書評:Hooked: How to Build Habit-Forming Products

あなたのプロダクトにユーザーは熱中してくれますか?

プロダクトやコンテンツ、サービスを作る人たちにとって、ユーザーを熱中させることは何よりも難しいことでしょう。スマホアプリの登場以降、多くの人たちがクリエイターとして活躍することができるようになり、以前に比べてCreator-to-Consumer比が高まっていることは言うまでもありません。

そんな中、ヒットするのはPockemon Goなど、ほんの一握りです。ましてや、1年以上継続して使ってもらうなんてことは滅多に起こらないでしょう。

しかし、だからと言って作ることを止めることはできません。それはクリエイターであることを放棄することを意味するからです。では、どのようにすればあなたのプロダクトを魅力的にできるのでしょうか。

Hooked: How to Build Habit-Forming Products

この本は、スタンフォード経営大学院やd.schoolで教鞭を取るNir Eyalによって書かれています。私が読んだのは原著ですが、日本語版も出版されています。どちらの方が良いということはないでしょう。

この本の中で述べられる重要なものは、The Hook modelと呼ばれる、ユーザーが熱中するためのサイクルモデルです。The Hook modelは、Trigger, Action, Variable Rewards, Investmentの4パートで構成されており、この4パートを循環することでハマる仕組みを実現しています。

Trigger

まず、ユーザーはなんらかのきっかけでプロダクトに触れる必要があります。日常生活を振り返ってみると、様々なTriggerが存在することがわかります。以下の質問に答えてみてください。

1. 町を歩いていて、どんな時におなかが空いたと感じますか?

2. なぜ路上ですれ違った人を振り返ってもう一度確認したですか?

3. 仕事中にもかかわらず、おもむろにスマホを触り始めたのはなぜですか?

Triggerパートは非常に一般的で広く取り扱われている話題です。あなたが一度でもマーケティングについて勉強をしたことがあれば、似たような話を聞いたことがあるでしょう。

たとえば、大阪大学の松村准教授が提唱する「仕掛学」では、人間の行動について鋭い考察を与えています。詳しくはまた他の投稿でまとめるとしましょう。

仕掛学―人を動かすアイデアのつくり方

下の写真は、私がこの記事を書くために急遽作ったものです。

これは、カーテンを閉めたくなるように工夫された「仕掛」です。ハートを作りたいあなたと、カーテンを閉めたい私のニーズがうまくマッチすることで、全員が満足するといった仕組みになっています。

ハートを作ってカーテンを閉めます(雑ですみません。。)

Action

Triggerによって刺激を受けたユーザーは、何かしらの行動を起こします。先ほどのカーテンの例で言うと、カーテンを閉めることが一つだと言えます。

Variable Rewards

さて、もっとも大事なパートであるVariable Rewardsについて説明します。人間のモチベーションを上げるために報酬は不可欠です。モチベーションには2種類あると言われており、それぞれ内発的動機付け、外発的動機付けと呼ばれます。これは、DeciとRyanが自己決定理論によってまとめた研究として有名で、モチベーションの心理学では基本中の基本となっています。有名な日本人研究者に、桜井茂男氏が挙げられます。

ユーザーのモチベーションを向上するためには、金銭などの外発的動機付けよりも、楽しいといった感情のような内発的動機付けの方がよい、ということを述べています。カーテンの例で言うと、閉めなさいと言われるより、ハートを作って、と言う方が楽しさがあってモチベーションが向上するということです。

では、どのようにして内発的動機付けを誘発する仕組みを作ればよいのでしょうか?

おそらくみなさんが一番興味があるところは具体的な方法論だと思います。ここで紹介したいのが、任天堂のゲームインタフェース作成において高い成果を挙げていたサイトウアキヒロ氏が提唱するゲームニクス理論です。

ゲームニクス理論は、ゲーム作りで用いられた設計指針を体系化したものであり、ゲーム以外への応用を想定して作られた理論です。具体的な内容は後日の投稿に譲るとして、ここでは概要を述べます。

ユーザーを楽しませるためには、効果音をつけることや、段階的に学習する仕組みを設けることが重要だということが述べられています。たとえば、ヘルスケアアプリを作るときに、日々の健康管理をする機能をつけることがあると思います。ここで、単なる記録機能ではなく、記録すればするほど嬉しくなる仕組みを導入することが鍵ということです。アプリの中にアバターを設定するとすれば、そのアバターが育つ、服がおしゃれになる、などが考えられるでしょう。

このような具体的な方法論を通して内発的動機付けを高めることができれば、きっとユーザーを魅了するプロダクトへと近づくことができるでしょう。

Investment

さいごのパートはInvestmentです。これは、単にお金をかけるということではなく、ユーザー自身が骨を折って活動し、サービスの価値を上げようとすることを表しています。

たとえば、クックパッドのレシピを投稿するのは大変ですよね。写真を撮ったり、重さを測ったり、いろんな作業をする必要があります。また、Facebookでは熱心に友達を探したり、イベントを開いたりする人達がいますよね。

これらのように、ユーザー自身が努力する仕組みを導入することが、熱中するプロダクトやコンテンツ、サービスを作り出す秘訣と言えるでしょう。ユーザー達は、頑張って作ったのだから、たくさん貢献したのだから、もっと使いたいと思ってくれます。そして、Investmentを続ける中で新たなTriggerを見つけ、次のサイクルへと入り、より一層プロダクトを使う、これがThe Hook modelです。

私が作ったカーテンの仕掛の解説もやはり書かせてください。ハートを作ったユーザーは、ハート以外にも組み合わせられないか考えるでしょう。そしてユーザー自ら新しい仕掛を導入する。これがInvestmentとなり、カーテンを閉める遊びに熱中することでしょう。

以上、Hookedの書評を通して、プロダクトを作る上で有用な知見について書きました。私自身、現在10年〜20年後の自動車のHMIを考える研究をしています。今回紹介したものは、どれも私の研究活動で実際に参考にしたもので、非常に強力なものです。

それぞれの細かい部分については、今後また新たに共有したいと思っております。まずは今回紹介したThe Hook model、ぜひ本を読んで学んでみてください。

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