南アフリカのNaspersという企業を知っているだろうか?1915年に日刊紙の発行会社として創業したこの会社は、ベッカーがCEOに就任する1997年までアフリカの中の大きなメディア企業にすぎなかった。しかし、ベッカーが次々と世界各地のテクノロジー企業に投資をし、中国の巨大IT企業テンセントを見出すことに成功したナスパーズの時価総額は、当時の12億ドルから、2015年には660億ドルという驚異的な成長を遂げ、アメリカと中国を除いた国の中で最も大きなインターネット企業となったのである。
Naspersへ至る道のり
1952年、南アフリカのハイデルベルクで生まれた。彼は、南アフリカの名門大学であるステレンボッシュ大学とウィッツ大学で法学や文学の学位を取った後、広告代理店で働き、マーケティングについて学んだ。そして、1984年には、アメリカのコロンビア大学でMBAを取得する。
ビジネススクールでの研究をベースに、仲間と共に南アフリカで初の有料テレビ番組配信サービスの会社であるM-Netを起こす。最終的にM-Netはアフリカ48か国にまでサービスを広げることに成功したのである。
そして、南アフリカの通信会社MTNの取締役を経て、1997年、M-Netの筆頭株主であったNaspersのCEOに招聘される。これは、ベッカーが45歳のときであった。
参考:Koos Bekker, City of Cape Town
テンセントを見出す
CEOに就任したベッカーは、M-Netで得た利益を、世界中のテクノロジー企業に投資し始めた。だがその「戦績」は負け続きだった。アフリカでは複数のネットショッピング企業がつぶれ、中国ではあるインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)に投資して8000万ドルの損失を被った。
ベッカー、そしてNaspersの成功を決定づけることになったテンセントに株式の半分を取得するため3200万ドル投資したのは2001年のことである。
1998年に設立されたテンセント・ホールディングスは、中国インターネットサービス大手として、インスタントメッセンジャー、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、ウェブポータル、eコマース(電子商取引)、オンラインゲームなど様々なサービスを提供しています。
同社の2014年第1四半期の決算は過去最高となり、現在まさに波に乗っているインターネット企業と言えるでしょう。
引用: 【徹底解析】中国IT企業「テンセント」の最強ビジネスモデルーー「WeChat」が世界のインフラアプリと化す未来
テンセントが2015年の4月には時価総額2000億ドルを超える企業へと成長したことに伴い、34%のテンセント株を持っていたNaspersも世界的なインターネット企業へと成長することとなった。
ロシア最大のインターネット企業への投資
テンセントへの投資の成功ばかりが目立っているが、ベッカーの功績はそれだけではない。
ロシアのインターネット関連企業、Mail.ru(メール・ドット・ルー)への投資も大当たりした。ナスパースは2007年にメール・ドット・ルーの株式の30%を1億6500万ドルで購入したが、現在その価値は16億ドルに膨らんでいる。しかもこの数字は、ウクライナ危機で株価がほぼ3分の1に落ち込んでから算出したものだ。
中国で8000万ドルの損失を出していたにも関わらず、なぜ彼は創業間もなく無名のテンセントに投資する決断ができたのだろうか。テンセントで成功してもなお、なぜインドや中国、アフリカ、東ヨーロッパを中心とする世界中のテクノロジー企業に対して果敢に投資をしてこれたのだろうか。
最後に紹介する彼の言葉は、私たちに新しい分野に挑戦することの大切さを教えてくれる。
「我々は、誰よりも多く失敗を経験してきた。我々は、速く安く失敗しようとすることを大事にしている。もちろん、時には、高く失敗してしまうこともある。しかし、早くマーケットに入り込んでいることができていれば、その失敗から他の誰よりも多くのことを学ぶことができるのである。」
参考:Naspers Targets LatAm, Asia, East Europe Online Investments