アカデミア発核酸ベンチャーの軌跡/Wave Life Sciences 科学顧問 和田猛先生

Beyond Next Ventures
Sep 3, 2018 · 10 min read

【前編】~起業から米国ナスダック市場に上場するまで~

こんにちは、Beyond Next Venturesです。

私たちは、大学・研究機関からの事業化を、初期から支えるベンチャーキャピタルです。

今回は、Wave Life Sciences Ltd.(Wave社)科学顧問の和田猛先生に、バイオベンチャーを起業してから、米国ナスダック市場への上場を経て現在に至るまでのお話を伺いました。和田先生の他、大手製薬企業出身の生沼氏、Beyond Next Venturesのバイオ投資を担当する盛島による対談形式でバイオベンチャー創業のストーリーをお届けします。前半は「起業から米国ナスダック市場に上場するまで」、後半は「日本のバイオ・創薬ベンチャーを盛り上げていくために」というテーマでの2部構成です。本稿がベンチャーを始めようとされている皆様の、「踏み出す一歩」に繋がれば幸いです。また、東京都が支援する創薬系ベンチャー育成プログラム『Blockbuster TOKYO』も9月14日まで受け付けておりますので、ぜひ奮ってエントリー下さい!

和田 猛先生

東京理科大学薬学部生命創薬科学科 教授/Wave Life Sciences 科学顧問

1991 年、東京工業大学 大学院 総合理工学研究科生命化学専攻 博士課程修了。 東京大学大学院 新領域創成科学研究科メディカルゲノム専攻准教授であった2008年、オリゴ核酸医薬の立体制御技術の実用化を目指してキラルジェン社を立ち上げる。 キラルジェン社は2012年に米Ontorii社と経営統合し、Wave Life Sciences社が設立。同社取締役を経て現在は科学顧問。

生沼 斉氏

Glorialth LLC 代表兼CEO

前武田薬品工業(株)Sr.VPワクチン日本事業部門統括。元サノフィ(株)VP研究開発担当常務執行役員兼(公財)かなえ医薬振興財団理事長。元(独)メルクグループ製薬部門Sr.VP、研究開発メディカル統括本部長。内外資製薬企業にて日本、米国ボストン、英国ロンドンにて従事。現在ライフサイエンス系コンサルティングファームを主宰。筑波大学博士課程終了、ハーバード大学留学。

盛島 真由

Beyond Next Ventures 株式会社 マネージャー

東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了、生命科学博士。2014年4月マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。製薬企業・医療機器企業の、新規製品上市・マーケティング戦略・新規市場開拓などのプロジェクトに従事。2016年10月に当社参画、主な担当領域:バイオテクノロジー、創薬、デジタルヘルス、及び海外展開支援。アクセラレーションプログラムBRAVEの運営。

■起業への後押しをしてくれたのは米国の研究者だった

盛島:2008年にWave社の前身となるキラルジェン社を立ち上げられましたが、どのようなきっかけだったのでしょうか。

和田先生:私から能動的に立ち上げたというよりは、ハーバード大学グレゴリー・バーダイン先生から一通のメールが来たことが始まりでした。私の書いた論文を読んだ彼が「この技術と自分のアイディアと結び付けて一緒にベンチャーをやらないか」というお誘いのメールをくれたんですね。

生沼氏:先生の技術のベンチャー化に一番最初に注目されたのは、米国の研究者だったのは驚きです。

和田先生:それからお会いして色々と話していったのですが、その時論文にしていたオリゴ核酸医薬の立体制御技術は国際特許にまだなっていなくて、話が頓挫してしまったんです、最初は。けれども、「国際特許がないのであればそれを生み出すためにベンチャーを立ち上げましょう」、ということになり、創業しました。この1年後の2009年には、ボストンでバーダイン先生が姉妹ベンチャーの Ontorii社を設立されました。

■起業時には確固たる自信があったし、創業メンバーは和田先生自ら口説き落とした

盛島:それにしても、アカデミアで研究をされていた和田先生が起業時決断に踏み込まれたのは、ものすごく覚悟が必要だったのではないでしょうか。

和田先生:そうですね。でも、自分が開発した立体制御技術に関しては、 核酸・タンパク質複合体のX線結晶構造などを見て、「異性体を制御できれば、医薬品の効果に大きな違いを発揮できる」という強い確信を持っていましたでも、最初は皆さん否定的でしたね・・・。

盛島:なるほど・・・。

よくアカデミア発ベンチャーのサポートをしていると、「ベンチャー化したいんだけれども、それを実行してくれる人材がいない、どうやって見つけたらよいのか分からない」、という先生にたくさんお会いします。先生はその辺り、どうされたのですか?

和田先生:私は、自分のラボ出身の研究者を口説き落としました。彼は技術的にも精通していたので、非常に短期間で色々な研究開発を実現してくれましたね。博士課程の学生がで3年くらいかかるものを1カ月くらいで。次々と特許出願をするようになって。その当時やっていたことが、今のWave社の基盤になっています。

盛島:凄いですね・・・!彼がベンチャーへの参画を決意された決め手は何だったと思いますか?なかなか創業時のベンチャーは高い給与を支払えないことが多いと思います。

和田先生:そうですね。私自身ワクワクしていて自信もあったし、夢を語りましたよね。まぁ控えめに。彼とは付き合いも長かったので人と人との信頼関係ありましたね。あまりにも夢物語だけでなくて、堅実に「こういうことをやろう」という具体的な計画を示してその価値を伝えました。それを理解してくれたんだと思います。それにかけようと思ってくれたんだと思いますよ。・・・本人に聞いたらまったく違う答えが返ってくるかもしれませんが(笑)

■創業時はインキュベーション施設から、助成金と民間の資金を組み合わせて活用

盛島:創業時、施設はどうされたんですか?

