スタートアップの共同創業に至るまで /インスタリム 取締役CFO 梶 芳朗

こんにちは、Beyond Next Venturesです。
私たちは、大学・研究機関からの事業化を、初期から支えるベンチャーキャピタルです。

今回は、当社の運営する、研究者と共に起業を目指すプログラム「Innovation Leaders Program(以下ILP)」を通じて、インスタリムの共同創業者として活躍されている梶 芳朗さんに、創業に至るまでの道のりと思いについてお話を伺いました。スタートアップへの参画に興味はあるけれど、踏み出すきっかけが掴めずにいる方の参考になれば幸いです。

梶 芳朗さん

インスタリム株式会社 共同創業者 取締役CFO

2009年、東京大学大学院 総合文化研究科広域科学専攻 修士課程修了。新卒でソニーに入社し、VAIO・PlayStation等の知財を担当。その後、戦略コンサルティングファーム他ベンチャー1社にて勤務をする中、ILPに参加。Fintechベンチャーの事業開発ディレクターとしての仕事と並行して、2018年4月、3Dプリンティングと機械学習を組み合わせ、安価に義足等を提供するインスタリムの創業に参画。

知財のスペシャリストを目指してソニーに

【梶さん】大学院の頃は生物物理学を専攻していましたが、正直、基礎研究は僕にはあまり合っていませんでした。考えた結果、技術との接点は持ちつつ、ビジネスに役立つスペシャリストとして専門性をつけていきたいと思うようになり、新卒でメーカーの知財部門に就職しました。当時主力製品の一つであるVAIO等の知財を担当できましたし、この頃の経験は、社会人の基礎を身につけると共に、大企業の仕組みを知るという意味でも貴重な経験でした。

しかし、程なくしてリーマンショックとアジアメーカーの猛威の影響が色濃くなりました。各事業が苦しんでいるのに自分の仕事は特許を出したり特許訴訟に対処するだけ。もちろん大切な仕事なのですが、当時の僕は知財以外何も知らなかったので、事業を救うために自分は何もできないのではという気がしてしまい、強い無力感を覚えました。もっと力をつけて、事業や経営全体に関われるようになりたいという想いが芽生え、戦略ファームに転職して2年半ほど“修行”をしました。
そして、「よし、実際に事業をやってみよう」となったときに、これからどんどん伸びていく成長分野で挑戦したいという想いと、20代は学ばせて頂いたことが多かったので30代は社会的意義ある事業を通じて社会へ還元していきたいという想いがあって、情報プラットフォームベンチャーに入社しました。

直面した「経営者ニワタマ問題」

転職をした会社では、事業開発として様々な仕事をしていましたが程なく1つの壁にぶつかりました。コンサル出身としてのスキルセットを評価して頂いた一方で、社内での仕事の仕方も、事業家というよりは社内コンサル的な立場で携わることが多かったんです。もっと直接的に経営に携わりたいと思う気持ちが高まると共に、このままでは経営者という一段上の立場にいけないんじゃないかと感じ始めました。
その時に、以前セミナーで聞いた話を思い出しました。経営は、基本的に経営経験がある人に任せることが多く、任された経験と実績により、さらに大きな経営を任されて…と循環していくので、最初の一歩が非常に難しいという話です。セミナーでは、「鶏が先か卵が先か」という話に例えていらしたのが面白かったので、真似して「経営者ニワタマ問題」と呼ばせてもらいます。「経営経験がない=経営のチャンスが回ってこない」というニワタマです。
この問題を乗り越えて経営者の循環に入るために、チャンスをじっと待つ、というのも一つの方法です。ただし、チャンスを掴むには自分でコントロールできない要素、具体的には上司、ポスト、全体の業績やタイミングなどの影響が強く、特に大企業では待っているうちにすぐに40歳、50歳になってしまいます。だから、早く経営者として「打席に立つ」には、事業が生まれる段階に、自ら参画していくしかないんじゃないかと思ったんです。
それと同時に、一発勝負にかけるのではなく、週末起業のように小さく始めて自分が上手くできそうか検証していく方法をとるべきなんじゃないかという考えもありました。

このタイミングで出会ったのが、Innovation Leaders Program(ILP)です。ILPは、創業前の有望なシーズと出会い、事業化に挑戦できるチャンスだということ。また仕事を続けながら参加できると聞いて参加を決めました。

