児童の人形は、小児性愛者が犯罪を犯さないようにすることができるか?

ある男性はそう思っている。そして、彼は10年以上の間クライアントのためにそれらを製造している。


アトランティック誌(The Atlantic)に掲載された“Can Child Dolls Keep Pedophiles from Offending?”という記事の翻訳です。この訳文はCreative Commons(Attribution, non-commercial, share alike)ライセンスにて公開していますが、これは訳文に対して適用されることを意図しており、元記事のいかなる権利も侵害する意図はありません。問題がありましたら、可能な限り早く対応いたしますので、ご連絡ください。また、誤訳・不適切な表現等ありましたらご指摘ください。(この記事の中で、高木氏が小児性愛者であるかのような記述がありますが、BuzzFeedの記事において高木氏は、「この部分はThe Atlanticの誤訳で、自分自身は小児性愛者ではない」と申し出たとあります。)以下、訳文です。


ロク・モリン
2016年1月11日

「小児性愛者であることは、仮面をつけて暮らすようなものです。」と、高木伸は、東京の喫茶店の中で別の煙草に火をつける前に、私に話した。高木の仮面は、今日は外れている。彼は率直に話し、そして、人々は気づいていた。黒いビジネス・スーツの海の中で、高木は、見せびらかすように赤いハワイアンプリントのシャツを身に着けて、彼らの目を引いていた。

小児性愛的な衝動と戦っているものの、それに従って行動することは決してなかった高木のような人々は、多くのメディアの注目の対象である。彼らの状況についての信頼できる科学的なデータは乏しく、また既知の医学的あるいは精神医学的な治療法がないために、これらの個人の多くは、衝動に従って行動することを避けるために、厳しく自制に頼っている。高木は、もう一つのオプションがあると思っている。

彼の児童への興味と、彼らが保護されていなければならないという信念とを調停するのに苦闘する中で、高木は、Trottla(生きているような児童の性的人形を生産する会社)を設立した。10年以上の間、Trottlaは世界中のクライアントへ、5歳ほどからの少女の解剖学的に正しい模造品を出荷している。

「我々は、誰かのフェティッシュを変える方法がないことを認めるべきです。」と、高木は主張した。「私は、人々が合法的に、そして、倫理的に彼らの欲求を表現するのを手伝っています。もし抑圧された欲求に耐えなければならないならば、生きている価値はありません。」

認知行動療法と化学的去勢を含む、いくつかの小児性愛に対する治療が存在する。そして、他の治療的介入は衝動を抑えることを意図していた。最近、メイヨー・クリニックによって実行されたメタ分析によると、治療は「小児性愛者の児童に向かう基本的な性的指向を変えない」と結論付けている。加えて、この研究は、実際に児童に猥褻行為をした人々の間で、再犯率が10パーセントから50パーセントにわたると例証している。高木は、危害を縮小する他の方法が正当化されると考えており、彼の製品が役に立ち得ると示唆してる。

現在のところ、高木の人形が成功するかどうかを示す研究はない。そして、ジョンズ・ホプキンス大学医科大学院のピーター・ファーガンは、これから先も現れるか懐疑的である。この性的倒錯の研究者は、認知行動理論を引用して、Trottlaの製品との接触が小児性愛的な観念に「強化効果」を及ぼすであろうと考えている。そして、「多くの例において、それ〔訳注:小児性愛的な観念〕がより切迫したかたちで影響を受ける原因になり得る。」ファーガンがその結論を支持するために引用する研究は犯罪者に基づいているため、この影響が非犯罪者について異なるか否かは不明である。

トロント大学のマイケル・セトは、小児性愛者の2つの異なった集団が存在する可能性について推測した。この精神科医は、オピオイド中毒へのメタドン治療の類比を用いて、「一部の小児性愛者にとって、人工的な児童ポルノグラフィ、または児童の性的人形への接近は彼らの性的な衝動のより安全なはけ口であり得る。そして、彼らが児童ポルノグラフィ、または実在の児童とのセックスを求める見込みを減らす。他の者にとっては、これらの代替物を所有することは、彼らの欲求不満の感覚を悪化させるだけかもしれない。」と、仮定した。

「我々にはわかりません。なぜなら研究がされていないからです。」と、彼は結論した。「しかし、それは実行するべき非常に重要な研究です。」

小児性愛者予防ネットワーク Don’t Offend を開始した科学者、クラウス・バイアーは、衝動に従って行動する小児性愛者を、そうしない人々から区別するものは何かについて調査している。「神経画像処理を通して性的な興奮に関連した活性化パターンを調べることによって、我々は小児性愛を見つけることができます。」と、この性科学者は言及した。「より興味深い疑問は、人がこの行動を制御することができるか、です。」

現在レビュー中であり、ドイツ教育研究省の資金提供を受けたfMRI(機能的磁気共鳴画像法)研究において、バイアー博士と彼の同僚は、犯罪を犯さなかった小児性愛者の衝動制御に関連した脳領域において、犯罪を犯した者と比較して、より強い連結性を見つけた、と述べている。「単に人が小児性愛的傾向を有するというだけでは、彼が危険であることを意味しません。」と、バイアーは結論した。

