今さら聞けないD2C(Direct to Consumer)の話 ① マンスタ#2

Kohei Okubo
Code Republic Blog
Published in
8 min readOct 30, 2017

マンデースタートアップ第二回は、Eコマース界隈で最近でてくるD2C(Direct To Consumer)について、調べていたので情報共有します!初回は、D2Cとは何か、そしてD2Cの特徴について記します。

D2C企業の一例

DollarShaveClub(ひげ剃り)がユニリーバに$10Bで買収されたことを記憶されている方も多いかと思います。

F***ing Greatで話題となったyoutubeのプロモーションビデオはなんと2400万再生です!!

そもそもD2Cとは何か?

D2CとはDirect to Consumerの略です。名前の通り、「企画→製造→流通→販売までを”全て自社”で行うビジネスモデル」のことです。いわゆるSPA企業(ニトリやIKEAなどのメーカかつ小売店舗を保有している企業)との違いとしては、販売や販促を主にネットを通じて行っている点です。D2CもSPA同様、従来のメーカーと異なり、小売店に販売を委託するのではなく製造から販売まで全て自社で行うという点が特徴的です。また、SNSやyoutubeを通じたプロモーション、全ての顧客接点(消費者がブランドを目にする全ての地点)においてブランドの世界観をコントロールできる点が特徴的です。
アメリカではDollarShaveClub(2011年創業)を始めとして巨大なD2Cのスタートアップが誕生しています。例えば、メガネを扱っているWarby Parker(2010年創業)は16年時点で$1.2Bの企業価値に、マットレスを扱っているCasper(2013年創業)も$920Mの評価を受けている盛り上がりです。(最下部、詳細記事ご参考)

D2Cは何が凄いのか?

今挙げた3社の他にも、数多くのD2Cサービスが誕生しており、それぞれが、独自のサービスを提供しています。個別のサービス説明は次回以降に回し、今回は、ほぼすべてのD2Cサービスに共通すると思われる特徴について考えたいと思います。(お馴染みの4Pを軸に)

まとめ(詳細後述)
■ 製品・価格 【コスパ◎】
→中間コストの削減・低コストのプロモーション施策により低価格を実現
→製品の絞込により、効果的なユーザーとのコミュニケーションが可能に
■マーケティング 【SNSをフル活用】
→販促費を掛けなくても、製品の拡散が可能
■販売チャネル 【全顧客接点をコントロール】
→ブランドストーリーをしっかり伝えられる→ファンを育成
→顧客データの集積→高速PDCA

まずは、製品と価格についてです。D2C製品の特徴は高品質×低価格であることですでは、なぜ、高品質×低価格が可能となるのか?
これを可能にするのは、企画から販売までのモデルが従来型と異なるためです(下図)。卸売や販売店に中間マージンを抜かれず、実店舗を持たない分(ネットが成功した場合はリアルにも進出する傾向はある)、コストを省くことができ、商品を低価格で提供することが可能となります。また、高コストなTVCMを始めとしたマス広告(一般的な消耗品を扱う企業(P&Gやユニリーバ)は実施)は利用せず、SNS・youtubeといった低コストなプロモーション施策に特化することで、既存企業と比較しプロモーション費用も低く抑えることが可能です。このことも、低価格・高利益率へ繋がり競争力の源泉となってます。

また、製品軸でのD2Cの特徴は”実用的”×”消耗品”のプロダクトが多いことです。(例.ひげ剃り、コスメ、下着、コンドーム、ベビーフード、お菓子。業界の特徴としては、マス広告かつ多様なチャネルで販売している大企業が多い)。この領域は、ファッション業界のように分散市場ではなく、大手ナショナルブランドの寡占市場であり、スタートアップが手をつけづらい領域でした。この領域において、台頭しているスタートアップが多いことは、先に述べた、サプライチェーンの違い(直接販売)、そして低コストのプロモーション施策に特化することによって、低価格×高品質な商品を作ることができるようになり既存の大的ナショナルブランドと競争できるようになったためです。
さらなるD2Cの製品の特徴として、”製品数を絞る”ということが挙げられます。例えば、Casperとマットレス大手のSerta比較しても、Sertaのモデル数が当時6存在していたのに対し、Casperがモデル数は1つに特化していたそうです。製品を絞ることによりプロモーションを集中させることができ、マーケットへの導入を円滑にしたと考えられます。”製品数を絞る”ことにより、ユーザーにシンプルにメッセージを伝えることができ、ブランドコミュニケーション上、効果的だったと考えられます。特に、リアル店舗がなく、WEB上でのコミュニケーションしかできない状況においては。余談ですが、ジョブズがアップルに復帰してすぐに製品数を削減したことが思い出されます。

では、なぜ今のタイミングでD2C企業が盛り上がっているか?ですが、これは大きく2つ、・”ECするハードルの低下”・”SNSの普及”があると考えられます。まず、ECするハードルの低下ですが、事業者サイドとしては”EC業界のカオスマップ”と呼ばれるほど、一連のバリューチェーンにおいてプレイヤーが整っており、ネットで物を売るハードルが低くなっていることがわかります。ユーザーサイドからしても、近年EC化率が年々高まっており、ネットで購入することへのハードルが下がっていることが分かります。
また、SNSの急速な普及(下図)により、”本当にいい製品は認知が広がる”環境が整いました。以前は、マス広告で知ったり、気になる商品があったら能動的に検索することで製品を見つけてました。しかしSNS時代においては、SNSのタイムラインを見ていたら勝手(受動的)に友人がおすすめした製品情報が入ってきます。つまり、ユーザーが感動した商品(もしくはインスタ映え)はユーザー自らがSNSで拡散してくれるので、いい製品は認知が広がりやすくなったのです。これは、マス広告を利用しないD2C企業の盛り上がりに不可欠な要素でした。また、SNSをメインユーザーであるミレニアル世代はありきたりな商品よりも、自分らしい、オリジナルな商品を求めるといった傾向も後押ししていると考えられます。

データ元:https://techcrunch.com/2017/06/27/facebook-2-billion-users/

最後に、販売チャネルに関してです。先に述べたようにユーザーに感動してもらうには、ブランドのストーリーをしっかりコミュニケーションしていくことが必要となります。この点において、D2Cはすべての顧客接点をコントロールできるのが強みです。例えば、同じiphoneを買うにしても、ビックカメラで買うより、apple storeで買うほうが、iphoneのストーリー・世界の伝達度(?)は違うと思います。やっぱり、オフィシャル店で買ったほうがブランドを感じますよね。
また、全ての販売チャネルのデータを収集することができるため顧客データを蓄積することが可能となり、サービス改善のスピートが非常に早くなります。例えば、ひげ剃りで言うと、従来企業のジレット等は、小売店で販売されているため、基本的には、顧客情報(性別・年齢・買替頻度等)は集めずらいです。
その一方で、DollarShaveClubならば、ECでの注文履歴から顧客に関するあらゆる情報を集積することができ、PDCAを高速で回すことができます。まさに、メーカーというより、IT企業といったスピード感で製品を改善することができます。

以上D2C第一回では、D2C企業の共通項について述べました。”SNSの台頭”、”中間マージンのカット”、”データドリブンな改善”、”徹底したブランドコミュニケーション”、等がD2Cを考える上でのキーワードとなりそうです。次回以降は、個別の企業に関して深掘って行きたいと思います。

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