インスタリムとの運命の出会い

そして、満を持して参加したILPで、2ヶ月間事業化を手伝う研究シーズとして出会ったチームがインスタリムでした。独自の技術で低価格高品質の義肢装具を製造し、世界の人に届けようとしている彼らの事業は、社会的意義があると共に事業性もある点がとても魅力的でした。
僕から見た代表の徳島は、「あ、こいつと一緒にやりたい」と思わせてくれるような人でした。この事業に強いパッションを持っていますし、自分の考えに固執しない柔軟性や誠実さがあります。一方で、助けたくなるような隙もあります。後に共同創業したのも、そんな人柄を信頼できたからです。
プログラムのスタート当初は、彼らからすれば全く異分野な人種に対して、どう付き合っていいものか戸惑い、警戒をしていた部分もあったかもしれません。しかし、プログラムを通じてピッチ大会に向けた準備をする中で、共にする時間も増え、事業プランの磨き上げ等でコンサル経験を生かせる場面もあり、徐々にメンバーから信頼されるようになりました。

インスタリムとの再会から共同創業まで

プログラム終了と共に、僕のインスタリムメンバーとしての活動も一回終えました。その後、私も現職のFintechベンチャーに転職しています。

しかし、その後、半年後に徳島から連絡をもらって会うことになりました。、補助金プログラムの選考に落選したこと、あるチームメンバーが事情により抜けたことなどをきっかけに、経営を担う仲間探しをしているとのことでした。
その時の僕は、複数のスタートアップをプロボノのアドバイザーのような立場で支援するスタンスでした。しかし、徳島の話を聞くうちに、世界中のQuality Of Lifeを上げる可能性を秘めた、こんなに素晴らしい技術が、経営を担える仲間が足りないがために上手くいっていないなんて勿体無いという気持ちが強くなり、もっとリスクをとって深く関わることにしました。そして、2018年の4月に徳島と共同創業をしました。徳島はプロダクトや医療機器全般のアイデアや経験、そしてターゲットにしているフィリピンでのネットワークなど僕が持っていないものを持っていました。一方でデザイナー出身の彼が必ずしも得意でない事業計画や資金調達などは僕が補えます。互いに足りないものを補い合える共同創業者となりました。

次の挑戦へ

僕がインスタリムに参画して以降、おかげさまで3つの支援プログラムに採択されました(2017年12月日本貿易機構「日ASEAN新産業創出実証事業」、2018年3月東京財団政策研究所「Sylff Project Grant」、2018年6月東大IPC「第2回東大IPC起業支援プログラム」に採択)。 元々、社会的意義が非常にあるビジネスですし、競合が少ない分野なので、その点では様々な立場の方から応援して頂きやすく、「難しい課題の方が実は簡単」(馬田隆明著「逆説のスタートアップ思考」より)という言葉は本当かも、と思っています。

メーカー時代に感じた事業を生み出せない悔しさから始まったキャリアの変遷ですが、戦略コンサル会社やマザーズ上場ベンチャーを経験する中で、従来の日本の製造業の課題をより客観的に理解することができました。インスタリムのビジネスモデルはその学びを活かしていますので、”新しい日本のものづくり”で、リベンジしていきたいと思っています。

あとがき

梶さんのキャリアを辿っていくと、大手メーカー、戦略ファーム、ベンチャー、起業と、業種も企業規模も多様で、一見紆余曲折をされているようにも見えます。しかしその経緯や想いも一緒に辿ると、その裏側には「日本のものづくり」という一筋の想いがあり、一歩ずつ導かれたように見えてきます。人のキャリアを語る時に、経験をしてきた会社の業種・規模だけでわかることはごく一部で、本質は「何を動機に、何に取り組んできたか」なのだと、教えてくれているように思いました。

同時に私たちの運営する起業家輩出のプログラムが、起業家の一歩を踏み出すことを応援できたことを大変に嬉しく感じました。同じように「経営者ニワタマ問題」を感じている方は、「Innovation Leaders Program」を通じて、創業として最初の経営者の一歩を踏み出してみませんか?
私達は、勇気をもって挑戦をする皆さんを応援しています。

インスタリム株式会社について

3Dプリンティングと機械学習の技術を組み合わせて低価格かつ高品質な義肢装具を製造・販売するスタートアップ。従来の義肢装具は製造に時間がかかる上に高価で、”必要だけれど使用できない人”が世界に数千万人いると言われています。同社は、そのような方々に義肢装具を届ける挑戦をすべく、2018年4月に設立されました。

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同社が開発を進めている義肢装具製品 (同社Webサイトより)

— — Beyond Next Venturesの運営するプログラム — —

◆仕事と並行して、起業家/社内起業家に挑戦する
「Innovation Leaders Program」
http://brave.team/ilp/

◆大学・研究機関からの事業化支援するアクセラレーションプログラム
「BRAVE」
http://brave.team

— — 当社メンバーとの事業化相談 ・キャリア相談 — —

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本記事に関するお問合せは delorean@beyondnextventures.comまで

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