「ウルフマン・ジャック・ショー」という番組

Sho Okawa
隔日日記
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3 min readSep 14, 2016

ぼくが大阪にいたころ、FM COCOLOというラジオ局をよく聴いていた。 “Whole Earth Station”を標榜するこの局は、もちろんスチュアート・ブランドによるWhole Earth Catalogに影響されている。「自分たちの足元が、世界へとつながっていることを自覚しよう」というメッセージを込め、毎日放送されている。ぼくはこのFM COCOLOを聴きながら、大阪から西宮へと続く171号線をドライブするのが、どうしようもなく好きだった。

このFM COCOLOが深夜の1時から再放送として流していたのが、「史上最も有名なDJ」と言われるウルフマン・ジャックによる伝説的番組、 “Wolfman Jack Show”だ。アメリカで1970~1986にかけて放送されていたこの番組は、ウルフマン・ジャックが独特のしゃがれ声で軽快に喋り、60'sや70'sのロック・ポップスを紹介していく。声はしゃがれているし、ベラベラとよく喋るので、正直なところぼくは半分も聞き取ることはできない。ただ、その声を聴いているだけでなんだか楽しくなってくる。何を喋っているかわからないので、紹介される音楽も誰なのか定かではない。彼の選曲に身を任せ、遠い国の、昔の音楽に耳を傾ける。選曲は言うまでもなく最高だ。そして特に気に入った音楽が流れると、Shazamでその曲の情報を仕入れ、その正体に一人ひそかに驚き、喜ぶのだ。

ウルフマン・ジャック

FM COCOLOのHPを開くと、今はもう彼の番組を流していないことを知った。再放送なので、期間限定的なものだったのかもしれない。ぼくはもう大阪に住んでいないのでどのみち聴くことはできないのだが、少し残念だ。

この番組を通して、ぼくはこれまで知らなかったさまざまな音楽と出会った。いまでは音楽コンテンツはデジタルデータという形で長く残るが、それらと出会うためには何らかの仲介が必要だ。それはレコード屋だったり、喫茶店だったり、さまざまだ。だが、当時の人間が、当時の音楽を紹介してくれるという時空を超えた体験はとても貴重だ。ウルフマン・ジャックは、何十年というときと太平洋を越えて、大量の音楽をぼくに届けてくれたのだ。

Ken Yokoyamaは、 “I won’t turn off my radio”という曲で、ウルフマン・ジャックを引き合いに出した。横山健のようなヒーローにも、彼は多分に影響を与えている。 “I know you’re old but still got a lot to do”と彼は歌う。その通りだ。落ち目といわれるラジオにもまだまだ役目があるのだ。You Tubeで「オススメ」を聴き続けるのも悪くはないが、たまには「遠い国の誰か」である、ウルフマン・ジャックに次の選曲を任せてみてはいかがだろうか。

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Sho Okawa
隔日日記

大学院生2年目。新宿ゴールデン街で働いています。