総論

初めて書いた作品とのことですが、面白味あふれています。
素晴らしいですねぇ。その証拠に、★も超稼いでいます。
個人的にも非常に好みの話です!!

ただ、三人称の地の文が少々読みにくい部分もあるので、そのあたりが整理されると非常に魅力が増すのではないかと思います。

全体的には、やはり神視点の罠にはまっているので視点がどこにあるのかを気にしながら書くといいのではないかと思います。今回はそのあたりを中心にざっくりと書いています。

また、文章のチェックでは、こちらで紹介しているツールを使ってみるとかなりよくなるのではないでしょうか。



少女は誰も信じていない。

ここの直前までユウトの視点で気分が高揚していたせいか、ここから急に視点が変わって「???」となってしまいました。

何でこの人、教師なんだ?

これは誰が思っているんでしょう?

「ところでユウトさん。約束しましたよね? 魔法には関わらないって」
いや、あれはかなり一方的な感じだった気がするけど。しかしアリサには有無を言わせぬ凄みがあった。
「えっ? いや、それは……その、なんと言いますか。やむにやまない事情が……」
「し・ま・し・た・よ・ね?」
顔が怖いです。
「……すみません」

ここの地の文がまるっきり一人称でさすがに違和感がありました。


アリサは腰のホルスターに収められたハンドガンに手を伸ばす。こっちには本物の弾丸が入っている。今の刹那にこれを防ぐ術はない。
「これで……っ!?」
しかし、そこでアリサの表情が凍り付く。アリサの動きが急に止まった。
両腕にあるのは痺れた感覚。指に力が入らない。引き金が引けない。

ここの視点変更は、さすがにちょっと辛いかなと。
今まで刹那に感情移入していたので「え?」となってしまいました。


もし彼が、彼女が生きていたら、こんな辛気臭い顔をしているレオンをきっと怒るだろう。

助詞「が」が連続してしまって、どっちが主語だかよくわからない文章になっています。

それがレオンの覚悟となる。レオンはメモに書かれた番号に電話を掛けようとボタンを押す。すると、レオンの携帯が鳴った。メモの番号だ。

ここもわかりにくいです。
「ボタンを押す」と携帯が鳴った? メモの番号から電話がかかってきたということですか?……と思って、次のセリフで「ああ、かかってきたのか」となんとなくわかる感じです。
「押し始めたとたん」「押している最中に」等、時間的な様子がわかるといいかもしれません。

しばらくすると、大きめの箱を持って再び現れた。そして、急に近づいてくるとズキッと痺れるような痛みが走った。消毒液?
「っ!」
「自分だって怪我してるくせに……」
「いや、これは……あの……怒ってます?」
「別に」
伊紗那は頬を膨らませ、消毒液を染み込ませたティッシュでユウトの傷口に触れる。

「消毒液?」のところですでにふれているので、最後のセンテンスは「触れていた」という過去形になります。
で、傷口がどこかもわかりませんし、大きめな箱を持ってきて急に近づく……は流れ的に想像しにくかったです。箱を持ってきたら、それを置いて消毒液を出して、ガーゼにしみこませて……という手順が目の前で行われているはずです。すでに用意してきていたなら、わざわざ大きな箱を別に持ってこないでしょうし。
すべての動きを描写する必要ないのですが、想像するのに矛盾すると気になります。

(まだ俺は心配される側なのか)

向こうにも書きましたけど、いいセリフですねぇ~。

見た目が幼女そのものであってもコーヒーを飲むその姿はまるで何年もこうしていると言わんばかりに様になっている。

さすがに読点がないとつらい……。



最初のシーンは、完全にユウトに近い三人称で描かれていて、ここは細かいところ(段落の取り方等)は別にして問題ないと思います。
問題があるとすれば、ユウト爆発しろってことぐらいでしょう(笑)。

吉野ユウトはそんな街に住むごく普通の高校生だ。
とりわけ頭が良いわけではない。何か専門的な知識を持っているわけでもない。ごく普通の高校生。
ユウトと伊紗那は二人で学園に続く道を歩いていた。

