インフォテリアさんが以前行った株主総会の議決権行使の実証実験について、ホワイトペーパーを出していたようなので、昼休みに読んでこんなツイートをぼそっとしたら、予想以上の反応があってビックリしたダオカです。
ブロックチェーン技術の応用について自分が思っている以上に高い関心があるんだなとこのツイートの反応から肌で感じたので、株主総会の議決権行使(投票)をNEM(≒mijin)の機能を使うとどのように実現できるかその肝の部分を簡単に解説しようと思います。
この記事を読んだ後に改めて、インフォテリアさんの議決権行使のホワイトペーパーを読むと理解がさらに進むのではないかと思います。
議決権行使の特徴
株主総会の議決権行使(投票)には以下の特徴があります。
- 投票資格があるのは株主のみ
- 1人あたりの投票の重さは保有している株数によって異なる
- 投票する議案の数は大抵複数になる
- 議決権行使を他の株主に委任することも可能 (インフォテリアさんの実証実験ではここは対象にしなかった)
NEMのNano Walletには投票モジュールがあるのですが、投票モジュールではPOI投票(アカウントの重要度に応じた投票)か、ホワイトリスト投票(指定したアドレスのみが投票可能)しかなく、株主総会の議決権行使には利用できません。
しかし、NEMのモザイクを応用すると株主総会の議決権行使に応用することができます。
NEMのモザイクとは
NEMのモザイクを端的に言うとトークンです。
EthereumのICOに参加したことがある人は、ETHを特定のアドレスに送金するとICOの主体が発行するトークンを貰えたと思いますが、NEMでは手数料さえ払えば、Nano Wallet上で誰でも簡単にモザイク(トークン)を発行することができます。下の図はNano Walletのモザイク作成画面です。
モザイクと議決権行使
議決権行使にモザイクを活用するには以下の様に行います。
事前準備
- 議案毎にモザイクを作成する
- 議案毎に賛成用の投票アドレス、反対用の投票アドレスを作成する
- 保有する株数に応じて、株主のWalletのアドレスに投票用モザイクを送信する
投票
- 株主は指定した期間内に投票用のモザイクを、議案毎に賛成または反対のアドレスに送信する
開票
- 所定の期間終了後に、それぞれの議案の賛成・反対のアドレスに送付されたモザイクの量を集計する
委任投票
- 議決権を別な株主に委任したい場合は、委任したい株主のアドレスに投票用のモザイクを送信すればよいです。
実際には、投票や集計のインターフェースを用意するなどやらないといけないことがありますが、その部分もNEMのAPIを活用することで比較的少ない工数でいけると思います。
NEMのモザイクを活用するメリット
議決権行使をはじめ、投票にNEMのモザイクを活用すると以下のメリットがあると考えられます。
- 投票の主催者でも結果を改ざんすることはできない
- 投票結果を第三者でも比較的簡単に照合することができる
- ノードが分散化されているためダウンタイムがない
- 複数の投票用のモザイク発行をNano Wallet上から簡単に行える
- 投票の肝となる部分を比較的低コストで利用することができる
できると使えるは違う
さきのツイートでも、最後にぼそっと言っているのですが、株式の議決権行使をEthereumでも組むことはできます。もっと言うとおそらく、NEMでブロックチェーンでできることは、だいたいEthereumでもできます。
しかし、これをEthereumで行おうとすると、投票コントラクトを一から組む必要があり、さらに投票コントラクトにバグがないかテストを十分に行う必要があります。
一方でNEMのモザイクは、モジュール化されNanoWallet上から簡単に発行・送付することができます。また、NEMのAPIを介して行う事もできるため、肝となる部分はほとんどプログラムせずに利用することができ、開発者はインターフェースの部分の開発に注力できるので、エンジニア視点から言うとかなりありがたいです。
一方で、NEMのブロックチェーンではできないけど、Ethereumではできることもあるので、ここは使い分けだと思います。
最後に
インフォテリアさんの議決権行使実証実験のホワイトペーパーは、投票とブロックチェーンの親和性・可能性の高さがわかりやすくまとめられていました。特にNEMのプライベートチェーン版のmijinが採用されたことにより、NEMのモザイクの有用性も示されました。
このようにユースケースが積み重ねられることによって、NEM・mijinをはじめとしたブロックチェーンの可能性・有用性が示されるのはすばらしい事だと思います。
最後に改めてインフォテリアさんの議決権行使実証実験のホワイトペーパーのリンク(ツイート)を載せておきます。改めて読んで、可能性や課題をより深く感じて頂ければ幸いです。