東北大発ロボットハンド技術の事業化に挑む/小野崎悠介

こんにちは、Beyond Next Venturesです。
 私たちは、技術シーズの事業化を支援するアクセラレーターです。

今回は当社の運営する、研究者と共に事業創出を行うプログラムInnovation Leaders Program(通称ILP)の第二期生で、次世代ロボットハンドプロジェクト FingerVisionの事業化に加わっている小野崎さんにお話を伺いました。

元々ロボ領域で起業のチャンスを狙っていた小野崎さん。
 何がきっかけで、豊田通商から今回の事業化に加わる選択をしたのか。
ぜひご覧になってください。

小野崎悠介さん

1984年生、SF好き。東海大学卒、東京農工大学大学院 技術経営研究科修了(途中Stanford Universityへの1年留学)。
 2011年4月 豊田通商株式会社入社。自動車業界のR&D向け提案のプロジェクトリード、その後、自動運転関連の新規事業を担当。2018年9月より東北大学 助教 山口明彦氏の研究から生まれた、FingerVisionの事業化に取り組む。

何かを残したい。きっかけは「しゃべり場」

子供の頃は、電子工作と剣道が好きで、それ以上に仲間とやんちゃするのがもっと好きな自由な子供でした 笑

”自分が将来歩む道”を、考えるきっかけになったのは、高校1年の頃、NHKの討論番組 しゃべり場に参加をしたことでした。「俺の方が絶対いいこと言える」と、勢い勇んで姉と一緒に応募をしたら偶然通ってしまって。

その時に仲良くなったディレクターから、「君、面白いね。ところで、将来はどう生きたい?」という問いを何度も投げかけられました。
 人一倍活動的に過ごしてきたはずなのに、将来は何がしたいのか。これから何のために生きていくのか、その答えがすっと出てこない。

辿り着いたのが、「社会を良くするモノを、自分の手で作りたい」という答えでした。そのためには知らないといけないことも多いし、圧倒的に時間が足りないと感じました。

予備校生になって、モノづくり領域への興味が高まりましたが、まだ当時は、ハードウェア系のスタートアップはほとんどありません。
そんな中で、ネットベンチャーのGaiaxと知り合いました。当時は10名弱の創業期で、学生ながら週5をオフィスで過ごして、始めて触れるスタートアップの環境には大きく影響を受けました。
 大学の後半に入ると、反動でリニア関連の研究漬けで過ごしました。

大学時代に、事業と研究を両方見ることもできて、どちらも面白い。両方学びたいと思い、大学院は社会人向けの技術経営(MOT)を選びました。

日中はロボット工学の実験漬け、夜は経営を学んでと、月曜の朝から日曜の夜まで大学院にいて、そこに住んでいるような日々でした 笑

スタンフォード大学で感じた熱気

大学院時代に幸運だったことは、研究室の教授のつながりで、スタンフォードの大学院へ留学をすることができたことです。この経験から進路が徐々に事業志向へ移り変わっていきます。

大学院では、インド・中国など、アジア系学生の研究へのストイックさに圧倒されました。これに勝ち抜くのは容易ではない。それより事業づくりで一番を目指した方がいいのではないかと感じ始めます。

同時に日々がスタートアップに満ち溢れていることも印象的でした。
大学には、定期的に話題の起業家が訪れます。Evernoteの創業者や、Siriの技術メンバーなど、講演と触れ合いの場が多くありました。
特に「面白い音声認識の技術だな」と思ったSiriが、その後半年ほどでAppleに買収を受けたことは、スピードも含めて刺激的でした。

大学の日々も同様で、寮に併設されたカフェでは、日々ビジネスプランが飛び交い、盛り上がってるなと思うと、翌週には仲間内の1室にサーバを持ち込んでサービス作りが始まる。
当たり前に事業が立ち上がる環境に身を置いて、自分も愛着のあるハードウェアで事業づくりができないかという気持ちが強くなります。

留学の最後の次期は、勉強を兼ねて現地のロボットベンチャーでのインターンをしたのですが、「ロボット分野で事業を立ち上げるなら、技術要素が揃っている日本」と確信できたことも留学の大きな収穫でした。

FingerVisionとの出会い

日本に戻りましたが、まだ自分には確たるアイディアを持っていません。
とは言え、メーカーに入ると新事業を立ち上げる立場になるのには時間がかかりすぎてしまう。そう考え、メーカーと連携して新領域の事業づくりができる豊田通商へ入社を決めました。
 