細かいところですがこのあたりから、少しずついろいろな違和感が出てきます。
1~2行目ですが、「ユウトは」という主語になるユウト視点です。
カメラはユウトの中にあるので、ユウトの内的情報もでてきます。
しかし、3行目で視点が突然、俯瞰になります。カメラが急にユウトの外に出ているのです。こういう極端な視点変更は読んでいて違和感を抱きます。

吉野ユウトはそんな街に住むごく普通の高校生だ。
とりわけ頭が良いわけではない。何か専門的な知識を持っているわけでもない。ごく普通の高校生。
ユウトは今、伊紗那と二人で学園へ続く道を歩いていた。

みたいな感じに、3行目もユウト視点にしておいた方がカメラワークが自然に流れます。

そんな道中、伊紗那はそぉーっとユウトの横に並び、
「あの……ユウ……? 今度の日曜だけど、もし良かったら――」
「おーいユウト! 伊紗那!」
伊紗那が何か言いかけたところで背後から二人を呼ぶ声が聞こえてきた。

このセンテンスを読点で終了する手法が、たまに出てきます。
しかし、上記は、ちょっと気になります。
台詞を割り込ませ、リアルタイムに進行しているように見せようとしているのだと思いますが、読点で区切る場合は、次の段落とつながるべきだと思っています。
しかし、つなげてみると……

そんな道中、伊紗那はそぉーっとユウトの横に並び、伊紗那が何か言いかけたところで背後から二人を呼ぶ声が聞こえてきた。

……となってしまい、主語と述語の関係がめちゃくちゃになってしまいます。
音読するとわかりますが、読者はひとつながりの文章として読むので、この書き方だと混乱します。
ここはつなげられる文章にした方がいいと思います。

ユウト、伊紗那、冬馬。三人はこの街で出会い、親友になった。お互いに何か共通点があるわけでもなければ、ドラマチックな出会いがあったわけでもない。ただ気が付くと一緒にいる。そんな関係だ。
 今ではユウトにとって二人はとても大切な存在になっていた。

また、ここまでユウト視点の文章なのですが、上の段落ではユウトも含めて三人の名前が挙がっているため、視点がユウトから外れてしまっています(3人について語っている誰かの地の文)。
「そんな関係だ」までで、そこから視点が戻らないならありかなと思ったのですが、最後の「今では」からは、またユウトが主体になっています。

ユウトは、伊紗那、冬馬の二人とこの街で出会い、親友になった。お互いに何か共通点があるわけでもなければ、ドラマチックな出会いがあったわけでもない。ただ気が付くと一緒にいる。そんな関係だ。
 今ではユウトにとって二人はとても大切な存在になっていた。

前後と視点を合わせるなら、このような感じにした方がスムーズになります。

しかし、この後に視点がユウトから外れてしまいます。
そのためのステップとして考えるなら、最後の文章が邪魔になります。
ただ、ここから下は、ちょっと視点が混乱しています。
例として、もしこのあとに伊紗那 視点となるのであればの話をすると、以下のような視点変更のステップを入れるとよいかもしれません。

ユウトは、伊紗那、冬馬の二人とこの街で出会い、親友になった。お互いに何か共通点があるわけでもなければ、ドラマチックな出会いがあったわけでもない。ただ気が付くと一緒にいる。そんな関係だ。
 今ではユウトにとって二人はとても大切な存在になっていた。
だがそれは、伊紗那にとっても同じだった。いや、彼女にとってユウトはそれ以上の存在だった。

上記はあくまで例ですが、これで伊紗那に視点移動できるのではないかなぁと思います。
ただ、視点を変更するときは、あまり心情描写からは行かない方がいいと思いますが(理由は後述)。

