ハードウェアの制作を支援する環境は日中でどう違うのか(深セン滞在記①)
9月9日から13日にかけてハードウェアで有名な中国・深センを訪問しました。目的としては、
①ハードウェアの制作を支援する環境は日中でどう違うのか
②WechatやAlipayなどの電子決済の影響力の確認
③メッセンジャーサービスのWechatは日本のLINEとどう違うのか
という3点を自分の五感で感じたいと思ったからです。
やはり現地に行くということは、本当に重要なことだと思って、2年前にもアメリカのロサンゼルスとサンフランシスコのシリコンバレーに行ったことがあります。
その時もブログ(文系がシリコンバレーに行った結果www)に纏めたので、今回も様々な気付き・情報をシェアできればと思います。
今回は①の「ハードウェアの制作を支援する環境は日中でどう違うのか」という事について書きたいと思います。
現地では、Facebookグループのニコ技深セン観察会に所属されている伊藤様、村谷様のご好意により現地の華強北にあるメイカースペースであるSEGMakerを訪問させていただきました。突然のご連絡にも関わらず、ご丁寧に説明して下さり、とても助かりました。
訪問した日が日曜だったこともあり、オフィスにはあまり人が居ませんでしたが、現地で働いてらっしゃる村谷様に深セン・華強北における生活、起業事情を伺いました。
【メモ】
①華強北にあるお店は見本市のような意味合いが強く、ほとんどの部品はオンラインで購入。部品が今すぐ欲しいというときに、下の階にあるモジュールショップに訪問する。
②オンラインガンゲームで使えるRinfireというプロダクトがあった。普遍的なニーズというよりも、製作者自らのニーズから発したものだと予測されるコアなものが多い印象。
③華強北では、日本ではなかなか売ってないようなモジュールも手に入るので、様々なモジュールを組み合わせて特殊なハードウェアを作りたいという製作者のニーズを叶えてくれる
他にもTrouble makerやx.factoryというメイカースペースにも訪問させていただきました。
【メモ】
①各スペース様々な特色・強みを持つ。対象としている人も様々。アイデアだけを持つ初心者から、チームでガッツリ作り込みたいところまで。皆がみんなシリコンバレー流の指数関数的な成長を目指しているわけではない。
→今回訪問できなかったHAXは、シリコンバレー流のマーケティング・広報方法を持ち込んで、指数関数的なグロースを目指そうとしているので、対象もそれだけの規模になりうる企業とのこと②一緒に同行したDMM.makeに所属している友達曰く、使用できる機材は日中でも変わらない。むしろDMM.makeのほうが充実している可能性が高いとのこと。
③こういったメイカースペースの強みは、製造・流通におけるコネクション。メンバーはプロトタイプの制作に専念できて、プロトタイプが出来上がると、必要な人々に繋げてくれる。
更には、日本人で深センにハードウェアの組み立て工場を設立・経営されているJENESISの代表藤岡様に、わざわざ貴重なお時間を割いて頂き、直接工場を案内して頂きました。
【メモ】
①中国人の作業員の方にとっては、残業がない職場の方がブラック。なぜなら残業代が出ず、地方に住む家族に仕送りを送れない程の安月給になってしまうため
②日本のハードウェアスタートアップの底上げをしたいという思いで、本来であればもっと優良な顧客が存在するも、リソースを割いて支援している。他の工場に断られてしまい、最後の頼みの綱というケースもあるとのこと。
③深センの一番の強みは、ICTのハードウェアを製造する過程を支える生態系。部品の調達から、基盤などの製造、組立まで全てを担える。世界を探してもこんな場所は他にない。
④中国人は性悪説。契約先の夜逃げなどは当たり前。
⑤組立のテストは、抜き取りではなく全てチェック。さらに1年間修理保証。クオリティーに対するこだわりがすごかった。1年間保障期間を設けているのは、それ以上になると部品の性能が上がっている場合が多く、製品自体の使用する部品を変更したほうが同じ製造コストで、より良い製品が出来るため
⑥中国にはパクリという概念が存在しない。その影響で有名なショールームであるMakerFare@深センも年々参加者が減少しているとのこと。更にクラウドファウンディングのサイトを常にチェックしており、良いものがあれば本家よりも早くリリースするらしい。
⑦ハードウェアにもソフトウェアで言うオープンソースのようなものが存在して、ICTにおける重要な基盤や型などが共有されている場合があるらしい。
初めての中国訪問でしたが、思っていたよりも発展していてびっくりしました。日本がやはり進んでいるだろうという甘い考えは本当に捨て去ったほうがいいと感じました。
深センのハードウェア制作を支える環境の一番の特徴は、製造までの時間的コストの低さだと感じました。優れたハードウェアのアイデアを持つ人々を支えるメイカースペースの人々、そしてそういったスペースに所属する他のメンバー、プロトタイプ完成後プロダクトを量産する組み立て工場、全てが綿密に連携してリリースまで短期間・一直線でいけるという強み。
全ての人々が指数関数的な成長を目指しているわけではなく、多くの人が作りたい、使ってもらいたいという小さな欲求からスタートしていました。
その結果として挑戦する量が多くなって、その中からDJIのような成長する企業が生まれるのではないかと感じました。
次は、決済事情について記述したいと思います。