あの黒い空間に思いを馳せる

Tomoki Motohashi
Sep 1, 2018 · 7 min read
港町ヴィーゴで見かけた触手に座るオッサン。そういえばガリシア風タコって名物料理は日本のスペインレストランでもわりと見かける。

馴染みのない場所を散策するのは楽しい。交差点でチラと見えた、アレは何だろう、と、脇道へ逸れ、結局、何だ、大したものではなくとも、目標を達成したような充実感に満たされる。それは海外ともなると、もう二度と見る機会は無いかもしれないというプレッシャーのようなものもあり、余計に気になってしようがない。しかし時間も体力も限られているし、一人でもないと好き勝手振る舞えない。なので早朝一人ホテルを抜け出して走るように散策することも少なくはない。

Wander

まあそんな感じなので、Oculus Goで発売されたWanderと言うアプリを見つけたときは思わず「ウッヒョーッ!」と興奮したものだ。このアプリ、単にGoogleストリートビューをVRヘッドセットで見られるという、それだけのものなのだが、ブラウザでストリートビューをみるのとは臨場感が全く違うのだ。特に一度散策した所だと、記憶の補完も効いてか、更にのめり込まされる。あの気になる脇道もチェックし放題だ!

高評価も頷ける素晴らしいアプリ。Gear VRではViso Placesと言う名で同じようなのが売られていたが、Go向けに最適化されたのがコレ。ちなみにGo発売当初は一瞬だけViso PlacesがGoのストアで売られてたとか。

しかし所詮はストリートビュー。視点は主に車道だし、どこもかしこも歩き回れるとも限らない。ちょっとあの公園を通過したいのだが、、と思っても車道沿いに迂回することになる。とはいえ、大した問題では無い。「よし、今回はあの辺、重点的に見てこよう」と意気込んで今日もヘッドセットを被るのだ。

散策すべき場所、、と、記憶をたどっていくと、そういえば一箇所どうしても気になる場所があったことを思い出す。

Parque del Pasatiempo

10年近く前、私はスペインのガリシア州、アコルーニャ地方を、友人の助けのもと観光していた。ガリシア州、スペインの北西に位置したこの場所は観光地としてはあまりメジャーではなく、しかしサンティアゴデコンポステーラ、巡礼の道の終着地、となると聞いたことがある人もいるかもしれない。スペインにしては雨が多く、私の行った冬は文字通り毎日雨が降ったり止んだりしていた。ちなみにどうでもいいことだが何年か前に太陽の所有権を主張したオバサンがいたがアレはこの地方の人だったりする。

ともかくアコルーニャから世界遺産の城壁のあるルーゴへ向かう途中、我々はベタンソスという町の Parque del Pasatiempo に立ち寄った。

Parque del Pasatiempo。背後の道が例の「公園をぶち抜いた道」である。見えづらいが歩道橋も左上にうっすら写っている。公園名の読みはパルケデルパサティエンポ。訳すと「娯楽の公園」。ガリシア地方ではスペイン語の他、ガリシア語も使用されるため、Parque do Pasotempoの表記も見られる。

1900年頃に作られた、この公園はエキゾチックなオブジェや装飾、繁殖した藻や苔、割れた温室らしき窓が異様な光景を作り出していた。まさにシュールレアリズムを感じさせる。実際、Wikipediaによれば1940年に一度廃墟となり、公園のど真ん中をぶち抜く形で道が作られたりと散々な扱いを受けていたことがうかがえる。現在のこの姿はそこから修復作業が行われた結果だが、公園をぶち抜いた道は無くなることなく、仕方なしと作られた2つの公園をつなぐ歩道橋は、さらなる味わいを作り出している。

割れた窓ガラスこれはずっと前からそうなのだろうか、、

この公園の奥は洞窟となっている。照明はなく、薄暗い。天井の穴から差し込む光だけが内部を照らしている。足場もまあ完全に平らとは言えない石造り、所々排水のためか通路の脇に穴のような物も空いていたり、人工的につけられたトゲのようなものが天井にあったりと、これは色々大丈夫なのか、とワクワクさせるつくりだ。ここに連れて来てくれた友人は子供の頃学校で来たことがあると言っていたのだが、遊び盛りの子供たちがこんな所連れて来られたら一人二人いなくなっても不思議ではない。この洞窟エリアの左奥には細い、あまりに細く意図的に開けられたのか、自然にあった穴に無理やり階段のせたのが疑問を投げかける、登り階段が2つあり、コレを登ると公園を象徴するライオン像の横、または背後にたどり着くことができる。公園を一望できるこの場所で公園の探索は終了というワケだ。

謎の暗い空間

この登り階段の近くに、もう一つ下りの道があることに私は気づいた。しかしただでさえ薄暗いこの洞窟、登り階段から差し込む光をもってもこの暗い下り道の奥は完全な闇である。

『正直めっちゃ気になる。』

デジカメのフラッシュをたいてようやくそこに階段があったことをが判った。今になって気づいたが、よく見ると通路は右へと曲がっているようだ。

おそらく誰もが携帯で照らせばいいんじゃ無いか? と思うこのシチュエーション、そこは残念ながらの10年前。我々の携帯は依然ガラケー時代なのだ。(そういえばインドで売っていたNokiaのガラケーは物理ボタン一押しでフラッシュライトが付いたものだが、インド以外でそんな機能見たことは無い)。フラッシュライトこそないが、当時、白い画面を表示し、ディスプレイの明かりで照らすハックがあった。もちろんやってみた。が、その光量はたかがしれており、近くの壁を少し照らす以上の役には立たなかった。その上、今朝も降ったであろう雨と苔とでいかにも滑りやすそうな地面、、いや正直言うと暗くてそれすらよく見えない、ただ黒い空間。さすがに世界遺産の城壁を見ずにケガしてホテルに戻るのはごめんだと、デジカメで写真を撮りつつその場をあとにしたのである。

そして10年後

そして10年の時が流れ、VRデバイスでアコルーニャの街を散策していた私は、ふと、またあの暗い空間に思いを馳せるのである。しかしストリートビューは公園の前までしか連れてってはくれない。狂ったように真夜中に起きて、画像や動画の検索もしたが、未だ正確な所はわからない。一つ、私の記憶にない通路を散策している動画を見つけ、もしかするとコレこそが例の暗い空間の先だったのかもしれないとも考えた。そしてもしかするとその先は池エリアの側面のあたりに通じているのではと仮説も立てた。ただその動画も結局のところ暗すぎて、よく分からないのである。

参考

Parque del Pasatiempo の解説動画。

Parque del Pasatiempo の状態が日に日に悪化していると言う記事。

Parque del Pasatiempo をサポートしよう、というキャンペーン。

Tomoki Motohashi

Written by

Takoashi Gamesの中の人なので稀にそういうことつぶやくかもしれませんよ

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