ボードゲーム「z3r0d4y」制作の道のり

以下はz3r0d4yの制作経緯の中で生まれは消え、変化していったゲームシステムのアイディアを記録もかねて記したものである。

私の4作目のとなる z3r0d4y —ゼロデイ — は近未来、ディストピアをテーマとしたボードゲームでゲームマーケット春をターゲットに現在印刷中だ。ちなみに一部のコンポーネントが今、横浜の税関に引っかかっている。


きっかけ

始まりは2014年春頃、友人に攻殻機動隊の漫画1~2巻を借りたことだった。電脳化、義体化やネットワークを通じた対象の乗っ取りという世界観に感銘を受け、何かこの世界観を使ったゲームは作れないかとふんわりと考え始めた。特に対象の乗っ取り、これはゲームのアイディアとして面白そうだと。

最初のアイディア

「街行く人々、彼らは原則、機械的に一方行へと進んで行く。タイミングよく彼らを乗っ取り、目的を達成せよ。人々が機械的に進むことを利用し、数手先の移動先を見極め、乗っ取りを行う。場合によっては人々を本来とは違う方向へ動かし利用せよ。」

これが最も初期のアイディアだ。目的、というのはこの時はまだ厳密には定まっていない。これをモジューラボード — 小さなボードを組み合わせて一つのマップを形成する 。各小さなボードには個別の特殊能力がアサインされる— を使って、上下左右から縦横無尽に進む人々、これを利用するプレイヤーという構図を考えた。

ポーンの向き問題

さて、一見簡単そうに思えたこの構図だが、少し考えてみるといくつか面倒なことに気付く。まず、通常の駒、以下ポーン、というものには向きがない。だから一方向に進むといっても、途中で止まるとどっち向きに進んでいたかわからなくなるという問題だ。

補足しておくと、このゲームにおけるポーンは、特定のプレイヤーに属するのではなく、すべてプレイヤー間で共有されるリソースというのを想定していた。ゲーム中プレイヤーはこのリソースを間借りすることでアクションを行っていくことになる。

ポーンを色分けし、対応する方向に移動するようにする?では色をどうやって覚える?モジューラボードの各辺に色を持たせるというのもできるが、その場合、モジューラボードに向きを持たせることになる(向きまでランダムな方が私としては美しいと思うのだが。)モジューラボードを組み合わせた後で色の目印を置くという手も、まあ、なくはない。

ポーン自身に向きを持たせるというアイディアもある。しかし、何らかの拍子に触って向きが分からなくなるとか、そもそも向きを気にしながら慎重に駒を動かすとかストレスが多い。

ストレスのないボードへ?

うーむ、どうにもしっくりこない。とてもマップ上に複数のポーンが入り乱れ、ストレスなく動き回っているイメージがつかめないのだ。加えて、プレイヤーがこのポーンをコントロールしてますよ、と目印ががここにはいりこむと考えるとさらに気が滅入る。

このストレスに対するアイディアの一つは、ちょうど高速沿いのパン屋にコロッケパンを買いに行った時に見つかった。各モジューラを以下の図のように、大きな交差点の横断歩道のごとく#型にし、横断歩道を一方通行にするのだ。(この画像は本当にその当時作ったプロトタイプである。)

モジューラボードのプロトタイプ。ボード中央にはそのマスで行える特殊アクションが記述できる。

道を一方通行にすることでポーンの移動方向の混乱を防ぐ。これにより移動方向の可能性を4方向から2方向に絞り込めた。混乱も半分。視覚的にも大分マシだろう。そして何よりこのデザインはどの方向に回転させてもお互いが繋がるという性質を持っている!