それに激しい視点変更は、読者が落ち着きません。
ここから後の地の文だけ、少し抜いてみてみます。

1.伊紗那の表情を見て察した冬馬が唐突に話題を振る。
2.そう言って冬馬は二人にチケットを渡す。
3.伊紗那の顔が静かに赤く染まる。それに気付かずユウトもしばらく考えて言った。
4.伊紗那は下を向きながら、スッとユウトの裾を引いた。
5.それはちょっと反則だと思う。そんな顔されたら断れない。
6.ユウトは溜息交じりに了承した。
7.ボッとすでに赤い頬をさらに赤らめ俯く伊紗那。
8.そう言うと冬馬は伊紗那に近づき耳元で小さく囁く。
  1. 伊紗那か冬馬
  2. 冬馬
  3. 伊紗那か冬馬
  4. 5.からユウト?
  5. ユウト
  6. ユウト
  7. ユウトは赤い頬に気がついてないだろうから、伊紗那か冬馬
  8. 冬馬

こんな感じで、視点が動きまくっています。
三人称神視点が基本だと思いますが、それにしてはユウトに張りついていたので、ここで突然行き来が激しくなると、読みにくくなりますし、読んでいる人間がどのキャラに心をおけばいいのかわからなくなります。
いわゆる、三人称神視点の罠にはまっている気がします。

ユウトくんの完全に視点が固定されている-4-などは安定しているのですが、キャラが多くなったときに少々、ぶれる感じがあるようです。


これは全体に言えることですが、読点が少し足らない感じがします。音読をした時に間を開ける部分には、読点を打った方がいいと思います。

二人は冬馬からもらったチケットで噂のアクアパークに行くのだ。

上記の文を音読すると、普通は「チケットで」で間を置くと思います。

「お待たせユウ。待った?」

上記のセリフでも、「おまたせゆう」という発音ではなく、「おまたせ、ゆう」となると思います。
全体的に音読をするとつながりすぎに感じる部分があります。必ずしも音読通りにする必要もない気がしますが、イメージを伝えたい場合はもう少し調整するといいかもしれません。

いつの間にか背後に伊紗那が立っていた。心配そうに上目遣いでこちらを見ている。

そして、この辺の視点がすごくわかりにくくなっています。
まず上記は、「こちら」と言っているユウト視点で、ここからしばらくはそのままですが……

「うん。……ちょっとは意識してくれてるってことだよね」
たじろぐユウトに伊紗那は小さく呟いた。彼女が今日のために念入りに準備をしてきたことは言うまでもない。

ここで唐突に伊紗那視点にかわり、

あまり腕輪は見せない方がいい。知っている人間が見ると魔法使いだとすぐにバレてしまうからだ。長袖の下に隠していたつもりだったが、少しだけ伊紗那に見えていたようだ。

ここでまた、ユウトにもどります。
他の作品でも書かせていただきましたが、極端な視点変更は読者に違和感を抱かせます。
これはカメラワークに近くて、カメラワークをふりまわすにはかなり技術が必要だと思います。
そのため、スムーズなカメラワークを行うなら、ステップを踏むことをお勧めします。

たとえば、ユウトの心の内側を書いたとします。
伊紗那の心の内側を描くには、ユウトの内側→ユウトの外側→伊紗那の外側→伊紗那の内側のようなステップを踏むのが一番簡単です。
もちろん、これは例なのでこのとおりである必要性はないのですが、カメラをゆっくり動かすとスムーズになります。

ユウトは悲しんだ。(ユウトの内側)
ユウトの瞳から涙がこぼれる。(ユウトの外側)
それを見ていた伊紗那もつられるように泣いた。(伊紗那の外側)
伊紗那の心にも悲しみがひろがっていた。(伊紗那の内側)

上記はあくまで非常に単純な例です。

「フフ。なんでもない。ほら、次行こ。」

最後に句点が衍字。

(だって、初めてくれたプレゼントだもん)

ずっと気になっていたのですが、なぜかっこが半角?