たとえ支持するような研究がなくとも、高木は、彼の製品が児童を救うことを確信している。「私は、買い手から手紙をしばしば受け取ります。」と、彼は言った。「その手紙には『あなたの人形のおかげで、私は犯罪を犯さないでいられる』と書いてあります。私は、医者たち、予備校教師たち、著名人たちからでさえもそのような声を聞きます。」

その日の面会は短時間であったため、高木は次の日の午後、山あいにある彼の作業場を訪問するよう私を誘った。八王子駅(東京から北へ1時間)で、私は、翻訳者のナツコと一緒に彼に会った。

高木は、彼のクライアントの大部分は「一人暮らしの男性」と説明した。「結婚のシステムは、もはや機能していません。」と、彼は言った。「大部分の人々は性的な理由のために人形を買いますが、彼らの多くにとってそれはすぐに変わります。彼らは、人形の髪にブラシをかけるか、彼女の服を替え始めます。女性のクライアントたちは、彼女らの過去を思い出すか、不運な児童期を考え直すために人形を買います。彼らの多くは、人形を彼らの娘のようにみなし始めます。そのため、私は自分自身が決して写真に写らないようにしています。私は、彼らが私を人形の父とみなすのを防ぎたいのです。」

Trottlaの工場は辺鄙な場所の砂利道の突き当たりに立っており、木によって覆われている。建物の隣人は、ただ猿、鳥と猪だけだ。「我々は、荒地に行かなければなりませんでした。」と、高木は説明した。「機械はうるさく、そして、材料は可燃性です。」

薄暗い内部では、溶媒の悪臭は強烈だった。高木は、彼が皮膚を模造するために使う独自の溶液が、脳、肝臓と腎臓に毒性作用のある既知の発がん物質であると認めた。

「ここは、非常に困難な環境です。」と、彼は言った。「そのため、私のすべての従業員は、自衛隊出身です。彼らが有毒材料を扱ってもよいのは週に2日だけであり、常にマスクと手袋を着用しなければなりません。私は時々、煙草とこれのどちらが先に私を殺すのだろうかと思っています。」

高木は、スイッチを押した。頭上の蛍光灯が点灯し、そして、突如、我々は孤独でなくなった。部屋の遠い端で、金属スタンドに裸でつるされているのは、人形だった。「夜中に彼らを見るとき、時々、私でさえおびえます。」と、彼は認めた。

「彼女には、名前がありますか?」と、最も近い人形 ―あとで彼が10~12才と説明したモデル― を指して、私は尋ねた。

「名前はありません。」と、彼は言った。「ただの製品番号―LP1。」

「あなたは、彼女の顔にどんな感情を見ますか?」と、私は尋ねた。

「これは悲しんでいるように見えます。」と、彼は言った。「これは、様々なクライアントの要求を満たすために、いろいろな表情をしなければなりません。」

多くの人々がアニミズム的神道の信条を有する日本で、人形は複雑な地位を占めている。「神道では、」と、高木は言った。「すべてに、魂があります。たとえもう人形はいらなくなったとしても、彼らを捨てることができません。神社では、彼らのために行われる特別な儀式があります。それは、死者のための儀式のようなものです。人形は人間の形を有しているので、彼らはそのように扱われなければなりません。」

彼は、人形を処分する必要があったクライアントが電話をしてきて、彼の助けを求めた最近の件について説明した。「彼は、私が人形を廃棄することを望んでいました。」と、高木は思い出した。「しかし、彼は『廃棄する』と言いませんでした。彼が使用したフレーズは、『家に送り返す』というものでした。」

我々のインタビューの最後に、私が一組のファイバーグラスの型の写真を撮っているとき、高木と私の翻訳者が隅で話しているのに気がついた。

「何について話していたの?」私はあとで彼女に尋ねた。

「私の夫は、数年前バイク事故で死にました。」と、彼女は言った。「私は、彼の複製を製作するのにいくらかかるかについて、高木さんに尋ねていました。」

私たちは、撤去されるのを待っている大量の打ち捨てられたファイバーグラスの骨格を通り過ぎて、入って行ったときと同じように、皆で一緒に出て行った。これらは、いくつかの「家に送り返された」人形の残骸だった。「彼らは有毒です。」と、高木は説明した。「それで、我々は特別な会社に来てもらい、彼らを引き取ってもらう必要があります。彼らは、ハンマーで破壊しなければなりません。結局のところ、形あるものすべて、必ず壊れるのです。」

駅へと戻る道の途中、彼の仕事によって彼が実在のものと人工のものとを定義する仕方を変えたかどうか、私は高木に尋ねた。

「人形が鏡であることは、日本においては共有の信念です。」と、彼は言った。「人形は、彼らの持ち主の本当の自身を示します。」