デザイナーが見た深圳 2016

〜デザイナーとハードウェアスタートアップの付き合い方〜

なかじー
6 min readAug 18, 2016

チームラボ高須さんのご厚意により、深圳のイケてるハードウェア施設を巡るニコ技深圳観察会に参加させていただいた。
(高須さんはじめ関係者のみなさん、ほんとうにありがとうございました!!!)

私は本職はアプリやwebのUIデザイナーで、ハードウェアのデザインについてはずぶの素人。会社の外でガジェットを作ってる程度のものです。

今回はそんなガジェットとモノの交差点に興味のあるUIデザイナーの視点から、深圳を見てきて感じたこと、考えたことを書いてみます。
あくまで素人の考えなので、話半分に聞いていただければともいます。

そもそもなぜ深圳に注目するの?深圳何それおいしいの?という方はWIRED UKがいい感じのドキュメンタリーを作ってくれているので(無料)このあたりが参考になります。

じわりじわりと伸びつつある中国(深圳)のデザインクオリティ

高須さんによれば、ここ最近、深圳の電化街にならぶ家電のデザイン性は格段に向上したという。機能的には10元の商品も、デザインで工夫を加えれば30元で売れる。それに気づいてからは積極的に欧米のデザイナーを雇い、彼らの言うままにデザインした製品を売り出しているのだという。

深圳で出逢ったデザイナーの集うMAKERビル

デザイン事務所が集まっているビル群。近々地下鉄の駅も作られるんだとか。

ツアー2日目、SZOIL(Shenzhen Open Innovation Lab)という政府公認のFablabを訪れた。レーザーカッターがあって、3Dプリンタがあって、そこまでは普通なのだが、周囲に入っているオフィスを見渡すと、他のビルと雰囲気が一味違う。

並んでいるのは家具や家電のデザイン事務所ばかり。。。

SZOILの正面玄関。おしゃれ。

実はこのビル、Fablabをコアにして、デザインのトップ事務所が一点に集めてられている。事務所のスタッフは、Fablabの設備を自由に使うことができ、自分のオフィスとの間を往復しながら仕事ができる。SZOILは深圳市政府の支援し、産業界をまとめているSIDA(Shenzhen Industrial Design Professional Association)の下部組織にあたる。

このSIDAが、このビルの入居者を意図的にコントロールし、デザイン会社の集合体を作ってると思われるがそのやり方は非常にうまい。

トップリソースを集中させるメリット

リソースを集中させると、よいことがたくさんある。fablabのようにオープンに使えるfab施設があれば、機材をシェアして施設のコストを抑えることができる。加えて、相談や仕事の案件も一箇所に集まる。デザインで困ったらこのビルに行けばよい、というのはデザイナでない人にとっては、ありがたい話なのではないか。

デザイナーとハードウェアスタートアップとの付き合い方

inDare Designの玄関。iFやRed Dotのトロフィーの数々が並ぶ

例えば、このビルの中にあるinDare Designは深圳版takramのような会社でインターフェースデザインもインダストリアルデザインも両方手がける。

主に大手企業(サイトを見るとアリババからの案件もあった)からのデザイン外注を行っているが、ハードウェアスタートアップからのデザイン依頼を受けたり、一からプロダクトを作りこみ、大量生産するところまで自分たちでやることもあるようだ。

同時に、この施設ではfablabとデザインスタジオとが地元の工場と組み、深圳のハードウェアスタートアップがプロトタイプ→デザイン→マスプロと一貫して支援を受けられるようなプログラムを模索しているのだという。

inDare Designオフィス

日本では、いわゆる、メイカーコミュニティにいて、自分のことをインダストリアルデザイナーだと名乗る人を見たことがあまりない。そもそも業界自体が狭い、ということもあるが、それでもあまりに少ない。「メイカー=趣味の同人活動」というイメージが先行して、プロ意識が働くのか、あるいは、「結局お金にならないし、やっても自己満足に終わってしまう」と思っているのかもしれない。

ただ、自分が深圳に行って感じた一番の日本との違いは、深圳では、メイカーコミュニティやハードウェアスタートアップコミュニティが、インダストリアルデザイナーを上手に囲い込めていることだった。

今回、少人数でハードウェアプロダクトを作っているチームを実際に巡ってみて、スケッチや最初の見た目ベースのデザインは、外注(アウトソース)される場合が多い印象を受けた。
コアメンバーの中にデザイナーがいたとしても、その人はメカ・設計寄りの人だったりすることが多いようだ。

であれば、デザインのリソースが集中している上のビルのような場所は、手っ取り早くホンモノのデザイナーに出会える場所であり、相性は最高なのかもしれない。

深圳では全てがハードウェアスタートアップ・オリエンッテッドで決められるようなので、このようなエコシステムが成立している。

翻って日本でこれをやるべきかと言われれば…微妙な気はするし、自分もできればチームの一員としてプロジェクトにJoinしたいし、絶対にその方がいいものが作れそう。
けど、こんな形でデザインを回している地域もあるのだなと、頭の片隅に置いておいても良いのではないのだろうかと思った。

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