しかしまだ十分ではない。縦横無尽に移動する人々をどのように機械的に制御するのか、という問題が残っている。

ポーンの機械的制御

例えばボード上に、仮に9つのポーンが置かれているとして、各ターンの終了時またはラウンドの終了時に1マス動かすとする。この際…

  1. 9つのうち5つ目か6つ目ぐらいでどのポーンを動かしたか記憶できなくなる可能性。
  2. すべての駒を動かすことによる手間的な消費時間。(面倒臭すぎないだろうか。)

9個全てを一度に動かすというのは初めから無理だろうと却下した。これは1にも2にも引っかかる。まったく上手くいく気がしない。一度に動かしてうまくいかないのであれば、分散して動かす他ない。ではこうしたらどうか。

  1. プレイヤーはテーブルの四隅に座り、色を一色担当する。
  2. プレイヤーは自分の手番に自分の色のポーンを対面へと動かす。

プレイヤーが一色を担当することにより処理を分散。プレイヤーとしては自分の色のポーンを機械的に奥へと動かせばいいのだからそれほどつらくはないだろう、と。

しかし「それほどつらくない」とは、どれほどなのだろうか?これは実際に駒を使って自分で駒を動かして確かめる他ない。

モジューラボードを並べてみた図。中央のタイルには「ゲームの目的」につながる、何か特別な効果を付ける予定だった。

浮かび上がる数々の問題

結果は、一言でいうなら、ごちゃごちゃになった。実際に一人4役で駒だけ動かしてみたが、こんなにもごちゃごちゃになるとは思わなかった。

  1. 各プレイヤーに3つポーンをアサインし、ボードの端から対面へと順々に動かしていく。するとボード上に、一度に12個のポーンが置かれるわけだが、その段階ですでにごちゃごちゃ。そして対面の端へ到達した際、ボードからあふれたポーンを自分側の端に再配置するわけだけだが、では、どこの端に配置したモノかと考えるが苦痛だ。ちなみにこの一点については、わかりやすくと設置した一方通行の仕組みが、俯瞰性を下げているだけで、ただの四角いタイルだったらそんなに酷くなかったのかもな、と思えなくもない。
  2. ポーンの移動先を読んで、というのも正直「うっとおしい」だけで決して面白くはない。だいたい、数手先にこうなるよってのはボード自体が組み変わらない限り大きくは変わりえない(実際には若干のプレイヤー間のインタラクションがあるにしても)。ということはこのポーンが動くという仕組みによって大体決まっていることを分かりずらく表現しているにすぎず、根本的にクソな体験をプレイヤーに強いるだけだ。これはダメだ。1.に同じく、ただの四角タイルだったら案外悪くなかったかもしれない。
  3. 前提として4プレイヤーゲームで試してみたが、プレイヤー人数に関わらずマップのサイズが固定ってのはどうなのかと。つまり、プレイヤーごとのポーン数が同じなのであればプレイヤー数が減るたびにポーンの密度が減っていってしまう。プレイヤー数に応じてポーンの数を調整する?現在のマップデザインでは各辺の「入り口」は3つしかないというのに?
  4. マップ四角いけど3プレイヤーの時どうするの?

あかん。

大幅に簡略化へ

結局、マップとシステムをきれいさっぱり、簡略化した。

  1. 四角だったモジューラボードは六角へ。プレイヤー人数に応じてマップの広さを変える。
  2. もともと動き回る想定だったポーンはボード上に静止させる。各モジューラボードにポーンを一つ置く。ただし、プレイヤーが使用したポーンはラウンドの終了時までボードから取り除かれる。
  3. プレイヤーは隣接するボードのポーンを取り除きながら移動する。

面白み、というか、ユニークさはだいぶなくなってしまったものの、残念ながらというべきか、実質的にやってることはたいして変わっていない。そして何よりストレスなくゲームが進められるようになった。

z3r0d4y最終版の、2プレイヤーゲームのセットアップ。

結局これは一体何をするゲームなのかと

システムを簡略化し、ストレスの無い形としたのはいいものの、結果として元々考えていたユニーク性は失われた。さて問題は、これ以上このゲームを作り続ける意味はあるのだろうか?

もしゲームのシステムがマップだけで完結していたのであればこれ以上の意味はない。中断していたと思う。しかしマップを作っていく中で思いついた「ハッキング」のシステムがどうにも気になっており、もう少し試してみたいという気にさせていた。

ああ、マップのシステムはもう単純だし他のところ複雑にしてもいいだろう、と。

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