スケールアウトを終えてみて

Kenichi Sugawara
7 min readNov 2, 2015

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2015年10月31日に株式会社スケールアウトという会社は終わりました。

nanapi,Bitcellar社と合併し、新たにSupership株式会社として生まれ変わったからです。

この記事を書いている2015年11月2日の深夜はまだ寂しい気持ちでいっぱいです。

これは自分たちが決めた事である、と思っているからタイトルも「終えてみて」としました。僕らが正しい決断のもと、合併をしたと思っているからです。

僕は過去にも会社の終わりの瞬間に立ち会った事があります。その時も合併だったので、これから起こる事が不幸な事でも、最悪な事でもない事はわかっています。むしろ正しい判断をして、成長するためなので前回同様にきっと良い結果になると確信しています。

ただ、スケールアウトという会社は無くなりました。日頃は会社の事なんてどうでもよいと思っているし、生きている人間のほうが大事だと思っている僕も、今は法人格としてのスケールアウトの終わりを追悼したいと思っています。それくらいスケールアウトという会社は素晴らしかったし、僕にとっても重要だったから。

2006年12月に産まれたスケールアウトは、当初アドサーバー事業を生業にしていました。と聞いています。僕が参加するのはもっと先だから多くは知りません。

それまでの少数のメディア向けのアドサーバー事業から多くのデマンドサイド(広告主・代理店)への提供が必要となるDSP事業へと大きく路線変更したのは2012年。僕が参加したのは2013年の1月です。

2012年からスケールアウト社長の@yamaz(山崎大輔)からは誘いを頂いていたのですが、その度に断っていました。エンジニア15人の会社でDSP事業の運営をしてうまくいくイメージがなかったからです。

同じくスタートアップの盟友で今はサンフランシスコで活躍している@kiyokbからもスケールアウトの紹介を受けたけど、やっぱり乗り気がせず断りました。

それでも人生は、ある時不思議な事が起こるもので理由はここには書けないけれども何度も断ったスケールアウトに2013年1月に入る事になるのです。

その頃はまだ僕が16人目のメンバーで、肩書きは「取締役 CMO」。

さて、マーケティングするぞと思ったら、まだプロダクトがまともに動かない。売上の責任は僕にあるから何度も山崎さんと喧嘩した。会社に入った事も後悔した。当時の山崎さんはロボットのような人で人間の話はあまりわからない、といった感じだったから気持ちを伝えるという事は全く無意味だった。この時悔しくて何回か泣いたかもしれない。僕にとって今回の転職は起業並みの覚悟だったからです。

ただ、ピンチを諦めずに仕事を続けていればチャンスの時が来ます。
独自路線で続ける方針を切り替えて、KDDIグループのmedibaへのM&Aを決めました。

M&A時に新たにSSPを作ろうとプレゼンし、それが後のアドジェネレーションになります。

M&A前もM&A後もここでは語りきれない程いろいろな事が起こりました。

まさにHARD THINGSは本当にあるんです。

B DASH の渡辺さんには毎日朝の4時まで一緒に資料作成付き合ってもらいました。

この時期、2つの大成功と、いくつもの小さい成功と失敗、そして大失敗がありました。

格好悪いし、今日はスケールアウトの追悼なので2つの大成功だけ書きます。

1つはM&Aの相手とタイミング。

DSPの後発だったスケールアウトはこの時期まだとても小さい存在でした。が、M&Aのオファーを多く頂いた。その中でもKDDIには最初からとても魅力を感じていました。僕が社会人1年目からKDDI関連の仕事を少ししていたとか、MA担当の方が素晴らしかったとか、もちろんそれもあるのですが、やはりデータに大きな魅力を感じました。

この2015年11月に色々なアドテク会社の決算が出ていますが、やはり正しいデータを持っていない会社は成長が出来ていません。今後の成長の見通しも立っていない。当時Ad Fraud(ユーザーではなくbotが見て・クリックする不正広告)などは大きく騒がれていたわけではありませんが、正しいユーザーへ広告を見せる事が年々重要になっています。当たり前といえば当たり前ではありますが、正しい事をするには正しいデータが必要になります。安心出来る広告は僕ら事業者の当然の務めです。

Verizonがaolを買収したのも、僕らからすればKDDIのほうが数年前からその先の未来を見ていた事がわかります。

http://jp.techcrunch.com/2015/05/13/20150512verizon-aol-4-4b/

この時の判断があるからこそ今のスケールアウトは大きく成長が出来ました。

2つ目に仲間が増えた事。

スケールアウトは現在100名を超えています。(実際はもっといます)

成長痛は感じているものの、業績を大きく成長する事が出来たのは元々いたメンバーとそこに違和感なく参加してくれた多くのメンバーのおかげです。

M&A時スケールアウトはまだ赤字でした。その会社を大きく評価して下さり、M&Aまで実行出来たのは買う側の選択眼と度胸でしかない。事業としてはまだ価値の無い会社なので、acqui-hireと呼ばれる人材買収になるわけで、ご担当頂いた方には相当の負担や心配をかけました。

だからこそ僕もスケールアウトの役員として大きく責任を感じたのです。

やめてしまおう。と思った事も何度もありますが、スタートアップに身をおいたからには、日本でもacqui-hireが成功するんだと証明したかったんです。というかプレッシャーがありました。何度も大企業がacqui-hireを失敗すれば、当然スタートアップのM&Aは冷え込む。そうはしたくなかった。

なんとかこの2年で業績もあげて、日本のアドテク企業では売上、利益ともに最大級まで来る事が出来た。やっと買収を間違いではなかったと思って頂けるところまでは来たと思います。

これが僕が知るスケールアウトの2年です。ただ生きて行くのにやっとで、働いてくれるメンバーに最上級のステージを用意したくて、株主に満足をしてもらう。そして何よりクライアントが僕らの全てを続けさせてくれました。

全ての皆様に感謝をしています。本当にありがとうございました。

あと@yamazさん、本当にお疲れ様でした。あの頃とは違い、今では日本のtech系CEOとして本当に素晴らしい存在だと思います。今では僕より会社の社員を気にかける優しく頼れる存在になりましたね。

実は何より記憶に残っているのはM&Aすると社員に発表した時です。そこにいた@yamazの奥様がとてもホッとした表情になったのです。僕は2013年からでしたが奥様は2006年から戦っていたわけです。ものすごく心配な事もあったと思います。スタートアップとはそういうものですから。今でもあの表情が忘れられませんし、M&Aの判断が良かったのだと心底思いました。

これからは、Supershipとしてさらに増えた多くの仲間と共に新たな事にもチャレンジしていきます。僕も今まで4人から始めた会社を100人くらいまで伸ばした経験しかないので、今回の250人の規模は初めてでワクワクします。

スケールアウトという会社は無くなりましたがスケールアウトの魂が今後の僕らを支えてくれると思いますし、僕らもスケールアウトの魂を忘れず、諦めないスタートアップの力を発揮していきたいと思っています。

スケールアウトよ、ありがとうございました!!

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