第0.2箱 神様 段ボールひとつだけ

フェンスで四方を囲まれた箱庭の中で就寝するホームレス。サイレンの音、蛇のように畝るテールランプの跡、都会の喧騒。

そこは警備会社の怠慢というよりかは契約社会の空白地帯でありホームレスが野犬のように嗅ぎつけ陣をとる。

警察のパトロールさえ回避すれば悠々自適と生活ができる。

繁華街のホームレス連中は夏の羽虫のように光の射す方へ向かって生きている、都会の空白地帯に住むホームレスとは様相が異なる。

箱庭の中で台車に括り付けた小汚い段ボールで砂上の城を拵える。

またIKEAのバッグみたいな巨大なビニールバッグも彼らの愛用品だ。

『ああはなりたくないな。』

警察官に段ボールハウスを撤去させられているホームレスを眺めながらルームメイトのひとりが呟いた。

ここは路上生活者社自立支援センター。早い話がホームレス予備軍をぶちこんでおく施設である。

起訴途中の男、ちんけな詐欺で収監されていた男、事業を起こしていたが転落し這い上がれない男、仕事が切れてシェアハウスから追い出された男と碌でもない連中と入れ替わり立ち代わり住んでいた。

ラブホテルのシーツ替えで生きていた少年は早々に親元へと帰っていった。

この国で失敗しても死なないとか言ってる連中は生存者バイアスのポジショントークかぬるま湯に浸かってるだけだ。

ああ、くそくらえだ。

センターの部屋から見える景色と彼らの見てる景色。

あちら側とこちら側、なに様気取りのどちら様。

何処にいるのかわからないし、自分と彼らを分けているものがなんなのかわからなかった。

その境界線は目に見えるのか。

ただひとつ言えることはやに気が滅入るってことだけだ。

ビールを呑みたいところだったがここでは飲酒厳禁だ。

ああ、くそくらえだ。

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