日本アニメ業界の救世主 違法ダウンロードを7割減少させたCrunchyroll(クランチロール)のKun Gao(クン・ガオ)
日本のアニメは世界中で違法ダウンロードされている。
例えば誰もが一度は耳にしたことのあるガンダム。1話あたりなんと800万回も違法ダウンロードされている。
この数字はyoutubeのように、ネット上でパスワードが必要ないサイトに限定した数字であるため、実際にはさらに多くの違法ダウンロードがされている。
この大きな問題を、”ライセンスのある日本アニメを海外に同日配信する”という合法の新しいビジネスモデルで現在解決しようとしているのが、クランチロール社であり、その創業者がクン・ガオである。
同社は2012年に有料会員数が10万人を突破。2014年には40万人を超えた。月の会員収入で額にして1億円以上の売上となっている。
しかし、驚くことにクン氏が2006年に同社を立ち上げた当初は、アニメ投稿サイトであり、そこに投稿される外国語字幕付きのアニメは違法なものであった。
そのような同社がいまでは違法ダウンロードを7割も減らし、日本アニメ界の救世主となろうとしている背景にはどのようなクン氏の想い、そして会社としての変化があったのだろうか。
おもしろいウェブサイトを追及し続ける中での起業
クン氏は中国に生まれたが、弱冠9歳にして家族とともにアメリカに移住した。
その後大学はUCバークレイで電子工学を専攻し、コンピュータサイエンスや数学の学位を取る等コンピュータやウェブに興味があったこともあり、“Hot or Not”という人気企業でエンジニアとして活躍。
その後2005年自らソーシャルマップのFrapprを立ち上げるも、1年足らずでSlide社にそれを売却。
そして2006年、アニメが大好きな友人2人とともにクランチロール設立。
クン氏は研究からエンジニア、起業まで幅広い経験を積んでいるが、一貫しておもしろいウェブサイトを作ることに注力していた。
理想と現実のギャップの中で迎えた転換期2009年
当初クン氏は「合法配信の新しいビジネスを創造します」と言いながらも、違法動画で利益を上げている状態であった。
利益は出ているが自分の想いとはかけ離れている、そんな理想と現実のギャップに悩まされるなか、2009年日本法人を設立した。
これによる新たなビジネスモデルの創造がのちにクランチロールを日本アニメ界の救世主にすることになる。
この年から、全動画をライセンスして同日配信(サイマルキャスト)するようになりました。これは、日本でアニメが放送されてから30分後にはもうクランチロールで字幕付きの動画を配信し、世界中の人に見てもらおうというビジネスです。最初はテレビ東京や集英社と契約して「NARUTO-ナルト-」などのジャンプ系アニメを配信させてもらいました。なぜ弊社とビジネスをしたかというと、当時は大きな違法ファイル問題があったからです。これは今もありますが、当時はもっと大きかったのです。
引用:GIGAZINE
違法ダウンロード7割減。同日配信の先駆者に
これまでのビジネスモデルでも順調だったにも関わらず、「合法アニメで新ビジネスを創造したい」という想いで、日本支社設立から多くのアニメ会社との提携をし、同日配信という全く新しいビジネスモデルにした。
その結果、同日配信の先駆者となり、違法ダウンロードは激減、一部のアニメに関しては7割以上も減少するという快挙を成し遂げた。
クランチロールの収益モデルは2つです。まず1つは、同日配信を見たい人が月額7ドル(約580円)支払って、高画質で見放題というプランです。そしてもう1つは広告モデルです。クランチロールでは、配信開始から1週間は有料会員しか動画を見られませんが、それ以上経つと無料で見ることができるようになります。ただし、その動画には広告が入ります。
引用:GIGAZINE
自分の信念を貫いたことによる貢献と成功
クン氏の偉大さは“自分の信念を貫き続ける”ことだ。
たとえ事業が順調でも「合法配信の新しいビジネスを創造する」という想いに反していればリスクを負っても方向転換する。
そのように、貢献したいという強い想いがあったからこそ、違法ダウンロードを7割減少させるという偉業を成し遂げることができた。
強い信念のもと、現在はアジアやヨーロッパにも事業展開し始めているクン氏とクランチロールの今後に目が離せない。