入社後は、トヨタ自動車関連のR&D向け提案を担当し、海外の半導体メーカーと連携しながら、製品研究を推進する仕事をしました。
その後も、新規事業部門で自動運転技術を担当しと、社内ではユニークな仕事を担当させてもらったと感謝をしています。
ただ一点、「もっと自分自身で動かしたい」という気持ちだけは燻っていました。
 
そんな中、旧友の誘いで、オフタイムで何か事業をつくろうという話で盛り上がります。
 「何やる?」と、半年位議論を重ね、“騒がしいオフィスにいても、仕事に集中できるソリューション”として、アイウェア型の聴覚コントロールデバイスを開発 。最終的に、自分は友人として応援という形になりました。この事業は、現在freecleというスタートアップとして活躍をしています。
 
 目の前で、1つ事業が生まれて、仲間が走り出した。
 このことで、自分も何かやりたいという気持ちが更に高まります。
 
 そんな時に偶然、「事業化したい研究者と出会えるプログラムがあるよ」と、友人から紹介されたのが、Beyond Next Venturesの事業創出プログラム ILPでした。研究者とのマッチングイベントで、FingerVisionのプレゼンを最初に見て「おっ、ロボじゃん。それも新しい」と感じました。

タイミング・シーズ・気持ちの全てが揃った

現物を見たい!と思い、同じチームの応援に決まった仲間と共に、週末に仙台へ直行。大学の研究室でデモを見て、「これ、面白い」という気持ちは更に高まりました。
 
 時流としては、2013年に協働ロボットの規制緩和があり、まさにこれから多様な製造領域で活用可能なロボットが必要とされてくる状況。
一方で、既存のロボット製品では、小ロット製造・多品種なパーツを取り扱うラインや、短期間で組み変わるラインでは、十分に対応しきれていない現実がある。
そんな中で画像認識を活用し、事前の機械学習不要で多品種なものを取り扱えるFingerVisionの技術には、大きな可能性を感じました。

ILPの期間を通じて、市場を調査し、徐々に事業モデルが明確になっていきました。事業プラン最終発表会の数日前には、「自分の手で実現したい」と感じていました。

本格的な事業化を目指して

幸いなことに、事業の立ち上げに加わりたいという想いを、一緒に持ってくれた仲間もいます。一緒にILPに参加をした仲間も、仕事のオフタイムを使って事業の準備を進めてくれています。彼は戦略ファームに勤めていて、戦略作りをリードしてくれています。

私自身は、この技術が世に出ることに全力をかけるため、9月から自分も会社を離れて、FingerVisionの事業化に向けて全力を傾けていくことにしました。

不安もゼロではありませんが、期待をしてくれている顧客候補のメーカーもおり、この注目を現実に変えていく楽しみの方が、今は勝っています。

足元では、補助金のプロジェクトに応募を進めながら、研究開発とともに来年多くの顧客と実証実験実施に向けて着実にプロジェクトを進めています。

成功に向けて、一つ知恵を借りたいのは、実用製造ラインで通用するレベルの、もう1–2歩の個別技術の磨き上げです。
 今、東北大学の研究チームとしての採用を行っておりますので、もしご興味・ご知見のある方、ぜひ力を貸してください。

まだ、具体的な進捗のお話は多くは語れませんが、1年後、このMediumの記事で事業の進捗を皆さんにお届けできることを楽しみにしてます!
ぜひ応援してください。

<研究員募集のお知らせ>

FingerVisionプロジェクトでは、東北大学の研究員として下記職種の募集を行っています。募集内容は、下記リンクよりご覧になって下さい。

・ソフトロボティクスとセンサー製造
 ・機械設計(グリッパー等)
 ・コンピュータビジョン
 ・ロボット操作(変形可能なオブジェクト操作)
 ・産業用ロボットシステムの統合
 ・ロボット学習(機械学習)
募集の詳細はこちらのページからご覧いただけます。
※ご質問等は、こちらのフォームからお問い合わせも受け付けています。

FingerVisionの発明者 山口明彦助教

山口助教は、京都大学を卒業後、奈良先端科学技術大学院大学(修士、博士)を修了し、奈良先端大で特任助教、カーネギーメロン大学のポストドクターロボット研究所 客員研究員の経験を有しています。

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あとがき

自分の好きな気持ちを優先して、まずは行動することを大事にするところが小野崎さんの魅力です。記事には書かれていないストーリーにも、そんなところが出ていました。
今回の勇気のある選択を、Beyond Next Ventures一同応援しています!

本記事に関するお問合せは delorean@beyondnextventures.comまで

記事作成日:2018.12.10 取材/編集:heron