2つの「学び」が人間という生き物を存続・進化させている。
人は「学ぶ」生き物である。
そして、「学ぶ」という特性があるからこそ、一動物に過ぎない人間が地球上でイニシアチブを握っている。
「学び」という特性には2種類ある。一つは、「受け継ぐ学び」。そしてもう一つが、「社会順応のための学び」である。この2つの特性が、人間の存続・進化に多大な貢献をしている。
まずは「受け継ぐ学び」について述べていきたい。
私は、生まれた時泣くことしかできなかった。誰でもそうであろう。
一人一人が生を授かった時は、泣くことしかできない。しかし、やがて立つこと、歩くこと、食べること、話すことを覚えていく。それは、自分よりも長く生きている親や大人から学ぶものである。
大人になっても同じだ。学ぶことは高度になるが、上司や先輩からやり方や知識を教わり、大きくなっていく。自分だけじゃない。上司や先輩だって、そのまた上司や先輩から教授されたものがベースにある。それをずっと遡れば、これまで学んできたほとんどは、はるか昔、紀元前から受け継いできただけに過ぎないのである。
つまり、学び≒受け継ぐとも言えるのかもしれない。すごく長い伝言ゲームを連想するといいかもしれない。これが一つ目の「受け継ぐ学び」である。そして、受け継ぐ学びは、人間を「存続」させるために必要不可欠な特性である。
例えば、どのように子孫を残すか、またどのように生きるか、などといったことは、先祖代々受け継がれて、それを学んできたからであろう。
しかし、先人が身につけてきた学びは、そっくりそのまま受け継がれてきたのだろうか。それは違う。でなければ、パソコンやスマホは現れていない。そう、人間には受け継がれる学びと受け継がれない学びがある。
そして、受け継がれない学びというのが2つ目の「社会順応のための学び」のことである。この特性が、人間がここまで進化させたと言っても過言ではないほど、私たちにとって重要である。人間には欲がある。マズローの5段階欲求は有名な理論だが、人間はひとたび受け継ぐ学びが完了されると、現状の課題を探し出す。現状に満足しない生き物なのだ。もっと自分を豊かにしたいと思う。そこで、受け継いだ学びを現代の環境や状況に応用して、新しい何かを生み出す。これが「社会順応のための学び」である。
例えば、何か調べ物をする時、一昔前は、百科事典などで調査をしていた。しかし、もっと効率のいい方法はないか。詳細を知る方法はないのか。といった課題感からコンピューターは生まれた。コンピューターが生まれるとあらゆることが遠隔に可能になる。人々のコミュニケーションは、手紙が主流であった。しかし、コンピューターの台頭により、メールになった。これは、コンピューターという新しい技術が次の世代に「受け継ぐ学び」として伝えられ、そして、受け継ぐ学びを他の分野に応用する。つまり、社会順応のための学びを実践して、メールやコンピューターゲームなどが生まれていくのである。
受け継ぐ学び→社会順応のための学び→受け継ぐ学び→社会順応のための学び→・・・
このように、2種類の学びが高速に交わって、文明は発達していくのである。最近は、小学生までもがスマホを持っているそうだ。我々が小学校だった時には、想像もできなかったことである。この現象が起こるのは、まさに、受け継ぐ学びと社会順応のための学びの結晶が、現代の時代の流れを生み出している。小学生、中学生、高校生、そして今の私、先輩たち、皆がまずは先代が築いてきた経験や体験を受け継いで学んでいる。そして、各世代の「今」という社会に順応しようと、あらゆる受け継いだ学びを応用しようとしている。これからもどんな面白い未来になっているのか。とても楽しみだ。この未来を誘発するのは、私を含めた今を生きる人々全員が、次の世代に学びの結晶を受け継いでいく必要がある。