実はこの二日前に右足の親指を強打して、爪が盛り上がるほどに腫れ上がり、歩くのもままならないというテイタラクだったので、これを治すためにもとここでの足湯を予定に入れていたので、人がたくさんだからというだけで諦めるわけにはいきません(^^;)。

駐車場前の足湯(SONY α7RII + Vario-Tessar T* FE 24–70mm F4 ZA OSS SEL2470Z)

幸い、ほどなくして一家族が抜けたので、座ることができました。豪雨はやまず、結局雨宿りも兼ねてしばらく足湯に浸かっていました。土砂降りのためか、自分たちの後は子連れの家族が一組やってきただけで、湯の熱さにこの家族もすぐに退散してしまったため、ほぼ独占状態。

足湯に浸かっているうち体調も恢復してきたようで、温泉街の坂道を車で下っているうちに心なしか足も軽く感じられるようになってきました。翌日には足の腫れもかなりひいて痛みもほとんど消えていたのは足湯の効能か、はたまた那須温泉神社に祀られている大己貴命と少彦名命の霊験か、――いずれにしろ”効いた”ことは確かな様子。今度はもっと天気の良い時に再訪してみたいと思います。おしまい。

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Mark Yu -taipeimonochrome
読む,書く,撮る,聴く,旅に出る

読んだ本や聴いた音楽について、あるいは旅したことについて写真とともに綴っていきます