「ご馳走様でした」

あーはいはい! ごちそうさまでした!! 仲がよさそうに弁当とか青春しやがってこんちくしょう!!(笑)

転ぶ最中に見えたのは、先ほどまで自分がいた場所にナイフ……いや鋭利なハサミが通っていた光景だった。

「ハサミが通っていた」というのが今一つよくわかりません。

少し大きめのUSBメモリーのような形

言いたいことはわかるんだけど、これは形も様々なのでちょっと辛い描写だと思います。
まだ使い捨てライターとか、もしくは「○センチぐらいの細長いドングルのようなもの」とかのがいいかもしれませんが、「ドングル」という用語もあまり通用しないかもしれないなぁ。


ここでは代名詞の話を。

「俺は吉――」
「吉野ユウト……さんですよね」
アリサは初対面のはずなのに、ユウトの名前を言い当てた。
ユウトはびっくりして尋ねた。
「……どこかで会ったことがあるのか?」
「いいえ。今日が初めてですよ」
アリサはきっぱりと言った。寝ている間に学生証でも見られたか?
アリサはにっこり笑い、屈んで握手を求めるが、
「いや、握手とか今できないからね!? 早くこの手錠を解いてくれよ」
「それもそうですね。私が敵じゃないと分かってもらえたようだしそろそろ……あれ?」
アリサはポッケに手を入れて鍵を探すが、いつまでたってもでてこない。
「……おい」
「すみません。ここまで運ぶ途中で落としたみたいです」
ユウトの体から再び力が抜ける。

たとえばここですが、文頭に名前が並びすぎていてリズムが悪くなっています。

アリサは、ユウトは、アリサは、アリサは、アリサは、ユウトの……ここは代名詞で代用したり、省略することでもっと読みやすくなります。

「俺は吉――」
「吉野ユウト……さんですよね」
彼女は初対面のはずなのに、名前を言い当てた。
ユウトはびっくりして尋ねた。
「……どこかで会ったことがあるのか?」
「いいえ。今日が初めてですよ」
アリサはきっぱりと言った。寝ている間に学生証でも見られたか?
彼女はにっこり笑い、屈んで握手を求めるが、
「いや、握手とか今できないからね!? 早くこの手錠を解いてくれよ」
「それもそうですね。私が敵じゃないと分かってもらえたようだしそろそろ……あれ?」
アリサはポッケに手を入れて鍵を探すが、いつまでたってもでてこない。
「……おい」
「すみません。ここまで運ぶ途中で落としたみたいです」
ユウトの体から再び力が抜ける。

あと、「ユウトはびっくりして尋ねた。」は過去形ですが、この時点ではまだ訪ねていないので「ユウトはびっくりして尋ねる。」のがいいでしょう。多少、リズムもありますが基本は時系列を気にした文章にするといいと思います。

あと「屈んで握手を求めるが、」から次の地の文にやはりつながらないので読んでいてしっくりこない感じがします。


ここから少し細かいツッコミ(笑)。

刹那が叫んだその時、会議室の中心からまるでステージの奈落から現れるかのように、そいつは姿を現した。

「中心から」「奈落から」と「~から」がかぶっているので読みにくいです。

レヴィルが入っていくのが見えた体育館はここから階段を下りればすぐだ。
「っ!!」
「ちょっと、ユウト!?」
刹那は思わず叫んだ。いきなりユウトは窓を開けて三階から飛び降りたのだ。
ズシッと両足から嫌な音が聞こえた。でもここで音を上げてる場合じゃない。
「ユウト、いきなりどうしたの!?」
刹那は磁力を使って校舎の壁に張り付きながら降りてきた。
「さっき、あの大男が体育館に入っていくのが見えた。レヴィルが危ない!」

ここの流れがちょっとわかりにくいです。
「っ!!」でたぶんユウトが大男を見つけた??


「俺たちが知りえるのはこので街の事のみ。この街の住民じゃないこの娘の出生が分かるか?」

衍字:「こので街」

男のヘルメット地面に叩きつけた。長年警務部隊で鍛え続けた武術は伊達ではない。自分より体の大きい人間との戦い方は心得ていた。

脱字:「ヘルメット地面」

ラリーの足元に何かが転がり落ちた。次の瞬間、眩い光が周囲を飲み込む。

ここはわかりにくかったです。ラリー視点ならば「何かが転がり落ちた」という認識ではなく、たとえば「ある物を転がした」等、それが何かわかっていないとおかしいです。
この書き方だと、「誰かが転がした何かにラリーが気がついた」ということになってしまいます。

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