和田先生:東京大学柏キャンパスの隣に東葛テクノプラザという千葉県のベンチャーインキュベーション施設があったので、そこを一部屋借りて、細々と始めました。当時の研究室からとても近かったので、立ち上げ時はもう毎日のように通いました。立地は非常に良かったです。

盛島:創業時の研究開発資金はどうされたのですか?

和田先生:立上げ時には(株)新日本科学の資金やサポートを頂いていましたし、JSTの助成金とか、うまく外部資金を使ってました。

■事業展開に関しては、「最初は日本でやってアメリカに進出」ではなくて、最初からグローバルで考えていた

盛島:キラルジェン社と Ontorii社を統合され、Wave社となってから、現在は本社をシンガポール、ボストンと沖縄に研究開発拠点を置かれていますが、なぜそういった体制にされたのでしょうか。

和田先生:シンガポールに登記しているのは、企業としての戦略で、税金対策があります。それに、シンガポール政府自体が非常にサイエンスを後押ししてくれています。

盛島:なるほど。ボストンに拠点を置かれているのはどういった理由でしょうか?

和田先生:ボストンは世界の学術的なものが集中しています。日本とアメリカを比較すると、人材の流動性は非常に異なる。ボストンには非常にいい人材が集まっているんです。

生沼氏:私もボストンで活動していたことがありますが、そういった面がある一方、ボストンのデメリットは人件費が高い、人材が悪い意味で流動しやすいというところがあります。もう少しローカライズされたところにハブをもって、そこに人材を集めたほうが実際には良いのかもしれません。

和田先生:確かに。そういったリスクもあると思います。企業が成長する段階では、ある程度人材の流動性が穏やかなところが成長しやすいかもしれません。

生沼氏:一点追加で質問なんですが、日本人研究者や企業の人材は、「情報交換」という観点ではアメリカに比べるとまだギャップがあるとお考えですか?

和田先生:あると思いますよ。日本はまだまだだと思います。

生沼氏:やはりそうですよね。アメリカの場合は、限定的でもどんどん情報を出していくので、その場でディスカッションできますし。最初は「(そんなに情報出して)いいのかな」、って疑問に感じていたけど。情報は交換するけど、ノウハウは話していない。結局話したからと言って他の会社が真似できるものではないからそこはいいんだと。

盛島:なるほど・・・。総合的に考え、ボストンに研究所を構えるメリットが大きいということなんですね。

和田先生:核酸医薬においてはそうですね。しかし分野によって違うと思います。時代は変わっていきます。核酸医薬も最近日本でも進んできていて、ほとんどの国内大手製薬企業が核酸医薬の研究を進めています。核酸医薬学会というのも日本で立ち上がっていてこれは産官学連携という珍しい形でやっています。参加者は600人を超えていて、半数以上は企業の方です。こういったところからも分かるように核酸医薬を日本で活性していこうということが高まっています。

■バイオ・創薬ベンチャーには長期的な資金サポートが必要

盛島:創業時VC調達はされましたか?

和田先生:創業時、私たちはVC調達、銀行の借り入れを受けませんでした。私たちのような技術開発から始まるケースでは、VCや銀行は結果が出ないと引き上げてしまうと思ったからです。一時期大学発ベンチャーが一時期乱立しましたが、ほとんど潰れたのはそれが理由だったんじゃないでしょうか。

盛島:肝に銘じます・・・。内部に資金調達などでコンサルしてくれた人はいらっしゃったのでしょうか

和田先生:沢山いました。新日本科学の顧問など。ベンチャーの立ち上げに関してそういう方々とディスカッションしました。

生沼:新日本科学の人たちは非臨床から臨床に関わるところまでノウハウがあり、彼らの審査の基準は高いので、どういったところを突いていけばファンドを貰えるか分かっていたんだと思いますね。

【後編】へ続く・・・

あとがき

和田先生のお話を伺っていると、ご自身の研究開発が核酸医薬品の効果向上に繋がる、という確固たる自信があったことが分かりました。そのような先生の自信や熱意に惹きつけられるようにメンバーが集まり、チームができていったのだと思いました。

我々Beyond Next Venturesは、 そんな熱意溢れる研究者やベンチャーの方に創薬系ベンチャーの起業や創薬系ベンチャー企業の成長を支援する創薬系ベンチャーアクセラレーションプログラム「Blockbuster TOKYO(ブロックバスタートーキョー)」を東京都の委託を受けて運営しています。創薬系ベンチャーへの豊富なサポートを提供していますので、ご参加いただければ幸いです。

— — Beyond Next Venturesの運営するプログラム — —

◆大学・研究機関からの事業化支援するアクセラレーションプログラム
「BRAVE」
http://brave.team

◆東京都と運営する創薬系アクセラレーションプログラム
「Blockbuster TOKYO」
https://www.blockbuster.tokyo/

本記事に関するお問合せは delorean@beyondnextventures.comまで

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